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HEC Luxury CertificateとLuxury Visit〜Term3振り返り(前編)〜

皆さんこんにちは!早くもパリに夏が訪れました。
今は21:00過ぎくらいに夕方になり、完全に日没するのは夜の22:30です。

前回1ヶ月前にClub Trekの話を書きましたが、今回は5月末に終了したTerm3の話を書きたいと思います。めちゃくちゃ長くなったので、前編と後編の2つに分けます。

Term3は4月〜6月になっており、授業の期間自体は選択したプログラムによって多少の差があります。自分の場合は4月中旬〜5月末の1ヶ月半でした。Term2の終わりからTerm3はその中でもイベントが目白押しでこのnoteも長くなる気しかしません。笑 それでは早速行きましょう。


01 Certificate: Influential Luxury by Kering

さて、早速メインディッシュです。Term3は交換留学に行くか、選択科目を取るか、CDLを取るか、Certificationを取るか選ぶことができます。自分はその中でも入学前からずっと取りたかった授業、Keringがスポンサーのインフルエンシャル・ラグジュアリーを取ることができました。事前にエッセイ課題があり、選考の上で授業が履修できるかどうか決まります。

Keringは時価総額約7兆円の巨大ラグジュアリー企業で、GUCCI、Saint Laurent、Boucheron、Alexander McQueen、Bottega Veneta、Balenciaga、Ginoriなどを傘下に持つコングロマリットです。

ファウンダーのフランソワ・ピノーさんはHEC Parisの卒業生であり、なんと今年のMBA卒業式のゲストスピーカーで講演をしてくれました。その中で「学位はPiece of paperだ」「人生はアップダウンの繰り返し、そこから何を学ぶかが大事だ」などと人間味溢れるスピーチが心に残っています。

卒業式での祝辞

そんなKeringですが、創業者が卒業生なので学校との連携がとても強く、毎年Kering側からクライアントがついて、その経営課題を解決する形のいわゆるProject Based Learningの授業です。クライアントは一昨年がブシュロン、去年がグッチ、今年がサンローランという豪華な陣営。サンローランのCEOがKeringのDeputy CEOに就任したのが昨年なのでとてもホットなタイミングです。今年は新規事業×サステナビリティーがテーマでした。

授業内容は大きく4つに分かれます。

ファイナルプレゼン

これが最終的なゴールになるんですが、チームは自動で割り振られます。自分はイラン出身・中国出身・フランス出身×2・自分の5人チームでした。このCertificateはMBAだけでなくグランゼコールやMasterの学生と一緒に受講できる貴重な授業です。全体が50人いて、そのうちMBAはたったの10人。つまり40人が20代前半ということですね。かつ男性がざっくり10人くらいしかいないので、大体のチームは男性1・女性4、MBA1・その他4人のチームになります。

チームメンバー

最初は20代前半4人と一緒にグループワーク大丈夫だろうか・・と心配していたのですが、完全に杞憂。みんなめちゃくちゃ優秀でした。年齢とか専攻聞かなかったらMBAだと言われてもわからないくらい、本当にみんなビジネスマンとして優秀で、自分で仕事を定義して自分で取っていってしまうアグレッシブさを感じました。これがグランゼコール・Masterの実力の高さ・・!という感じでフランスの教育の高さを知りました。グループワークとってもやりやすかったです。みんなありがとう。

サンローラン経営幹部による講演

ここは中身は全く書けないんですが、毎週のようにKering本社に訪問してSaint Laurent経営幹部によるプレゼンがありました。COO・CFO・CSO・Head of Digital・Complianceなどなど本社の経営陣から毎週4時間ほどプレゼンとQ&Aを通じて直接話を聞ける機会がありました。なんて豪華なんでしょう・・

ネットワーキングタイムもちょくちょくあり、中ではサプライズでKeringのCo-CEOも来てくれていました。奇跡的に近くにいたので日本市場について色々と話せたのが印象に残っています。またHECの卒業生で現在Saint Laurentで働いている人たちも来てくれて、働く社員の実態を聞けたのもとても面白かったです。実際に昨年の優勝チームから入社している人も出ています。

KeringHQ。毎年ヨーロッパ文化遺産の日に一般公開されます。

ブティックビジット・文化体験

ここはサクッと行きますが、店舗ごとの戦略を知る・メゾンの文化やプロダクトを知ると言う文脈で店舗にビジットさせてもらいました。4つの店舗に分かれるんですが、自分が言ったのは幸運にも最もセレブが集まるモンテーニュ通り。ラグジュアリーの中のラグジュアリー店舗です。他のグループはシャンゼリゼの旗艦店などにも訪問していました。

他にも、サンローラン美術館とセーブル焼きの博物館に行きました。サンローラン美術館ではLuxuryの基礎となるMaisonの歴史・DNAについて学びます。実際のイヴサンローランの執務室もあり面白かったです。

サンローランの実際のスタジオ@サンローラン美術館
モンテーニュ通りのブティック

セーブル焼きの博物館はクラフトマンシップについて学ぶ機会ということで、実際にどのようにしてセーブル焼きが作られるのかをツアーしてもらいました。セーブル焼きを親にしてリモージュ焼きが世界に広まっていくわけですね。フランスの蚤の市で買いたい陶器ブランドといえばリモージュ、という人も多いと思います。

Luxuryの授業

最後ですが、個人的には授業も過去最高に面白かったです。上記のKering側からの学ぶ機会と、キャンパスで色々な教授による授業が入り組んでプログラムが組まれています。

色々な授業があったのですが、特に印象に残っているのは、"The Essence of Luxury"と"Building a global luxury brand"の2つです。前者はLuxuryの世界的権威のKapfererさんが教授なのですが、まさかのこの教授の本、2019年に奇跡的に日本で買ってました。何も知らずに積読していてこの授業の時になんか聞いたことあるな・・と思ってKindle検索したらまさかの教科書持ってました。笑

「Luxuryは多くの人が憧れるが、ごく一部の人にしかアクセスできないものである。」「Luxuryと一言で言ってもその中では実際4種類に分かれていてAbsolute Luxury・Aspirational Luxury・Accessible Luxury・Mass premiumがある」など、Luxury業界以外でも汎用的に使える考え方を学びました。なお教授は日本によく出張に行くため日本がとても好きで、実際自分もいきなり教壇の前に呼ばれ、日本人(日本語)から見た『贅沢』『豪華』『高級』『高品質』のニュアンスの違いを説明してくれという無茶振りを受けてきました。実際、日本・中国・ヨーロッパそれぞれが言う"Luxury"の要素にも若干の違いがあるのがとても面白かったです。

これはMass Premiumなレストラン@Le Train Bleu

上でもう1つ挙げた授業の"Building a global luxury brand"は、その名の通りグローバルラグジュアリーブランドの元経営陣であるPatrickさんが教授でした。なんとHermèsのStrategy・Communication・Digitalの最高責任者を長年務めていた方です。本社のそんな人が授業教えてくれるって贅沢ですよね。

こちらの授業はケースを事前に読んでプレゼンしたり、テーマが与えられてそれについてグループワークしてプレゼンなどがありました。自分のチームは「Cartierのアート戦略」を選んでプレゼンしてきました。その後別チームがLVMHのアート戦略をプレゼンして、教授がその違いを説明するという構成でした。もちろんその教授による座学の授業もたくさんありました。

HECはやっぱりラグジュアリーに強い

と言う感じで、1つの授業だけで3,500字いってしまったんですが笑、やっぱりHECはラグジュアリーに強いなーと思うネットワークの高さでした。ちなみにHECのCertificate自体は全部で11個今年はあって、その中にはLVMHが授業のスポンサーになっているものもあります。日本人同級生がそっちを取っていたので、また話を聞くのが楽しみです。

以前のnoteでLoro Pianaの現CEOもHEC出身で講演に来てくれたということを書きましたが、Luxury業界の本社の幹部層にはHEC卒業生が本当にたくさんいます。名前をあげたらキリがありません。日本だとBluebell(Patouとか日本に持ってきた会社)のCEOがHEC出身だったりします。先週は自分は別イベントで行けなかったんですが、HEC AlumniによるLuxury Networkingイベントなるものがエッフェル塔ビューのホテルで開催されてました。現在Luxury業界で働いている卒業生が集まるパーティーですね。現役学生も20ユーロで参加できる破格の機会。来週はAlumniのサマーパーティーがあるので参加してくる予定です。(現役学生は無料!)

ピノーコレクション(Bourse de commerce)の企画展で床が全面ガラス張りに。

02 Luxury Visit by HEC Luxury Club

さて次にLuxury Club主催のビジットに参加してきた体験談です。
以前、自分がPresidentを務めるEntrepreneurship Clubでトレックをしたという記事を書いたんですが、同様にLuxury Clubも定期的にトレックを主催しています。パリで行われたトレックのみ参加をしてきました。(ミラノトレックも行きたかった・・!)

今回ビジットしたのは、MONCLER(モンクレール)、ISSEI MIYAKE、Le Mourice(ル・ムーリス)の3つです。

MONCLER

モンクレールはフランスのグルノーブル地方生まれのブランドですが今はイタリアの会社によって経営されています。多くのラグジュアリーブランドはイタリア生まれ・フランス経営が多いのでその逆ですね。元々山岳用で有名でしたが、ラグジュアリーダウンジャケットを生み出し、今でもモンクレールと言えばダウンジャケットで有名だと思います。

今回はシャンゼリゼの旗艦店に訪問しました。3階建てで世界で一番面積が広く、VIPルームからMONCLEAR BY MEと呼ばれるパーソナライズできるサービス部屋までとても充実していました。香水も好きなテキストをデジタルに香水のボトルに表示できる変わったプロダクトがありました。

ISSEI MIYAKE

次にISSEI MIYAKEです。最近新しく店舗が8区にできたのでその店舗を案内してもらいました。実際同ブランドに長く勤めるマネージャーに店舗を案内してもらったのですが、聞けば聞くほどISSEI MIYAKEは世界の人に愛されていたクリエイターなんだなあと言うのがひしひしと伝わってきて、日本人という枠を超えて世界中の人に愛されるブランドを自分の名前で作るってすごいなあ(小並感)と感じました。この前モネの家で有名なGivernyに行った時もISSEI MIYAKEを着てるおばあちゃんから日本人だからと声をかけてもらって、世代を超えて愛されるのもすごいなあと。ISSEI MIYAKEは特殊な素材でも有名だと思いますが、来月はPremière Vision Parisと呼ばれる世界最大の素材展示会に行く予定です。

Le Meurice

最後にLe Meuriceです。なんだかんだこのビジットが一番すごかったのですが、おそらく名前でピンと来る人は少ないと思います。このホテルはフランスで初めてパレスホテル(5つ星の上)として認可されたホテルで、あのピカソが結婚式を挙げたホテルです。つまり有名なホテルが溢れるフランスの中で最も歴史があるパレスホテルということですね。1835年開業とのこと。

フランスでパレスホテルといえば2つ目に認可されたのがRitz Paris、そして日本人に有名なプラザアテネは4番目だそうです。なおPlaza Athénéeはドーチェスターコレクションを通じてLe Meuriceの姉妹ホテルにあたります。最近だとLVMHが手掛けるシュバルブランやブルガリホテルがパレスホテルに認定されています。またLe Mouriceはホテルだけでなくレストランも有名で、世界最年少でミシュラン三つ星を取得したアランデュカスが手掛けるLe Meurice Alain Ducasseが有名です。むしろそのレストランだけで有名な観光地になっています。個人的に社会起業家兼世界的シェフのAlain Ducasseのドキュメンタリーがとても好きなのでおすすめです!

プレゼンではLe Mouriceの戦略・売上構成・オリンピック対応などをホテルに30年以上勤めるDeputy GMから学びました。

Le Mouriceにて

Orient Express

これはビジットではなく、Industry Club主催でフランス国鉄SNCF、Luxury Hotel GroupのAccor、そしてAccorに買収されたOrient Expressの3社がキャンパスに講演に来てくれました。

↑オリエントエクスプレスのウェブサイトはとても美しいのでぜひ見てください。イタリアのLa Dolce Vitaなど傘下ブランドの作り方がめちゃくちゃ参考になります。なお今回の講演はRevenue Managementがテーマで、各社がどのように売上を予測し、最適化し、オリンピックに備えているかなどの話がありました。インダストリークラブの方々ありがとうございました(日本人もいます)。

おわりに:Luxuryの考え方は全てのビジネスにつながる

前編は一旦ここで締めたいと思います。自分は元々デザイン×スタートアップ業界で長く働いてきたので、デザインを突き詰めるとBrandingに辿り着き、Luxury Brandingに興味を持ったのがきっかけです。

上記で書いてきた通り、ラグジュアリーに関する学びはたくさんあるのですが、必ずしも業界内に閉じず、普遍的に適用できる考え方が多いなと気付かされました。日本のデザイン経営はイノベーションとブランディングの2本柱で構成されていましたが、まさに世界のLuxury Brandがやっていることはこの2つなんじゃないかと思い始めました。

Paris Societyが手掛けるマキシム・ド・パリ、おすすめです。

またLuxuryを生み出す根幹はCreative Directorと言う人であり、メゾンの創業者のDNAがプロダクトを生み出します。その人材をどのようにグループ内でマネジメントするか、が企業の肝になってくると言う意味でも、人材の抜擢と定着はとても大事で、現代の経営に似てるなあと感じました。

なお、人材の抜擢に関する話はLVMH創業者のベルナール・アルノーさんの本がとても面白かったです(🙏)。ってか今1万円もするんですか・・

はい、ということでTerm3の前編はLuxury祭りでした。後編は打って変わって、VIVA Tech・Alumni Mixer・MBAT・Outdoor Leadership Seminar・StationFイベントと振れ幅の大きい留学記が続きます!

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Jun Saso
最後まで読んでいただきありがとうございます!