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デザインの価値を引き出す事業マネジメントの心得

こんにちは、グッドパッチの佐宗です。
今日はGoodpatch Design Advent Calendar 2021 5日目ということで、『デザインの価値を引き出す事業マネジメント』について書きたいと思います。フレームワークというより、実際の事業マネジメントとして、自分が統括しているStrapチームでどんな実践をしてきたか一部を書きたいと思います。

デザインの価値を引き出すとは?

昨今、「デザイン」の解釈が広がり色んな文脈で使われすぎて様々な意見が出てきていると思います。
多義性があって何を指すものなのかよくわからない、まるでグラフィックやビジュアルそのものに価値がないかのように聞こえる、実際に手を動かさないデザイナーが増えた、などなど。

自分がこの議論に対して思うのは、デザインはものを形づくるデザインと、無形資産としてのデザインの大きく2つに分けられて、どっちを大事にした方がいいみたいな二項対立ではなく、結局両方のバランスが大事だと思ってます。前者の蓄積が後者とも言えるし、デザインはP/LだけでなくB/Sとして資産にもなるということです。

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無形資産のデザインの発信やスタンスばかりで実際のアウトプットの品質が伴わないのは組織や社会が変わっていかないし、目に見えるアウトプット周辺のみに目を向けていると経営レベルでデザインの資産を活用されず、結局デザイナーの活躍の幅やデザインの可能性が狭まってしまうと思います。

なので、ビジネスや社会的な視点でデザインの可能性を活用する(≒デザインマネジメント)ためには、有形資産と無形資産両方のデザインの重要性を意識し、それを累積的に積み上げていく必要があると思っています。個人的には事業マネジメントをする人間こそが、デザインを正しく理解し、価値を引き出すことが大事だと考えます。

では、事業オーナーはどのようなスタンスでデザインの価値を引き出すべきなのか。
実践してきたことを書いていこうと思います。

01 事業の意義を考える

デザインの価値を引き出す事業マネジメントをする上では、まずその事業に対する「意義付け」「意味付け」から始めるといいと思ってます。
普段考えている視点をざっくり書いてみます。

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デザインの視点

その事業は、

  • 何のために存在しているのか?

  • 会社のビジョン/ミッションに紐づいているのか

  • ユーザーにとってどんな価値があるのか

  • 社会に対してどのようにポジティブな変容をもたらすのか

経営の視点

その事業は、

  • 全社の中でどのような位置づけなのか?

  • 事業ポートフォリオの観点から何を期待されているのか?

    • 売上成長率を期待されているのか

    • 早期の利益回収を期待されているのか

    • ストックビジネスとして企業価値への貢献を期待されているのか

    • エクイティーファイナンスによる急激な成長を期待されているのか

事業マネジメントの視点(=P/Lオーナー)

上記の視点を達成するために、

  • どのような事業計画を作るべきなのか

    • 事業戦略をどのように考えるべきか

    • 人件費率、販管費率、原価率を業界標準に比べてどう考えるべきなのか

    • どのような組織体制にすべきなのか

  • どのような中期経営計画(成長ストーリー)を作るべきか

    • 3ヵ年の売上成長率、利益率をどう考えるべきなのか

    • 5年後の組織ストラクチャーはどうなっているべきなのか

ざっくりこんな感じで、割と考えることは色々ありますが、
結局は「デザインの視点」が本質、その他は手段だと思ってます。ユーザーにとっての価値が本質ですよね。

02 コアユーザーへの理解を深める

事業の目指す方向性や事業計画、3ヶ年計画、Financial Metrixを作った後は、価値を磨き込むためにコアユーザーへの理解を深める視点が大事だと思います。ここから先はプロダクトマネージャーとの連携ですね。うちにも優秀なPdMがいます。

大事にしたい問い
・コアユーザーの定義は何か?
・コアユーザーが感じている価値は何か?
・それは定性/定量でどう読み取れるか?
・顧客セグメントはどう分類できるか?
・どうすれば全てのユーザーをコアユーザー化できるか?(=Experience Ladder)

ユーザー行動の阻害要因に着目する

事業グロースであったり、途中から事業オーナーを引き継ぐ場合はAARRRモデルを用いてユーザーの行動を紐解き、サービス全体としてどこに課題があるかを可視化するのはおすすめです。

大事にしたい問い
・AARRRのどこを改善するのがユーザー体験としてインパクトが大きいのか?
・ユーザーの獲得に課題があるのか、アクティベーションに課題があるのか?
・どんな行動があるとリテンションしやすいのか?
・直近の施策はAARRRのどこにフォーカスをして設計されているのか?
・事業状況と取り組むべきテーマが合っているのか?

ここから、ユーザーペインの質と量からテーマを設計し、優先度を決めていきます。

大事にしたい問い
・その問いは解くべき問いなのか?
・最もユーザーペインが大きく、影響範囲が広い部分はどこだろうか?
・今は何に取り組まないべきだろうか?
・技術的難易度や開発工数はどうだろうか?
・事業インパクトにつられてユーザー体験をないがしろにしていないだろうか?

03 プロダクトビジョンとロードマップを一致させる

ここまで来ると、ある程度プロダクトの方向性ややりたい施策がまとまってくるはずです。それをそのまま実行にせず、01で考えた存在意義、つまりプロダクトビジョンと一致させることが大事です。
ここは鶏と卵なので、結果としてビジョンと施策が一致していればいいのかなと思ってます。

大事にしたい問い
・そのロードマップテーマはプロダクトビジョン/ミッションと一致しているだろうか?
・実現したい機能はプロダクトビジョンの中でどのような意味を持つだろうか?
・ビジョン/ミッション策定の裏にある社会的ストーリーをアップデートする必要があるだろうか?

04 プロダクトを中心に、セールスとマーケを作り込む

さて、ここまで来るとプロダクトの方向性やロードマップは明確なはずです。
しかし、Product-Led-Growthモデルだとしても、何らかのセールスやマーケ戦略(≒Go to Market戦略)は必要なはずです。

ここでユーザー価値・プロダクト価値を起点としたセールス・マーケ戦略を練っていきます。
おそらく多くの企業ではセールスチーム、マーケチーム、プロダクト開発チームはそれぞれテーマを作って別々に戦略を練って実行していると思いますが、デザインの価値を引き出す上では、プロダクトビジョンとロードマップから逆算してビジネス展開を作り込んでいきます。いわゆるビジョンセリング(=共感営業)ですね。

↑実際に使っているSwim Lane

大事にしたい問い
・その営業/マーケはプロダクトビジョンを伝えることができるやり方か?
・機能(=手段)ではなく価値(=文化)を伝えることができているか?
・そのターゲットは価値設計をした時のユーザーと一致しているか?
・機能リリース時に仮説検証プロセスが回る連携ができているか?
・何を持っていい体験とするか指標を掲げられているか?

ここは詰まるところ、プロダクト開発→営業マーケ→プロダクト開発というように、価値検証のプロセスがぐるっと一貫して回っているか?ということです。

05 チーム合宿で自分ごと化する

最後に、これらの観点を事業オーナーやPdMだけでなくチーム全員に自分ごと化してもらうためにも、自分の言葉で発信し、自分で考えてもらうことが大事です。事業マネジメント視点で言うと、各々がWHYを考えることができる自律的な組織を目指すべきです。

大事にしたい問い
・自分が取り組んでいる仕事のWHYを全メンバーが話せるだろうか?
・思考停止することなく自分の言葉で咀嚼し発信することができているだろうか?
・ロジックだけでなく感情的なシェアもチーム内でできているだろうか?
・ロードマップがOKRに落ちているだろうか?
・チームOKRと個人OKRに対して主体的に動ける状態だろうか?

まとめ

デザインの価値を引き出すためには、目に見えるデザインと無形資産としてのデザイン、双方を事業に活かす視点が必要です。そのためにはデザインをふわっと捉えず、BXデザイン・UXデザイン・UIデザイン・デザインエンジニアリング・コミュニケーションデザインなど、デザインの領域ごとに事業オーナーが正しく理解することが大事だと思います。

その上で、プロダクトビジョンユーザーにとっての価値を中心に事業を作り込んでいくこと。
チームメンバーが事業のWHYを自分の言葉で話せること。
そして目指す世界にワクワクできることが大事です。

ここら辺は先日のGoodpatch10周年総会でも話しましたね。

ビジネス担当かデザイン担当か、ではなく、手を動かす人かそうではないか、でもなく。
プロダクトの価値を中心にデザイン・セールス・マーケがアラインしていることがあるべき状態だと考えます。

そんな話を曽根原さんとの対談でも話しているので、こちらも是非ご覧ください。
日本でグローバルスタンダードなプロダクト開発を。曽根原顧問×Strap佐宗対談

日本にデザインの価値を引き出せる事業オーナーが増えるといいなと。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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