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写真には写らない美しさがあるから ☕︎2

コーヒー1杯ぶんだけ言えることがあるとしたら、予定のない今日一日を、ぼくの日と名づけて過ごすことができる。

父の日は天国の父を思い浮かべる。母の日は実家に電話してぼくの声をきかせる。クリスマスや誕生日は友人と会っておいしいものを食べる。
では、この気まぐれに制定されたぼくの日を、どう過ごせばいいだろうか?

久しぶりにひとりカラオケに行って、shout!したら気持ちよさそうだ。あるいは映画館へ足を運び、ラブロマンスにひたるのも悪くない。
空もようが怪しいなら、部屋に引きこもってサブスクパーティーを楽しむ、なんてのもありだ。

創世記の、光あれ、じゃないけれど。心をライトアップしてくれるスイッチを探して、いつでもぼくらは暮らしている。

今日は思いつきで晴海埠頭行きのバスに飛び乗った、つもりがぼくの気まぐれで豊洲のららぽーとへ針路を変える。しかしすぐにららぽーとからも興味を失って、潮風の吹くアーバンゲートブリッジの船着場に足を向けた。

辺りでくつろぐ家族の風景や海辺のさざなみに、目を細めては幾度となくレンズ越しにのぞき込んだ。ぼくの日、にとても満足した。

その夜、千葉で震度5の地震があったらしい。ぼくはベッドの上で、船酔いみたいにうなされた程度ですんだ。ラッキーだった。

翌朝は雨の降りそうな日だった。外の空気を吸いたくてぼくはコンビニへと急ぐ。傘も持たずに。いつもの川面を黒煙のような雨雲が覆いつくしていた。雨の匂いがした。
よく冷えた猿田彦カフェラテの朝に。

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