見出し画像

何が起きても、僕の猫生は僕が責任を取る。

サン

ものすごく忙しいのに、さっそく返事をくれてありがとう。実はさ。サンがくれた手紙は最初、ピンとこなかったんだ。

いまモクちゃんは、モクちゃん自身を見失っている。
明らかに、いつものモクちゃんじゃないよね?

と書いてくれたけれど、わたしは意外とネガティブなんだ。簡単に落ち込むし、簡単に泣くんだよ。

家族はわたしのアップダウンの激しさを知っているから、今、こうして猫の行方不明で落ち込んでいる姿を、そう驚かずに見てるんだよ。
「いつものモクちゃんじゃない」と言うのは、サンの買いかぶりだと感じたんだな。そして、

モクちゃんの愛猫は、このプロセスのなかでは、モクちゃんなのではないか

と言ったこともさ。「そうかもしれないけれど、わたしにとって、彼は彼なんだよ」と、思った。「彼とわたし」の関係性以上でも以下でもない。他に意味など持たせたくない。そう思った。

だけど、わたしは、サンの言葉が正しいことも知っていた。だって、わたしが自分で作ったシンクロ辞典のサイトの中でさ。「ペットはあなたのインナーチャイルド」って書いているんだから。

サンの言う通り。
たしかに彼はわたしだった。

わたしはしぶしぶ「彼はわたし」と言う場所から、今起きていることを眺めてみた。すると一つ、大きなことに気がついた。

実は今回の引っ越しで、自分の家系のお墓を、永大供養にしてもらったんだよね。そして、仏壇も魂抜きをして無にかえした。親族の人たちが「長男(わたしの父のこと)の娘なんだから、あなたが引き継いで面倒みるべき」ってことを、いろんな言い回しで伝えてきたけれど。

わたし自身に子どもがいないこと。
そして、おそらくもう子はできないこと。
うちの家系をお墓と言う形でつないでいくことに、温かみや恩恵を、どうしても感じられないこと。
親の家や土地を守ることが、精神的にひどく苦になっていたこと。

そうした事情で、最後は独断で決定した。永大供養にすることをね。

わたしは若い頃から病弱だったから、親の残した家やお金に、とても助けられた。でもその恩恵以上に、お墓や仏壇、両親が残した家の管理、統合失調症の父の介護、エネルギー的にすさまじかった土地の浄化など、目に見えるものから見えないものまで、負の遺産がてんこ盛りだったんだよね。それが本当に負担だった。

わたしが健康だったなら。我家のプラスの遺産も負の遺産も、どっちも放棄して自由に生きたのに」と、思ったものだ。

いわば、わたしは我一族の飼い猫だった。
西洋占星術で言うならば、8ハウスのただなかにいた。

その呪縛をほどき、経済的にも、物理的にも独力で生きていく。そして、自らの人生の責任を自らとっていく。この大きな決断が、今回の引っ越しだったんだ。

これを思い出したとき、わたしの愛する猫はもう「飼い猫」を卒業したかったのかもしれないと思った。

痛んだわたしの心を癒す役割から自由になって。たとえ、三食のご飯に困っても、喉がカラカラに渇いてもかまわないから、自分の力で生きてみたい。

誰の「モノ」でもなく、誰の世話をすることもなく、すくっと大地に、ひとりで立ってみたい。何が起きても、僕の猫生は僕が責任を取る。それこそが、今の僕の幸せなんだ。

そんな思いで、わたしの元を去ったのかもしれない。ちょうど今のわたしのように。

と、思えたとき、やっと「どんな状況の中にあっても、きっと彼は幸せなんだ」と思うことができた。

彼が「今頃、お腹が空いて、喉が渇いて、ひどく苦しんでいるんじゃないか」と言うことが、どうしても気がかりだった。その心配から、やっと自分を解放することができた気がする。

そして、わたし自身も、これからの人生は自分の行動、自分の言葉の責任だけをとって生きていけばいんだと改めて気がついて、大きな喜びが沸いてきている。

目に見えないものから見えるものまで、膨大な「自分以外のこと」に責任を負わされてきた(そして、時に自分の人生の責任を肩代わりしてもらった)わたしは、「責任をとる」ことに、ほとほとうんざりしていたのだけれど。

失敗しようが成功しようが「自分の人生の責任を自分で取る」ということが、これほど充実感に満ちたものだと知らなかった。

ああ、そして。
わたしの愛しい猫も、きっと今、こんな気持ちなんだ。ただただ、自分の真ん中で生きているんだ。

こんな風に世界の見え方が変わったのはサン、あなたの返信のおかげだよ。本当にありがとう。心深くから感謝します。

モク

photo by とっしーさん


魔法の占星術テキスト『モッくまくんの星のレッスン』の著者。書籍での独学は難しいと言われる西洋占星術を、知識0の状態から読み始め、「即日使える」レベルにまで習得できるマスター本です。moccuma.net では、第一章からすべてを試し読みいただけます。