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スポーツカメラマンの仕事:サッカーJFL第19節-20200830 FC大阪 vs ヴィアティン三重

フリーランスのカメラマン、グラフィックデザイナーとして静かに生きているボクですが、日頃の仕事を自分だけの目線で書いてみようかなと思いついたのでnoteに記録しておきます。人は忘れてしまう生き物なので(出来事も忘れるし、書くことも忘れる)、自分のための記録として気が向いたときだけ書くつもりです。

最初に断っておきますが、全てボクの主観です。ヴィアティン三重のいちファンとしての目線でもあります。そして特定の誰か(相手チームや応援する人たち)のマイナスになることは絶対に書きません。また、ヴィアティン三重のオフィシャルフォトグラファーとして撮影していますので、リーグの規定を遵守し、選手の写真などを使用することはありません。

2020年8月30日(日)東大阪市花園ラグビー場で行われた第22回日本フットボールリーグ(JFL)第19節・FC大阪 vs ヴィアティン三重。花園ラグビー場には初めて行きました。ここの第2グラウンドをFC大阪が改修しホームスタジアムとして使用するそうです。この日は37℃の猛暑日。暑かった。

真夏の日差しが照りつける中試合が始まり、太陽を背負って攻めるヴィアティン三重が攻めるゴール横に陣取る。選手たちが太陽を背負う向きなのでカメラからすれば完全な逆光。白い2ndユニフォームを着た選手たちの顔は太陽が背後にあるためほぼ真っ黒に写る。空には大きな積乱雲や薄めの雨雲がちらほらあり、時折太陽を隠す。その影響で光の具合が目まぐるしく変化する。撮影環境としてはまぁまぁ撮りづらい日だった。

試合は絶対に負けられない、というより絶対に勝ちたい相手・FC大阪。選手たちは集中した良い表情。相手もJ昇格を目指す百年構想クラブだけあって勝ちたい思いは同じ。しっかりと対策したであろう試合運びを見せる。そのなかでもセットプレーにはかなり気を使っていた感じで、ほとんどの人数をゴール前に集めてヴィアティン三重の佐藤洸一選手、古川大悟選手を警戒する。そのせいでゴール前には人が密集、カメラマンとしては的が絞りづらく、人と人が重なって撮りづらい。佐藤・古川に的を絞ると、セカンドボールに反応した選手を追いきれない。

ゴール裏から400ミリの単焦点レンズで狙うとファインダーに入るのは選手2〜3人の腰から上ぐらい。そこを集中して見るということは、その他の状況は何も見えない(=状況が掴めない)。1点目はまさにその典型的なパターンで、ゴール前でボールを受けた太田賢吾選手はバッチリ捉えることができた。あのままゴールを決めてくれてさえいれば、最高のシュートシーンとゴールパフォーマンスを最高画質で収めることができたはず。しかし太田選手のシュートはクロスバーを叩き、相手DFがクリアしそこねて回転がかかったボールの行方は狭い視野の中で確認することはできなかった。当然古川大悟選手の芸術的なボレーシュートは視野の外。喜びを爆発させてピッチサイドに走っていく古川選手。反対サイドから狙っていたので飛び上がってガッツポーズをする古川選手と自分との間にはゴールとゴールのネットがあり、最高の瞬間にはゴールネットしか写せない状況。自分の引きの弱さを呪う。

そして2点目、1点目とは反対サイド(右サイド)のゴール横に陣取る。そして右サイドからのコーナーキック。1点目の不運を思い出し、70-200ミリのズームレンズに持ち替えてゴール前の空中戦を狙う。井上丈選手が蹴ったボールは古川大悟選手にドンピシャ。しかしそれは終わって映像を見たから言える事実。現場での瞬間は相手DF3人ともつれ合った佐藤洸一選手が古川大悟選手により掛かるような状況になった中で古川選手が上手く頭ですらし…。ボクの位置からは5人の選手がもみくちゃになっていく様子しか見えず、ゴールが決まった後に仁王立ちして喜びを表した古川大悟選手のゴールだと信じて彼の背中を連写。そこへ駆け寄る平信選手を連写。あれが塩谷仁選手のゴールだったと知ったのはハーフタイムのことだった。

後半に入って逆サイドのゴール裏に移る。太陽が低くなり選手たちの影が長くなる。汗が光る表情は太陽に照らされてエモさが増す。しかし後半に入ってヴィアティン三重の攻撃回数は極端に減り、相手ペースで試合が進む。相手陣地に攻め入る回数が減る=ボクのシャッターチャンスも減る。相棒のアッツンと手分けして撮っていて、ボクの役目はゴールシーンを中心とした相手ゴール前での決定機担当となっている。なので後半はシャッターを切る回数が極端に少なかった。そして加藤大喜選手が守るゴール前での出来事は遠巻きにしか見られていなかったので、帰ってからアーカイブ映像を見て自分の記憶の答え合わせをする。結果は勝ったのでまずはその勝利を伝えることがボクの役割。従って、後半の映像は軽く流した程度。失点シーンだけ繰り返し見て状況を理解する。

試合翌日の今日。ハイライト映像で振り返り、後半のピンチをあらためて知る。よくあれだけの猛攻を凌いだなと冷や汗。しかし、ゴール前で身体を張り、身を投げ出して相手のシュートを防ぐ様はこれまでには見られなかった気迫・気合を感じさせられる。闘志、根性、ファイティングスピリット。いろんな言葉がすべて当てはまる。やはり「昇格」という具体的な目標が目の前にある状態があのプレーを生むのだと感じさせられた。あそこまでの闘志は長い間チームを見てきて初めて感じたかもしれない(JFL昇格を決めた年の全社・地域CL以来かな)。

闘志・戦う姿勢。後半の映像を見て試合序盤の出来事が思い返される。

相手のファールに対して猛然と詰め寄った佐藤洸一選手。鬼の形相と気迫。近くで見ていたが、当然手を出したりはしておらず猛然と詰め寄って相手選手の目の前で止まる。チームいちのベテランが誰よりも強い気持ちを見せた。あの場面で一段とチームの闘う気持ちに火が点いた(と受け止めてその後の試合を追った)。本人に聞いたわけではないが、あそこでは意図して闘う姿勢をチーム全体に感じさせたかったんじゃないだろうか。というのも、その一件の後、佐藤洸一選手は涼しい顔でゴール横のボトルを手にとって水分補給していた。滝のような汗をかいてはいたが「涼しい顔」で。

FC大阪の選手たちのプレーは試合開始早々から気迫に満ちていて、プレー中に発する言葉もパワーがあった。ヴィアティン三重の選手たちは荒々しい態度や言葉を発することが多くなく(チームのスタイル・ポリシーとして意図的に)、傍で見ていると相手の気迫に圧倒されてしまうのではないかと感じることもある。佐藤洸一選手はあの振る舞いで「強い相手から意地でも勝点3をもぎ取るんだよ!!!」というメッセージを、若い選手たちに背中で伝えたかったのかもしれない。

前節のHonda FC戦でも感じたが、佐藤洸一選手のゴール前でのゲームリーディングというか、ペナルティエリア内での感情のコントロールは「さすがベテラン」と感じさせられる。苛立っているように見せかけて冷静、相手を苛立たせながら自分は至って冷静。正しい例えかどうかはわからないが、F1ドライバーやボクサーみたいな精神状態なのかもしれない。闘争心はむき出し、でも冷静。かっこいいな。

試合には1点差で勝利し、首位チームから貴重な勝点3をゲット。しかしこの試合の写真の撮れ高は高くなかった。勝った試合でも写真の撮れ高はゲーム内容に比例する。フリーでボールを持たせて貰えれば、フリーでシュートを打たせてもらえればそれは写真にも納めやすい。相手のプレスを受け、厳しいマークにさらされて自由にプレーさせてもらえない。それだけ苦しい闘いだったと言える(カメラマン的に)。

でもカメラマンがもっと上手ければそんな試合でもいい写真撮るよね!(泣)でも勝ったからいいんだ。(顔で笑って心でも笑って、その裏でちょっと泣いている)

次はもっと良い場面を嗅ぎ取れるように鼻のトレーニングをしよう。

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