第5回講義 IFCPF Woman's World Cup2022帯同報告
📚はじめに
2022年10月12日(水)19時より、今年度第5回目の講義が開催されました!👏今回は、zoomによるオンライン形式で行いました。
今回は、本学の保健医療学部理学療法学科の宮森隆行先生にご講義いただき、CPサッカーのワールドカップ日本女子代表に帯同されたお話をお聞きしました⚽
✅東京2020での活動
東京オリンピック2020では理学療法コアスタッフとして関わった。PTは選手村総合診療所での活動などを行った。
Physioは海外では医師の診察なく理学療法を提供できる。そのような海外の選手に合わせるため、Physioエリアの中に医師の診察エリアを設けた。物理療法の整備なども行い、選手1人に対してスタッフ2名で対応するようにしていた。オリンピック中、7~23時まで1日100名以上を受け入れていた。PT以外にも東京2020では多くの順天堂関係者が任務を行った。
✅CPサッカーとは
CP(Cerebral palsy)サッカーは、脳性麻痺をもつ選手たちのスポーツである。女子は5人制、男子は7人制で、日本代表選手のなかには、陸上のパラリンピックの選手やサッカー初心者の選手もいる。
東京、パリパラリンピックでは競技種目から外れてしまい、競技人口が減少傾向になっている。再びオリンピック種目となるよう国際大会を盛り上げていこうとしている。
✅IFCPF Woman's World Cup2022
ワールドカップは2年に1回開催される。今大会、スペインのサロウで行われたIFCPF Woman's World Cup2022には日本を含め5チームが参加した。日本チームは、監督・主務・PT(宮森先生)・コーチ2名・選手6名で構成され、感染対策がなされながら7日間で5試合を闘った。
CPサッカーでは、大会前にクラス分けがなされる。A:両麻痺・B:四肢麻痺・C:片麻痺の麻痺の程度と、FT1:重度~FT3:軽度の重症度の評価によって分けられる。またクラス分けは、FT1が1人以上及びFT3が1人以下といった規定があるなどチーム編成にも関わる重要なポイントとなる。
クラス分け
クラス分けは、Medical Diagnosis Form(MDFフォーム)の提出とIFCPFのメディカルチームによる評価によってなされる。
MDFフォームは、かかりつけ医に記入してもらうもので、画像や既往歴、MMTなどの診療情報が含まれている。
メディカルチームのリハ医・PTによる評価では、コーディネーション、運動失調検査などといった運動機能検査と、準備運動やミニゲームから評価するスキル検査が行われる。選手たちは日常生活の中では目に見えた障害がある一方で、スポーツ中は健常のような動きをするため実際と異なったクラス分けをされてしまうこともあり得る。
適切なクラス分けがなされるよう、MDFフォームの内容を充実させる、準備運動中の声がけを行うなどしている。
PTの仕事
コンディショニングやテーピングなどはもちろん、長時間の移動の途中ではストレッチングの指導も行う。試合期間は、ウォームアップ・クールダウン、特にストレッチでは同じ筋へのアプローチでも選手それぞれに対して適した方法を指導する。
また障がいのある選手たちに対して、ドリンクを飲みやすい状態で渡すなど、健常の選手よりも気を配った対応が必要となる。
結果・大会終了後
日本代表チームの結果は3位🥉(🥇アメリカ 🥈オーストラリア)
試合終了後には海外チームとの交流の機会もあった。
帰国直前にてんかん発作を起こした選手がいたが、現地の医師の対応で無事帰国することができた。帰国後にも順天堂医院にて診療サポートを行うなど、選手たちに定期的な理学療法の場を提供している。
また、CPサッカーを盛り上げていくために、国際大会開催についての国際ミーティングにも定期的に参加している。
▶講義の中で宮森先生からご紹介いただいた、CPサッカーの試合の様子をまとめた動画です。ぜひご覧ください。
✅Q&A
Ⓠ 足関節の捻挫は多いのですか?
Ⓐ足関節捻挫は麻痺側に多い。痙縮によって思うように関節を動かすことができないため、固まりやすい。通常の脳性麻痺に対しては筋緊張を緩めながらリハビリをしていくが、アスリートは運動強度が高く関節が固まったまま運動していることが多い。装具やテーピングでの固定も行うが、逆に股関節・膝関節・上肢の筋緊張を高めることにつながることもある。
Ⓠ準備について、健常のサッカーに帯同する時と異なるものはありますか?
Ⓐ転びやすいため、健常よりも擦傷が多い。また、トイレに行くのにも時間がかかりサポートが必要となる。
スタッフが選手の荷物を運ぶことが多く、スタッフが何でもやってくれるだろうと思っている選手もいる。そのため、選手に対するプレー以外の面での育成にも関わっていく。
Ⓠ選手個人の自立度をどのように判断していますか?またそれを踏まえた具体的なサポートを教えてください。
Ⓐ準備・荷物運びも、最初はあえて全部やるようにしている。スタッフがやっているところを見せて、選手自身が自ら動こうとすることが狙い。少しずつ手伝いをするようになって、これは自分でできるなということを気づくことで、自立してできる範囲は広がっていく。
選手たちの中には、知的障がいを持っていたり自分の障がいを認知できていない人もいる。そのため、保護者から服薬している薬や選手の性格、気を付けるべきところなどを聞いて管理している。
Ⓠ片麻痺の場合、負担がかかりやすいのは非麻痺側か麻痺側どちらですか?
Ⓐ軟部組織系(筋・腱)は非麻痺側に負担がかかりやすい。非麻痺側は動作時に支持する方であるため、支持による足関節捻挫・ACL(前十字靭帯)損傷が多い。
また麻痺側では、大腿直筋・下腿三頭筋・アキレス腱のスポーツ障害がみられる。
✅まとめ
普段は実際に触れる機会の少ないパラスポーツでメディカル面ではどのような関わり方をされているのか、詳細なお話を聞くことができました。また、CPサッカーについても初めてお話を聞いた塾生も多かったのではないでしょうか。IFCPF World Cupは2023年にも開催されるそうです。いつかワールドカップが日本で開催される日が楽しみですね。
宮森先生には、塾生にとって貴重なお話をしていただきました。ありがとうございました。
年内のスポーツ医学塾の活動も残りわずかになってきました。残りの活動も積極的に参加していきましょう!
最後までご覧いただきありがとうございました。
文責:宮澤
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?