マガジンのカバー画像

振り返るな、書け

28
ランダムお題を制限時間内に書く、即興小説です
運営しているクリエイター

2022年4月の記事一覧

奇跡を殺した日

 生きてしまった罪悪感、というものが、確実にある。
 小さな共同体――家族だったり、学校だったり、地域だったり――の全員が等しく災厄に見舞われ、無惨な死を遂げたなか、ひとり生き残ってしまった場合。
 当時六歳だった僕は、泥だらけで棒立ちのまま、知らないおばさんに『生きててよかったね』と抱き締められた。
 おばさんは涙を流して僕が生き残ったことを喜び、テレビ越しにその様子を見た誰もが、同じように涙を

もっとみる