見出し画像

第4回講義 夢先生レクチャー 高澤祐治先生

📚はじめに

 2022年度第4回講義が8月30日に開催されました🏉
 今回は高澤裕治先生に①2015年ラグビーW杯にて、ドクターとして帯同されたお話 ②スポーツ医学研究室についてご講義いただきました。

✅講師紹介

 順天堂大学大学病院スポーツ健康科学研究科教授、スポーツ健康科学部スポーツ科学科教授、順天堂大学スポーツ医科学研究所副所長、JOC専任ドクターであり、スポーツドクターとして2015年ラグビーW杯に帯同したご経験のある高澤祐治先生にご講義いただきました。

✅2015年ラグビーW杯にて、ドクターとして帯同されたお話

現場型のスポーツドクター

 スポーツドクターとしてのサポートの仕方はチームの中、スポーツ現場、病院でのサポートの3つがあるが、スポーツ現場において多職種の人に関わりスポーツ医学の楽しさや必要な知識を教わった。
 1996年の東日本医科学生大会の準決勝で起こった頸椎脱臼骨折や1998年全国社会人大会の準決勝で起こった左膝関節脱臼を経て”病院で待っていても何もできない、現場に行かなければ”と思うようになった。
 予防・リハビリ、治療のゴール、選手の訴え、現場からの要求などスポーツ現場から学ぶことは多い。整形外科名誉教授の黒澤尚先生は”スポーツ医学は診察室で患者さんを待ってても学べない、手術室で手術してても経験できない、スポーツ現場の医療なんです”と話す。
 救急患者が医療機関に収容されるまでに行われる処置などを包括した概念(プレホスピタルケア)の重要性が近年、スポーツ現場においても認識されている。また、国際メガスポーツイベントでは世界基準が求められる。

スポーツドクターに求められる知識・経験

 効果的に業務を遂行するために必要な知識・経験は緊急行動計画、心肺蘇生法、自動体外式除細動器、二次救命処置、外傷二次救命処置などがある。これらに加え、医学、心理学・行動学・精神医学、薬理学(アンチドーピングを含む)、栄養学、運動科学が必要とされる。
 最も重要な役割は、アスリートの医学的および心理的ニーズに対処することである。

2015年ラグビーW杯にて

 チームスタッフとしてのスポーツドクターはアスリートの成長やチームの成功に対して、多職種間で連携し医療サポートを提供することが求められる。
 チームドクターとして求められた役割はメディカルスタッフをまとめること、メディカルとSC(Strength&Condition)の2つの柱をリンクさせることだった。
 エディージョーンズ監督は、日本代表がW杯で勝利するために「勝てない言い訳を探し出すよりWinning Advantage(勝利につながる長所)を見つけるべき」という考えを選手だけでなくサポートチームにも徹底させた。
 また、南アフリカに歴史的大勝利した裏には「ジャパンウェイ」というスローガンがあった。ジャパンウェイとは、日本人にしかできない、日本人らしいプレーをするということだ。いまやジャパンウェイという考え方はサッカーなど、他の競技においても重要視されている。

スポーツドクター≠整形外科医

 スポーツドクターと聞くと整形外科医だと思う人が多いが、スポーツの現場では整形外科医だけでなく様々な科の医師、多職種の人が活躍している。実際、2019年に行われたラグビーW杯日本開催において、全45試合においてマッチドクター30人のうち整形外科医は12人だった。決勝戦に出務したドクターにおいては16人中4人だけであった。
 海外と比べると、日本のスポーツ現場ではスポーツドクター≠整形外科医という認識が薄いが、徐々に広がっている。

✅スポーツ医学研究室について

順天堂大学スポーツ医学研究室

 順天堂大学スポーツ医学研究室は、今までの各学部(保健医療・スポーツ健康科学・医学・看護)の領域職種、診療科を超えたスポーツ医学の拠点となる教育・研究部門として誕生した。産学連携や、医学的視点からの人材育成など、広義にわたり、スポーツ医科学の向上を目指す。また、順天堂大学のスポーツ医科学の知見と、世界規模の大会経験、各競技団体への連携の実績を活用し、医学的側面と、スポーツ現場の側面を融合し、領域を超えた有機的に連携できる場を目指している。
 医師、トレーナー(AT、SC、PT)、理学療法士、看護師、薬剤師、指導者、選手自身など、治療・成長に関わる全ての関係者での交流と育成を行う事で、多角的なアプローチができる知見をもった人材を育成する。

スポーツ政策推進機構

 日本スポーツ政策推進機構では、スポーツ医学エクスパートアライアンスを創設し領域を超えた交流を図ること、スポーツ医学の医系等高等教育における必須カリキュラム化、アスレティックトレーナー資格の国家資格化、日本のアンチ・ドーピング体制を確立しさらなる国際貢献を推進することなどを目標に掲げている。

✅Q&A

Q. メディカルスタッフとしてチームに関わるときに気を付けること、監督や選手との距離感は?
A. 監督や他のスタッフには何でも話せるようにする。家族ぐるみで仲良くする場合もある。医師として、人間として信用してもらう。逆に、選手とは仲良くなりすぎないように気を付ける。ある程度の距離は保ちスタッフと選手、医師と患者の関係を保つ。
 
Q. スポーツ経験がなくてもスポーツドクターはできるか?
A. スポーツ経験があると、監督やコーチの仕事にまで首を突っ込んでしまうことがある。プロフェッショナルとしてスポーツドクターの仕事ができればいいので、スポーツ経験がなくてもスポーツドクターをできる。コミュニケーション力、仕事に対する熱量を見られている。
 
Q. 選手が怪我で離脱した際、選手に寄り添うべきか?それともチームに寄り添うべきか?
A. 選手の復帰時期の判断はかなり難しい。監督やコーチングスタッフが、その選手がどの試合で活躍してほしいかを伝えてくれるので、その試合に向けて治療・リハビリをする。

Q. スポーツドクター≠整形外科医とあったが、具体的にはどのような職種があるか?
A. 海外では救急・リハビリ・栄養に詳しい医師が多い。怪我などの外科的な診療よりも、むしろ風邪などの内科的な診療の方が多い。

Q. 複数の資格を持っているほうがいいのか?それとも1つを極めるほうがいいのか?
A. チームによって、トレーナーか医師のどちらかしかいない場合もあればそれぞれ複数人いる場合もある。前者の場合は複数の資格・広い知識を持っていると仕事がしやすい。どちらの場合でも、活動の幅が広がるためできるだけ多くの資格を持っていたほうがいい。

Q. コミュニケーション面で重要視していることは?
A. 選手の言うことを全部聞くことが必ずしも良いことではない。また、気を利かせて求められていること以上のことをすることもマイナスに転じてしまうことがある。例えば、ユースの選手だとやるべきことを自分で出来なくなることがある。自己管理・自己決定・自己判断を手伝うだけが良い。

Q. 整形外科以外の場合、スポーツ医学に関わるきっかけは?
A. 専門科に拘らず、積極的に現場で出てゆくことが大切。仕事への熱量・情熱、コミュニケーション力、礼儀、人間性が重要である。若いうちは足元を固めて信頼してもらえる人になることが大切。

✅感想

穂苅 敦さん
貴重なお話をありがとうございました!情熱に勝るものはないと思いましたし、アスレティックトレーナーとして現場に出始めた時からいまは周囲のスタッフも多様化していると思います。職人気質じゃ難しいと僕は考えています。コミュニケーション能力が非常に大切かなと。
 
市澤 文太さん
貴重なご講義をありがとうございました。 私はPTとしてアスリートの力になりたいと考えています。ATや鍼灸、あん摩マッサージ指圧やNSCA-CSCS、ピラティスやヨガ、心理系の資格など様々なライセンスを必要によって獲得しながら自分オリジナルのスタイルを確立しようとイメージしているので、先生の「資格はとれるだけとっておくべき」という言葉が心強かったです。 今回の講義で得た知識を、スポーツ現場でのドクターの方との連携に生かさせていただきます。 ご講義、ありがとうございました。


最後までご覧いただきありがとうございました。
                             文責:井戸

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?