どくはく14「母の言葉は呪いのようだった」


実家を出てから、母に繰り返し言われていた言葉を言われなくなった。

例えば、私は小説や絵を描くことが好きだった。
それを見た母は繰り返した。
「あんたは妄想癖がすごいわねぇ」

例えば、私はおなかの調子があまりよくなかったときがあった。
それを見た母は繰り返した。
「あんたは便秘やけん毎日ヤクルトを飲まないかんよ」

例えば、私は紫色が好きだといった。
それを見た母は繰り返した。
「紫が好きな人は変人が多いのよ」

例えば、私は男勝りな性格だった。
それを見た母は繰り返した。
「あんたは男っぽいからおとなしい男の方が好きなのよねぇ」

最初言われたときはピンとこなかったが、だんだんそれを繰り返されるうちに、
「私は妄想癖なんだ」
「私は便秘体質なんだ」
「私は変人なんだ」
「私は男っぽいんだ」

そんな風に、どこかで母の言葉が、呪いのように刷り込まれていった。

実際実家を出て、気づいたことはたくさんある。
自分はそこまで男勝りじゃなくなった。
紫色を好きな子は実はいっぱいいる。
便秘体質だと思ったけど、実家を出てから排便がほぼ毎日できるようになった。
妄想癖だといわれていたが、創作している友達と比べると同じぐらいだった。

母の中の固定概念に振り回されて、
「自分が変なのかな」
と思わされていた。
この呪いが、少しずつ溶けようとしている気がする。


毎日のコーヒー代に。