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(原文 2022年06月17日)

僕がワインと関りを持ったのは中学生の頃。日経新聞に手作りワインについて掲載記事があり、早速、糖分が多いマスカットや巨峰を冷蔵庫から母親の眼を盗んで、ちょろまかしてワインを添加して瓶内発酵させて密造ワイン製造を楽しんでいました。未成年ながら試飲して悦に入っていました。もともとアルコールに弱い僕ですが、以来ワインにだけは耐性があり、またテーステイング能力も多少は優れている模様で、酔わないで楽しんでいます。 それから数十年たってアメリカに居を構えてからは、まだ日本でほとんど知られていなかったオーパスワン(ロバートモンダビとロスチャイルド男爵とのコラボレーションで生まれた高級カルフォルニアワインで今は1本5万円程度で故ヤシキタカジン愛飲で有名になった)のシャトーに出向き1ダース1000ドル程度で購入して愛飲していました。

僕がワイン教育機関の最高峰である、マスターオブワイン協会と知り合ったのは、当時の大和証券土井社長と元NHK会長の島桂次さんの関係でイギリスの大和証券スタッフのミヨコステーブンソンさんと知り合いになった事でした。ご主人が厳格な弁護士で国際結婚したミヨコさんはイギリスのマスターオブワインとして著名なジャンシスロビンソンとの交流も深く一緒にワインを楽しむと同時に、日本のワイン事情についても語り合いました。

2018年になって日本でもワイン品質基準が施行されて、ワイン製造の基準が制定され世界基準のワイン表記と製造が厳格に行われる様になりましたが、それまでの日本のワイン市場は百鬼夜行とも言うべき、なんでもありの未開国でした。例えば中国から安物の葡萄原液を買ってきて、日本で発酵させて『XXワイン』と銘打ち大々的に販売したり、フランスから少しだけワインを仕入れて、ブルガリア産のワインと混ぜて、日本だけで『フランスワイン』として販売する等、ワイン⇒文化 とは程遠い ワイン⇒詐欺商法 がまかり取っていました。そのインチキフランスワインがヨーロッパに逆輸入されて大問題になっていました。それらの義憤も含めてミヨコさんやジャンシスさんと飲んでいて、その勢いで、イギリスのシテイにあるヴィントナーズホールで日本のワイン市場・文化の現状と今後の見通しを1時間ばかりレクチャーする羽目になりました。僕は日本の歌舞伎や日本酒を例にとりながら、日本はワイン文化を軽視しているのではなく、商才が先走っているだけだ、文化の優れている日本は、近いうちに立派なワイン輸入国になるし、正当なワイン製造国になるので暖かく見守ってほしいと、ブロークンイングリッシュで熱弁しました。それやこれやで、僕はマスターオブワイン協会から認められ、日本人として初めてマスターオブワイン協会のサポーター(ロバートモンダビ、ローズマウント等世界トップのワイナリーがサポーター)

に命名され、同時に協会の教育機関WSET(ワインアンドスピリッツエヅケーショントラスト)の教室を、協会派遣のマスターオブワインをレクチャラーとして日本で数か所で開催する事になりました。(今はJALがWSETの教室を開催しているはずです)

さて、日本でのマスターオブワインは大橋健一さんただ一人で世界中で370人のマスターオブワインが居ます。一方ソムリエについては国立のソムリエ機関としてはフランスとイタリアにありフランスにはソムリエ5000名程度、イタリアには10万人程度います。日本では一般社団法人日本ソムリエ協会の認定ソムリエが4万人程度ワインアドバイザー・エキスパートが35000人程度います。人数からしてマスターオブワインの資格取得は大変難しく、ソムリエはそれほど難しくないのがお判りでしょう。 僕はワインを提供、販売するにあたって一番大切な能力は、料理とのメリタージュを判断するセンスと嗅覚だと考えていますので、マスターオブワインは別格としてソムリエ資格の有無は大して重要ではないと考えています。昔雇っていたソムリエは知識が溢れていましたが下戸でしたし、シニアソムリエはアル中でした。資格よりもお客様の立場でワインを提案する能力が重要です。

ワインは奥深く、楽しいものです。今までは日本で販売されているワインは保存料が異常に多く悪酔いするものや、生産地不詳のインチキワイン、ワインとは名ばかりの酒精強化ワイン 等々 が跋扈していましたが2018年以降はかなり世界標準に近くなっています。世界では10万種類のワインが製造され、なおかつ製造年度ヴィンテージによって味も評価も異なります。一流ホテルでソムリエが提供しているからと安心して飲んだら劣化が進んだひどいワインで、ソムリエが資格を盾に着て謝りさえしないという状況が今でもあります。 それほどワインの管理は難しく保存環境や温度も重視するべきデリケートなものなのです。

僕がマスターオブワイン協会のからみで、ミス神戸ワインの審査員として招待された時、神戸ワインを一切飲まず、神戸の土壌ではカルフォルニアワインの真似をしても美味しいワインは出来ず焼酎を造る方が良いと、正論を述べた時には神戸市職員から恐ろしい眼差しで睨みつけられましたが、ワイン製造表示が厳格になった今、神戸ワインは殆ど見かけなくなりました。形だけ立派な醸造所を作っても、環境や文化や味覚センスが無くては虚構です。

さて、日本でも国産の立派なワイナリーが増えてきました、今までは山梨が主流でしたが地球温暖化の影響から、長野や北海道でも立派なワインが生まれています。クワンチャイ梅田店、三宮店で提供しているヴィラデストワインは知人だった玉村豊男さんが長野で立ち上げた日本を代表するブテイックワイナリーで日本開催のサミットでもオフィシャルウィンとして採用された日本のフラッグシップワインです。限定生産本数が各種3000本程度と限られていますが、お客様には切らさず提供させて頂いています。            


文化不毛の中国でモエシャンドングループが雲南省で立ち上げたアユオンをいうワインは、世界的に評価が高く奪い合いです。ニュージーランドのプロビデンスというワインも高品質ですし、世界中から素晴らしいワインが産出され始めています。日本も負けていられません文化を背負ったワインが、各国の造り手と気候を食卓に届ける。ワインは素晴らしい文化大使です。僕と一緒に食事をしてワインを傾けながら、文化談義の花を咲かせましょう。

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