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勝手にストーリー作ってみた#1:駅で自転車に乗っている人に注意を繰り返すおじいさん

もう十年ほど同じ賃貸マンションに住んでいる。
最寄り駅を利用した数も数えきれない。
その駅にちょっと名物になっているおじいさんがいる。見た目は70を超えているが80才はいっていないだろう。
そのおじいさんは高齢の人が使用する杖ではなく、登山用の杖を駆使して駅前を闊歩しながら、自転車に乗っている相手に対して注意を繰り返している。理由は分からない。
「自転車での横断は違反だよ!」
「自転車乗りながらのスマホは禁止!」
「防犯カメラに撮られているからね!」
複数の車が行き交う中で声を張り上げ、自転車利用者に注意を繰り返すおじいさん。
時々、反応する若者がいて、トラブルになっている光景を見たこともあるが、基本は声を張り上げるおじいさんと聞こえないフリをして素通りする自転車利用者の図が繰り広げられる。
このおじいさんはなぜ自転車利用者に注意を繰り返すのか?勝手にストーリーを作ってみた。
 
 
 
このおじいさんは学生時代からスポーツに励んできた。
おそらくそれは野球部で、高校時代は強豪校で甲子園を目指して白球を追いかけていた。大学に上がると、野球部ではなく、野球で鍛えた足腰を活かせる山岳部に入部。そこでもこれまで鍛錬してきた筋肉と根性を活かして、険しい山に挑み、仲間たちと共に青春を謳歌していた。
就職先は不動屋の営業担当。飛び込み営業を繰り返し、上手くいく時もあるが時に罵倒され、会社とお客の板挟みの中で寝る間を惜しんで働いた。
 
そんな忙しくも充実している生活に突如終止符が打たれる。
いつもの様に終電に乗って家路を急いでいた冬。
最寄り駅から自宅までの暗い道を歩いていると、突然、無灯火の自転車と衝突。
おじいさんは頭を打ってその場に倒れ、自転車はどこかへ逃げてしまった。
衝撃音に驚いた近所の人が倒れているおじいさんを発見、救急車を呼んでくれ、すぐに病院に運ばれた。
 
ひき逃げという事で事件化されたが、当時は防犯カメラなどなく、犯人が捕まることはなかった。
おじいさんは3か月の入院の末、退院することになったが、足に障害が残り、杖を使用した生活を余儀なくされた。この時、おじいさんは25歳。これからの人生を思うと光りを見出すことは難しかった。
そこからおじいさんの生活は荒んでいく。退院した当初は会社にも復帰し、これまで以上に頑張ろうと意気込んでいたが、障害を持った相手に対する世間の風は予想以上に冷たく、職場から足は遠のき、やがて解雇されることに。
そこからはお酒を浴びるように呑み、昼夜逆転の生活。自堕落な生活が続き、徐々にお金も無くっていく。もう未来も希望もお金も無くなったおじいさんに救いの手を差し伸べてくれたのが、大学時代に青春を共に歩んだ山岳部の仲間だった。荒んだ生活を送り、自暴自棄になっているおじいさんに対して根気よく連絡を取り続け、「一歩一歩の繰り返しが山頂へ繋がっている」ことを伝えた。
 
仲間の優しさのお陰でネバーギブアップ精神を思い出したおじいさんはそこから障害者雇用制度を利用して働き始まる。
以前の様に自由にカラダを動かすことはできないが今できることに目を向けて毎日を必死に生きることにした。
 
笑顔を取り戻したおじいさんの日課が最寄り駅で自転車マナーを叫び続けることだった。
「自転車に乗っての横断は違反だよ!」
「自転車乗りながらのスマホは禁止!」
「防犯カメラに撮られているからね!」
 
きょうも駅前でおじいさんの声がこだまする。
 

全然違ったりして・・・、てへ。
 
 

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