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パリのイケてるStartup・Incubator 13社に会ってきた〜HEC Paris MBAアントレプレナーシップクラブトレック2024〜

こんばんは!HEC Paris MBA S23の佐宗です。
パリはすっかり陽が伸びて、日没が21:00を過ぎるようになりました。前回は1ヶ月前にTerm2中間振り返りを書きましたが、無事にTerm2の期末テストも終わり、3月末〜4月頭にかけてEntrepreneurship ClubのClub Trekを主催してきたので今日はその話を書こうと思います。前回の記事も貼っておきます。


そもそもクラブトレックとは?

海外MBAでは多くの学校がクラブ活動の中でClub TrekないしはCareer Trekと題して企業訪問をする文化があります。HEC Parisだと入学前からカレンダーの中に"Trek Week"なるものが存在し、3日間クラブトレック専用のタイムスロットが確保されます。基本的には全クラブこの3日間の間にトレックを企画して海外に繰り出します。時期になると「Junのクラブって今年Trekやる〜?」みたいな会話が聞こえ始めます。

Entrepreneurship ClubのS23 Lead リーダーチーム

クラブトレックの主催は「各クラブ」になり、「HEC Talents(タレントセンター)」の公式支援を得ることができます。また各クラブの代にもよるのですが、多くのクラブは2泊3日で海外にいきます。2024年のS23 Leadのクラブトレックは以下の通りでした。

Entrepreneurship/SearchFund/Marketing Club:パリ
Luxury Club:ミラノ
Tech Club:アムステルダム
IB/PE/VC Club:ロンドン
Sustainability Club:ベルリン
Industry Club:シュトゥットガルト
Energy Club:オータン(フランス)
Consulting Club:中東(の予定だったがラマダンと被り中止)

基本的にはトレックウィークの期間に開催するのですが、今年はインテンシブクラスと被ったので学校とMBAカウンシルと交渉して日程をずらしたクラブもありました。うち(Entrepreneurship Club)もアントレ系のインテンシブクラスと被ったので3月末と4月頭にずらしました。

3クラブ合同クラブトレック

CanvaでMBA Councilへのピッチデックも作りました。

アントレクラブのPresidentになり、一番コミットしたプロジェクトがこのクラブトレックでした。今年はサーチファンドクラブとマーケティングクラブと連携して、3つのクラブ合同のJoint Trekという形を取りました。実はサーチファンドクラブのプレジデントであるRomaric(from Africa/France)はアントレクラブのリーダーシップチームでもあるので実質メンバーとしては変わりません。マーケティングクラブは訪問先の親和性が高かったことと、アントレバックグラウンドを持つ良き友人のLaura(from Taiwan)との連携もあり実現しました。

3つのクラブから成る企画コアチーム

今年のテーマは"Creation & Acquisition"にして、スタートアップを作る側・投資する側・買収する側の3つの側面をカバーできるようにし、フレンチスタートアップエコシステムを俯瞰できるようなトレックにしようとテーマ設定しました。

2日間で13社へ訪問

今回訪問したのは以下の通りです。2日間でめちゃめちゃ詰め込みました。

DAY1

DAY2

  • Swan:昨年シリーズBで€37M(60億円)調達したFinTechスタートアップ

  • OSS Ventures:製造業×B2B SaaS×アーリーステージに特化したVC

  • La Maison des Startups LVMH:LVMHのインキュベーションプログラム

  • METAV.RS:デジタルアセット・3Dアバターのプラットフォーム

  • Bambuser:ビデオコマーススタートアップ

他にも、今回の日程的に合わず別の機会で実施予定のBPIfranceEntrepreneurshipFirstAntlerもあったりします。

2日目に訪問したVestiaire CollectiveのCMOとHR Manager(自分の右)
各企業こんな感じでHEC MBA生向けにプレゼンを準備してくれています。

今回訪問したのはシードラウンドからシリーズB、IPO直前、インキュベーター、VC、学校組織と幅広く、参加いただいた方もFounderからCCO、CMO、マネージャーまで様々な方と話すことができました。特にインキュベーターは国立・私立・コーポレート・オープンイノベーションと4つのパターンを学ぶことができました。

トレックの感想

どこに行ってもサステナビリティー

まず、やはりフランスは「サステナビリティー」という言葉に触れる回数が半端なく多いです。ざっくりとヨーロッパってサステナビリティー盛んだよな〜って思ってたんですが、実際に暮らしてみて+今回のトレックを通じて国民の意識の高さと同様に、企業のサステナビリティーへの貢献意欲の高さが印象的でした。

Microsoft Environmental Startup Accelerator

例えばフレンチユニコーンのVestiaire Collectiveはミッションにサステナビリティーが入ってます。

Our mission is to transform the fashion industry for a more sustainable future by empowering our community to promote circular fashion.

Vestiaire Collective LinkedInより

今回訪問したMicrosoftも環境に特化したプログラムをStationFで展開していますし、今回プレゼンしてくれたスタートアップ2社もサステナ系です。フランスではClimate Techという言葉とDeepTechという言葉も頻繁に出てきますし、そもそもサステナ系に特化したカンファレンスであるHello TomorrowChangeNOWがあり、有名どころの企業がこぞって参画しています。世界で有名なTechstarsもパリではTechstars Sustainability Paris Acceleratorを展開しているほどです。

HECもDeepTechのIncubatorプログラムを展開してます。(Websiteより)
なんとレストランを経営するBigMamaGroupでもB Corpを取得済み!

こういったサステナビリティーが注目される背景としては、国民のサステナ意識がそもそも高く、政府の支援も強力であるという理由があります。実際パリに1年暮らしてみて思うんですが、パリはとても緑豊かで公園がたくさんあり、公園内では日本では考えられない数の人が日光浴を楽しんでいます。カフェもレストランも基本外のテラス席が人気ですし、法律によってバケーションを取る権利があるので1年に3週間はどこかの都市で過ごしますがほとんどみんな屋外で過ごします。こういったフランスの習慣が、環境への意識を高め、企業のサステナ貢献を高めているんだなあと感じています。

インキュベーターの存在

StationFというヨーロッパ最大のスタートアップキャンパス含め、LVMH、L'Oreal Beauty Tech Accelerator、Entrepreneur First、Antler、TechstarsParis、Hook、そしてHEC Innovation&Entrepreneurship Instituteのような学校の組織も含め、とても多くのインキュベーターの存在が目立ちます。MetaもAIの分野でStationFにアクセラレーターの設立をしたばかりですし、NHNやBinanceもパリでインキュベータープログラムを展開しています。StationFのプログラムリストも要注目です。

特にLa Maison des Startup LVMHはかの有名なLVMHが運営するプログラムで、採択されたスタートアップは50を超えるLVMHのメゾン(各ブランド)の事業部サイドの面々とニーズのマッチングが行われて実際に導入に至ります。またLVMHのオープンイノベーションで言うとフランスで一番大きいイノベーションカンファレンスVIVA Techでも毎年ピッチコンペティションがあります。なんと今年は日本のスタートアップHERALBONYさんが日本から初めて採択!(自分がグッドデザイン賞受賞した時に隣に展示されてた企業だった奇跡)

LVMH Open Innovation・Accelerationに関するパンフレットもらいました。

フランス政府によるLa French Techプログラムによるイニシアティブと、StationFやParis Saclayによる独自のスタートアップエコシステム、そしてフランスならではのLuxury企業群によるエコシステムが混ざり合い、フランス国内で起業・ビザ取得・インキュベーション/アクセラレーション・投資・連続起業家・業界の行き来のエコシステムが回っているんだなあという印象を今回のトレックを通じて改めて感じました。

ちなみにLVMH次期社長候補のデルフィーヌさんのVOGUEインタビューも素敵だったのでおすすめ!

ヨーロッパと地続きだからこその戦略

あとはありきたりですが日本は島国ですが、ヨーロッパは地続きです。フランスで起業をするということはヨーロッパ全土をターゲットにできるということです。それは必然的に市場規模が大きくなりますし、必然的にダイバーシティーが高くなります。よって確率論的にもイノベーションが生まれやすい土壌ができるというわけですね。

ヨーロッパでは当たり前なのかもしれませんが、今回訪問したSwanでもVestiaire Collectiveでも国を跨いでExpansionをしていく専門の戦略チームがあり、HECの卒業生が多く活躍していました。

Vestiaire Collectiveのオフィスおしゃれすぎ・・

HEC Innovation & Entrepreneurship Instituteの戦略

今回初めて同組織の戦略を深く聞く機会があったんですが、スタートアップのシリーズの成長毎に学校がプログラムを設けていて面白いなーと思いました。プレシードレベルではCDL Certificate、Startup Sprint、Stand Up。シードレベルではHEC Startup Launchpad、X HEC Entrepreneurs、HEC Challenge。シリーズAではIncubator HEC、CDL(Climate/AI/Space)、International Launchpad。シリーズB以降ではAcceleratorESS、Meta AI Startup ProgramやL'Oreal Beauty Tech Acceleratorとの連携など、学校が包括的にスタートアップ業界を支えている構図は自分にとっては新しかったです。

HEC Innovation and Entrepreneurship Institute PDFより
いつもお世話になっているIncubatorHECのOrhiane(自分の左)

印象に残った言葉

最後にトレックを通じて印象に残った言葉を紹介したいと思います。

Be prepared, enjoy the risk

Swan創業者Nicolasさん

これはSwanの創業者であり連続起業家のNicolasさんの言葉ですが、「もし最初の会社を起業する自分に今の自分がアドバイスするなら何て言いますか?」って質問してみたんですけど、Be preparedしろと。起業したら生半可な気持ちでは続かないし、起業に対して精神的な準備をすることは大事ということですね。大事な人生の数年ないしは数十年をかけることになる経営者から来る重みのある言葉でした。あと追い込まれたり予想外の展開が続くときのヒリヒリ感を楽しめる人が起業に向いていると。実際自分もそれが癖になってまた起業してしまったととても楽しそうに話してました。

CEO and FounderのNicolasさん(自分の左)

Pull the knowledge, watch the next generation trend

OSS Ventures Partner Pierreさん

これはOSS VenturesのPartnerが話していた言葉です。2つは別々の文脈で話してたんですがくっつけちゃいました。OSS Venturesではナレッジを共有する文化をとても大切にしており、どのようにやっているのか質問したところ、やはりデータベース的なものが中心にあってコマンドで引っ張れるそうです。今後どの企業もデータベースからAIを活用して経験値やナレッジを引っ張ってくる働き方、ないしは競争優位性を築くことが増えそうですよね。あとはすでに次のジェネレーションの考え方やDisciplineって自分達や親の世代とは異なるものなので、改めてこれからの時代を作る人たちの価値観やインダストリートレンドを抑えて起業・投資していく重要さを認識しました。

OSS Ventures Pierreさん(自分の左)

終わりに

ということで今回、トレックを主催かつ責任者として企画してみてとても多くの学びがありました。まずわかったのはCommitmentとPassionはグローバルでも通じるなと。結局トップがコミットする姿勢を見せないと良いチームは作れませんよね。あと日本人の普通レベルのオーガナイジングスキルは世界では高い評価をもらえるなと。結構当たり前レベルの準備・計画・コミュニケーションをしてきましたが、企業・HEC Talent・HEC Markeingから高い評価をもらえました。ちなみに今回トレック企画が面白そうだからと2日で8人のHEC社員が同行してきました。w

終わった後はBigMamaGroupのおしゃレストラン@StationFで打ち上げ

他にも、ヨーロッパではトレックって言えば企業に普通に通じるんだなあとか、企業側はこうやって採用したい学生と接点持って囲い込むんだなあとか、HECの卒業生本当に色んなところで活躍してるなあとか、Mistral AIにもHECの卒業生っているんだなあとか、やっぱり国籍によってコミュニケーションスタイル違うよなあとか、グローバル環境下でのマネジメントって日本の数倍大変だなあ・・苦笑 などなど。

企画を一緒に頑張ったアントレDirector/サーチファンドPresidentのRomaric

特にコミュニケーションスタイルは超個人的な感想ですが、日本・中国派と、アメリカ・ヨーロッパ派、インド派、南米派の4つに分かれるな〜というのを授業外でも感じた一面でした。当初のグローバル環境下でのリーダーシップ経験を積むという目的に対しては、アントレクラブのプレジデントを担うという経験は最適解だったなと振り返って思います。まあまだ終わってないし今週HECシャトーでの大きめのイベント控えているんですけど。笑

と言うことで、今回はアントレプレナーシップクラブトレック編でした。Podcastでも話してるのでよかったら聞いてください。ではでは👋


最後まで読んでいただきありがとうございます!