見出し画像

ファンドレイジングの指標を考える

~営利・非営利のソーシャル事業の成長が、社会課題の解決を加速させ、より良い社会を築くと信じて執筆~

今回は「ファンドレジングの指標」というニッチな分野のなかでもさらにニッチ事柄になことを書きます。

1.ファンドレジング指標の用語集がある

「ファンドレジングの指標」と言ったときに、海外にあるファンドレイジング・エフェクティブネス・プロジェクト(The Fundraising Effectiveness Project:通称「FEP」)は切っても切り離せない存在です。

「ファンドレイジング・エフェクティブネス・プロジェクト(The Fundraising Effectiveness Project:通称「FEP」)」とは
2006年にAFPを中心に、データベース提供企業やコンサルティング企業が加わった協働プロジェクトとして発足し、ファンドレイジングの有効性に関する調査・研修を行っています。

そのなかで、「ファンドレイジング指標」について統一基準(どちらかというと”デファクト・スタンダード”を目指した)を定めた「用語集」があります。

発行年は2003年となっていますが、2021年6月末に開催された世界最大のファンドレイジングカンファレンス「AFP ICON」のセッションでも紹介されており、今でも十分参考になります(個人的には、海外のファンドレイジング・レポートを見る際には、この用語集があると理解がより深まりました)。

2.用語集に書かれていること

では何が書かれているかというと、80近くの指標について触れられています。

まず、指標に必要なドナー情報(例えば「初回の寄付額」など)がピックアップされております。その数は最低限必要な項目に絞られていることもあり、話が逸れますが、支援者データベースに設定すべき最低限の項目だと感じました。

指標をカテゴライズしてみると、

新規:寄付や会員の新規獲得
継続:寄付のリピートや会員の継続
再開:数年前に寄付して、寄付しない期間を経て、再度寄付する
アップ(及びダウン)グレード:寄付額の増加(または減少)
ライフタイムバリュー:寄付者の生涯価値

に分けることができました。

つまり、新規→継続(そのなかで再開とアップグレードを促す)という流れを、ライフタイムバリューという側面でも捉える、という考え方が「用語集」から感じました

3、興味深い指標

指標については面白く、例えば「LTV」の計算式です。

LTV
 = 一人の寄付者による平均年間寄付額[①] × 推定寄付者寿命 (年)[②]

これを分解すると、

[①]一人の寄付者による平均年間寄付額
 = これまでの寄付総額 ÷ これまでの寄付年数

は分かり易いです。

一方の[②]推定寄付者寿命 (年)は、悩まいことが多々あります。

用語集では、

[②]推定寄付者寿命 (年)
 = 1 ÷ ドナー減少率[③]
[③]ドナー減少率
 = 昨年は寄付したが、今年はしなかった寄付者の数 ÷ 昨年の寄付者総数

と記載されています。

例えば、昨年1,000人の寄付者がおり、400人が寄付しなかったとすると、

[③]ドナー減少率 =400÷1000 = 40%

40%は0.4のため、

[②]推定寄付者寿命 (年) = 1÷0.4 = 2.5年

と算出できます。

これはこれで日本でも活用できそうです。

4.マニアックな指標

ここからは少しマニアックな話になります。

海外のファンドレイジング・レポートを読んでると

「lapsed donors」

という単語が出てきます。

これは「失効ドナー」と個人的には訳しており(日本ではあまり馴染みがない気がします)、意味は「昨年まで寄付していたが、今年は寄付していない寄付者」になります。

この「lapsed donors」に関する指標として

「① donor recapture rate(ドナー再捕獲率)」
「② donor reactivate rate(ドナー再活性化率)」
「③ donor reacquire rate(ドナー再獲得率)」

という似通った指標が出ていて、区分けがよく分かりませんでしたが、この用語集を読むと、少しわかってきました。

「② donor reactivate rate(ドナー再活性化率)」
=今年
と2年前に寄付したが昨年は寄付しなかった失効ドナーの数 ÷ 2年前に寄付したが昨年は寄付しなかった失効ドナーの数
「③ donor reacquire rate(ドナー再獲得率)」
=今年
と3年以上前に寄付をしたが過去2年間には寄付をしていない失効ドナーの数 ÷ 3年以上前に寄付をしたが過去2年間には寄付をしていない失効ドナーの数

この二つは、過去に一度は寄付をしたが、途中で途絶えるも、再び寄付し始めたドナーの割合を、期間を分けて算出していることが違いでした。

もう一つの

「① donor recapture rate(ドナー再捕獲率)」
=今年寄付した失効ドナーの数 ÷ 昨年の総寄付者数

これは、過去に一度は寄付をしたが、途中で途絶えるも、再び寄付し始めたドナーについて、昨年の寄付者全体に占める割合を見ているようです。しかしながら、僕の理解が届かないのか、分子と分母の関係から、どう指標を使ったよいのかがわからないままでした。ここはもう少し調べる必要がありますです。

このように、用語集は今でも活用できる気がしています。個人的には面白くてはまっています。

~営利・非営利のソーシャル事業の成長が、社会課題の解決を加速させ、より良い社会を築くと信じて執筆~

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?