すべての盲腸童貞どもへ


はじめまして。Fellows Singapore Creative Staff Singapore PTE. LTD.代表のJunya Oishiです。

初めて投稿するnoteのタイトルがビジネスとは全く関係なく、タイトルもふざけていますが、いたって真剣に「盲腸」という病気の怖さについてお伝えしたいと思っています。←本当にやばかった。

最初に言っておきますが、盲腸には二段階の痛みという怖さがあります。

・一段階目 みぞおちから胃のあたりまでに来る鈍痛。お腹が冷えて下痢ピーになるときの「あの痛み」

・二段階目 下腹部中心からやや右腹にかけて来る内側から無数の針でつつかれているような激痛。

ちなみに二段階目になってしまったら、手術以外の方法はありません。なぜなら7~8割の確率で腹膜炎を引き起こしているからです。

今回調べて分かったのですが、この第二段階、つまり腹膜炎の状態を48時間放置してしまうと、全身状態の急速な悪化の後、最悪の場合は生命を失う危険性が高まるようです。


序章

私は2020年の6月末にシンガポールの地を踏みました。期待と不安で混ざり合った心境の中、会社として初の海外拠点立ち上げを任された責任感を意気に感じていました。コロナ禍ですので入国後は14日間のSHN(Stay Home Notice)があります。日本と違って自分の部屋から1歩の外出も許可されていないので、食事や物資の調達は、ネット通販でデリバリーしてもらうしかありません。幸い、シンガポールはデジタル化も進んでいて、FoodPandaやGrabEatsなどの宅配アプリやRedmartといったネットスーパーもあります。早いものだと翌日、遅くても3~4日で届くので安心でした。

さて、14日間の自主隔離が終わり、7/10にシャバに出ることができたのですが、その頃から少しお腹に違和感はあったかもしれません。「偏った食事だったからお腹壊したかな?」くらいに思っていました。

初期症状から自覚期

初期症状の自認から自覚は、7/20前後でした。なんだかお腹が痛いな~、と思いながらも食事をしたり日本の友人とオンライン飲みをしたりしていました。シンガポールの水道水が合わないのかな、とか、中国産の野菜のせいか!?とか、口にするモノのせいにして都合のいい解釈をしていたなと思います。

そんな状態を放置して2~3日。今度は確実に「痛い」と認識できるようになりました。定期的にくる痛みの波。便が出てないな?と思い便秘を疑いました。たしかに最近ごぼうとかニンジンとか繊維の多い野菜を食べてないかも。と勝手に便秘説を構築しアクセプト。人間の脳って本当に都合が良くて怖い

7/26。最も腹痛と戦った日。

自覚してから約5日経つ。食欲不振。全然食べれない。何かを口にしてもオエっと、えずいてしまう。そしてこの時、痛みの最前線が溝落ちらへんから下腹部に移動していることに気づく。あと発熱します。38.2℃くらいまで上がります。解熱剤を飲みましたが、この時点で病院行けばよかったと思います。

自然治療的に野菜生活でもダメと思い、ここで初めて便秘薬購入を検討。(まだ便秘だと思っていた自分が恥ずかしい)シンガポールでは日本の薬も手に入るが、一番近くの日本系の薬局に行くことも腹痛で億劫になっていたので近所のドラッグストアへ行き、Twitterでこちらにいる駐在員の奥様のブログを見つけて書いてあった便秘薬を購入。

↑ちなみにこれめちゃくちゃ効きました。でも便秘じゃなかったので、大腸の活動が活発になっただけで、盲腸の痛みと合わせて二重苦になっただけでした(爆笑)

便も出した。出なくなるまで出した。最後の方はほぼほぼ水。なのにちょっと時間が経つと痛い。便秘薬飲んでるから便意ばかり来る。痛い、横になる、便意、トイレ、痛い、横になる、、、の繰り返しが朝の10時から夜の19時まで続く

定期的にyoutubeを見て気晴らしするが、見ながらも痛い。
長編を見ようと思って、Netflixにログイン。腹痛で集中できなくて選ぶ余裕もないからアニメ。オリジナルの日本沈没2020

本社でも取引クライアントであるサイエンスSALU社制作の良作でした。全10話を一気見。時刻は22時を過ぎた頃。あぁ、やっと寝れると思い(腹痛ですが)風邪薬に入ってる鎮痛作用に期待して服用し、この日は就寝。

7/27。運命の日。

朝6時に目が覚める。痛い。やっぱり痛い。この時点でも盲腸は疑わず。むしろ食中毒を疑っていました。病院に行くことを決意し、加入していた渡航者保険に連絡。出ない。連絡。出ない。はっ!?怒りでアドレナリンが出てきて少し和らいだ気がする。やっと出る。おばさん「この電話番号ではないので、お伝えする電話番号へご自身で〜」とダルそうな声(に聞こえました)。「こっちは腹が痛くてそんなことしてる時間ないんじゃ〜!」と言ってやろうと思いましたが、話がこじれるといけないので冷静になって指定の電話番号へ。繋がって病院に行くことを伝え、ついでに予約もしてもらえることに。この時の対応の人は凄くいいお兄さんとお姉さんでした。

30分後

「まだかい〜!!怒」と、この時すでに痛みで頭がおかしくなりそうだったので自ら調べて予約。幸い日本人がいる病院につながったので、予約。(というか混んでないのでそのまま来てくださいと言われる)


適当に着替えて、帽子かぶって、財布とパスケースとメガネだけ持って外出。
→本当にこのタイミングに戻れたら戻りたい、いや、痛いから戻りたくないけど!もっとちゃんと色々想定して荷物持っていけばよかった、と備えなしの憂いありあり。理由は後述。

タクシーで向かいました。病院に着いた時には冷や汗が出続けていたので、受付のちょいムチの美人さんも異変に気付いたらしく、すぐに先生を呼んでくれました。

この時、問診票を書けと言われたんですが、すんません、ガチで手が震えて書けません笑。他に待っている方々の目なんか気にできずに思い切り痛がってました。

そして先生登場。すごい柔和な白髪交じりロマンスグレーな50代のイケおじ。イケおじが、「あーあーどこが痛いの?あーあー右腹。あーあーこりゃあれだな。」どれだよ。「とりあえずこっち来てちょっとここに寝てくれる?」いや診察台高いな。足かからんがな。「ちょっと触るね。あーここは?あーここは?あーそれじゃここは?」いっっっっってぇぇぇ!!!「はい、わかりました。盲腸ですね。いつから我慢してたの」たぶん4日くらい前?「あーがんばったねー。じゃ私専門外だけど一応エコーで見てみようか」はい。

この時の私は痛みにより判断力がほとんど無くなっていたので、生まれたてのひよこが親についていくように別室移動。

イケおじ「あーあーなるほどなー、あー大きいねー、これ見てー。普通は5mmくらいなんだけどさー君のは19mmあるんだよねー、ちゃんと見てもらうには外科になるんだけど良いかなー?」

はいはい、もうそれで良いです。待てません。

イケおじ「今日は当直誰だ?あーあーバラガス先生か。インド系の先生だよーははは」

ははは、じゃねえよ。インド人に痛みの詳細伝わんのかよ。(多分インド人ではない。インド系なだけ)

イケおじ「あーこれ多分、今日中に手術になると思うけど、一応詳しく見てもらってからにしたほうがいいから紹介状書くねー」

手術、、、!!!今日!!??

私の不安をよそに、看護師さんたちに促され病院内を移動して外科へ。Surgery Centre=外科です。surgery=手術と習ったことがあった僕は、痛みに耐えながらも医療用語を学習できてうれしい、とか思っていました。

バラガス先生登場。
見た目はインド系というより、ちょっと日焼けし過ぎた顔が濃い日本人風。私も顔が濃いので親近感。髪の毛は白髪まじりでボサボサ。いかにも医者というか研究者的な風貌。眼鏡。

すごく優しい眼差しで診察ベッドへ促される。
おもむろに二本指で触診。左腹を少し押しつけ急に話すと、「!!!!????」という激痛が右腹に走る。

※腹部を圧迫してから急に手を離すと痛みが強くなる症状を反跳痛 (Blumberg's sign)、腹部の筋が緊張して固くなっている状態を筋性防御と呼ぶ。これらは腹膜刺激徴候と呼ばれ、腹膜炎を示唆する。

OK(言いかたは、オーゥケィ)

何がOKなんじゃ。

ほんで椅子に座れと言われて説明を受ける。早口で鈍りがあり医療用語がわからないが、operation will begin around 2pm today~的なところはわかりやっぱり手術なんだ、と一瞬落ち込んでから覚悟する。

手術は人生で二回経験していますのでそこまで不安はなかったですが、内臓は初。

そこからは、CTをとり、手首に謎の注射針を刺され、部屋へ移動。

少し経つとナースの人たちが変わるがわる説明に来て、手術着に着替えろと言う。

で待つこと2時間。先ほどの謎の注射針は点滴用のモノでした。痛み止めが点滴で打たれているのでさほど苦しくなく、スマホで漫画読んだり動画みたり。そして充電が切れる。充電器無い。

ボーッとしていたら手術の時間だ、とナースが2人来る。ストレッチャーに乗せられて手術室へ。

手術待機室的なところに通されて待機。代わるがわる来て説明してくる先生に日本人はいない。そういえば通訳不要にチェックしてしまってたかな。要らんことした。

10分くらいで手術室へ。
マレーシア系、インド系、中国系のオペチーム。そして、バラガス再登場。

日本の手術の時は大体、執刀医とその取り巻きがめちゃくちゃどうでもいい世間話をしてたのですが、こちらでも同じ感じ。鼻歌で謎のメロディーラインしてる奴もいる。でもMr.Childrenは流石に流れてなかったな。(日本のオペの時は大体、開始前に音楽流れてた。爆音で)

一言二言交わしたあとの記憶はゼロ。パッと起きたら病室でした。全身麻酔だったんだな。全身麻酔はマスクをはめられたらすぐ落ちるので、初めての手術の人はできるだけ全身麻酔をお勧めします。部分麻酔だと聞こえちゃうのでね、いろいろと。(笑)

手術後から入院期

手術はおそらく1.5時間から2時間で終了。目を覚ました後、ナースコールを押すと看護師さんが来てくれて、お薬の説明やら食事の説明やらをしてくれました。ちなみに術後2日間は固形物が食べられないので、濁った水みたいなチキン風味がすごく遠くの方にかすかに匂うスープを飲んでいました。

3日目から徐々に固形物も食べれるようになり、病院食も豪華に。渡されたメニューもホテルの朝食のような組み合わせ自由なものでした。

画像1

シーザーサラダとかすごくボリュームがあって美味しかったです。

もう盲腸による痛みは無いのですが、代わりに手術で切ったところがめちゃくちゃ痛い。腹腔鏡手術なので小さい穴を3つ開けただけなのですが、虫垂を切除しているのと、お腹の中をいじっているからなのか、マジで痛い。後から聞きましたが腹膜炎も併発していました。虫垂と盲腸の間に糞石ができて膿がたまって炎症が起きることが盲腸=虫垂炎なのですが、私の場合はそれが破裂していて膿が内蔵に飛び出していたので、内蔵の洗浄が必要でした。幸い範囲はLimitedだったようですが、これが広範囲ですと冒頭に申し上げた急性腹膜炎となり全体の洗浄等が必要になるようです。

まず腹筋を使って起き上がることが困難です。あれ?腹筋も切除しちゃった?ってくらい腹筋が使えません。幸いなことにパラマウントベッドだったので、ベッドを利用して体を起こすことはできますが、術後すぐにベッドから降りて立ち上がったり、歩いたりすることはできません

そしてその影響による辛さがもう一つ。そうです。トイレ問題です。恥ずかしい話、今回の入院で私も一度、粗相をしてしまいました。ほぼ水だったのですがベッドを汚してしまい看護師さんへ迷惑をかけてしまいました。それ以上に30過ぎの大の大人がおもらし。今回のタイトル「童貞どもへ」もそんな男子のプライドと恥、というイメージからあえて処女よりも童貞だな、と思って付けました。

その後、着替えをさせてもらって久しぶりに大人用のおむつを履かせてもらいました。ちなみにおむつはdiaper(ダァイアプゥァー)といいますので覚えておいてください。

3日目でようやくあるけるようになり、リハビリを開始。基本的には猫背になってしまいますから、早くは歩けません。あと歩くと振動がお腹に響いて痛いです。4日目に「明日退院しましょうか?」と言われてはい、と答える。5日目にバラガスがやってきて、通院について説明を受けCongratulationと笑顔で言ってくれました。

とくに海外での手術の場合は旅行者保険などに入っていると思いますが、退院前に各種保険の手続きをするので、保険の証明書(Document Policy)は絶対にスマホにダウンロードしておいてください!でないと高額な医療費を払わなければいけなくなります。

エピローグ

こうして私の童貞(盲腸)は奪われた訳ですが、3週間たった今、このnoteを書きながら思うことを最後にまとめて終わりたいと思います。

【盲腸で学んだこと】

・海外生活での病気は我慢せずに日本系の病院へ行くべし

・医療は進んでいるから外国人医者だとしても安心してよい

・とはいえ術後は体の自由が利かない

・日本人は特に我慢しすぎ。「仕事が~」とか気にしなくていい、あとから何とかなる

・盲腸をなめるなよ。急性腹膜炎になって、飛ぶぞ?(死ぬぞ)

・日常で歩いたり話したり食べたりできている人間の体の神秘と尊さ

最後に

盲腸は防げません。今回盲腸=虫垂炎になった理由を調べましたが、ストレス説や不摂生説などがありました。ただ、これをやったら虫垂炎になる、というものはありません。もしかしたら健康に気を付けていてもなるかもしれません。大人に限らず子供でも発症すると言います。なので大事なことは、「痛みに気づいた後の対処」です。

特に日本人は「仕事を休まないこと」が美徳とされています。これははっきり言って間違っています。結局それで気持ちが良いのは本人だけで、悪化して入院でもしたらかかわる人全員に影響が出て不幸になります。

シンガポールという国は、外国人に向けて国民健康保険や社会保険がありません。すべて個人での加入です。そのため、我慢をしてしまう傾向があるのかもしれませんが、体が資本ですから自分で都合よく解釈してドラッグストアで済ませないようにするべきだと考えます。

「休んだことないことが自慢」は素晴らしいです。でも素晴らしいのは「健康を維持できている」ことであって、我慢してでも会社に来ることは自慢でも何でもありません。

盲腸、という切り口ではありましたが、この記事を読んでくださった方の健康意識が少しでも変わればいいな、と思いながら今回はこの辺りで終わりにしようと思います。

ご精読ありがとうございました。



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