精神覚醒ノ肥後虎 ACT.6「マスコミが残した爪痕」

 箱石峠で大竹を退散させると、うちらはサラマンダー丸の食堂で沙羅さんと副代表2人と会話をしながら晩御飯を食べていた。

 ちなみにうちらが食べているのは赤牛と高菜の料理であり、熊本の郷土料理だ。

「あなたが震災後に覚醒技をどうやって手に入れたのか調べました……実は震災数時間前にロジャース彗星の隕石が阿蘇山へ落下したようです」

「隕石がうちに覚醒技という現象を与えたんでしょうか?」

「落下した後、Aso全体に発生したタキオン粒子が強い精神力を持った人を覚醒技超人にしました」

もしかして……。

「うちの同級生の中にも覚醒技超人になっとる人もいるんですよね……? 今は震災の影響で高校が休校しておるんですけど」

「いるかもしれません」

 うちの友達、飯田ちゃんとひさちゃんも隕石によって覚醒技を持ったんかもしれない。

 話は止めて、次はマスコミのことを批判的に語り合う。

「あとマスコミはどうして取材の仕方が人道的ではなかなんでしょうね。テレビで放送しとるから、自分がやっていること正しかだと考えとるからこんなことをしているかもしれませんね」

 これに副代表2人組が答えた。

「かもしれないな。仕事ためには手段を選ばず、人の痛みですら感じないのだ」

「マスコミは他人の事を尊重をして報道するべきであり、どんなに弱い者でもそっとしておく必要があります私たちはそれを守りながら生きております」

「親からこげんこつば言われことがあります、「他人のことを考え、良いところを見つけるべき」と。うちもそう考えております。マスコミは弱か者いじめばしとるこつに気付いてほしかで、弱か者いじめなんてやめるべきです。うちだって、いじめられた友達ば助けたことがありますけんね」

この言葉はマスコミに聞かせたい。

 体育館にて。
 被災した人たちに向けて沙羅さんがコンサートを行うらしく、夜7時から準備が進められた。
 うちも楽器を運んだりと手伝いをした。

 9時になると始まる。
 沙羅さんの心地よい歌声が館内に響き渡る。

 被災して傷付いた人たちの心が癒されていく。
 聞くと、震災のような辛い出来事があっても気持ち良く生きることができるだろう。

 コンサートの後、同席した人たちに話しかけていった。

「実はうち、あなたたちの邪魔する悪い奴ば倒した正義の味方です」

「あ、そう」

 マスコミを追い出した英雄を知らないとはどういことだ!?

 けど、追い出して一安心ばい。 
 嫌なやつがここに来たら、うちがやっつけるつもりだ。

精神覚醒ノ肥後虎 第1章、完


 5月10日、震災の影響で休校していた学校たちは授業を再開していく。
 うちの通っている麻生北高校もその1つだ。

 赤帯のセーラー服と黒タイツを久々に着用し、エクリプスと共に学校へ向かう。
 ちなみにクルマで通学するのは初めてだ。

 駐車場へ着くとエクリプスを停車させ、ガルウイングから荷物と共に降りていく。

「うち、学校に久しぶりに参上!」

久々だから、カッコつけたばい。

 エクリプスの隣にワインカラーをした流麗なクーペ、スバル·アルシオーネSVXが停車していたばい。
 WRCを彷彿させる本棚ウイングをはじめとするエアロパーツで武装し、ボンネットはカーボン素材に交換され、サイドには白いフレイムバイナルが貼られている。

 SVXという車はスバルが発売したグランツーリスモであり、アルシオーネとしては2代目に当たるクルマだ。
 流麗なデザインは世界的に有名な「イタルデザイン・ジウジアーロ」がデザインし、エンジンはEG33型水平対向6気筒エンジンを搭載している。
 名前の由来は「スバル・バリュー・X」の略だ。

 運転席から誰かが降りる。 
 降りた人はピンクのツインテールに同色の瞳を持つ釣り目で、体型は中学生と思わせるほど小柄だ。
 この学校の制服を着ていて、うち同様に黒いタイツも履いている。

「久しぶりね、虎美」

「久しぶりたい、飯田ちゃん!」

彼女の名前は飯田覚(いいだ・さとり)、うちの友達だ。
「飯田ちゃん」と呼んでいる。

「あとSVXば買ったんたい。珍しかクルマば見つけたな」

 ちなみにSVXというクルマはあまり売れなかったらしく、見ることはほとんどない車だ。
 うちはレースゲームで知ったクルマだ。

「こちらこそ、ガルウイングの初代エクリプスとは良く見つけたわね。どこで見つけたの?」

「買ったのではなく、貰ったばい」

「どこで貰ったの?」

 うちは道路に立っていた。

「それは……」

「虎美、後ろからクルマが来るわ!」

 道に立っていたため跳ねられそうになったけど、飯田ちゃんの声で助かった。
 タイツ越しにパンツが見えるほど腰を下してしまったけど、轢きそうになったことでドライバーもうちよりビビっていた。

 制服とニーソックスを着用した小柄な茶髪ポニーテールの女の子、うちの友達“ひさちゃん”こと森本ひさ子(もりもと・-こ)だった。

「うわ……虎ちゃんごめん! わしゃ、また迷惑をかけた――」

「よかよか……」

「遅かったわね、ひさ子。何があったの?」

「わしのファミリアが道の溝に脱輪しとって……レッカーで助けて貰っとったら遅れたたい……他にも、クルマのフロントガラスに風で飛んできた看板が直撃して前が見えんようになっとたり……」

「ひさちゃん、ファミリア買ったんかい。しかもホットモデルのGT-Rたい!」

 ひさちゃんの愛車、ファミリアGT-Rは7代目BG型をベースとした4WDのホットハッチだ。
 すでに存在していたホットモデル・GT-Xをさらに進化させて210馬力を達成している。
 参戦資金不足からマツダはWRCを撤退してしまったけど、プライベートレーサーによる参戦した車両が各地で表彰台を飾った。

 色は深緑、外観は欧州車のラリーカーを思わせとるワイドボディで武装し、ホイールは走り屋の定番であるワタナベ8スポークを履いとる。

「虎美、ひさ子の車を羨ましく感じる暇はないでしょ!ひさ子、相変わらず運が悪いわね……脱輪するし、虎美を轢きそうになったし……」

「ひさちゃん……さすが運の悪さはギネス級ばい」

「虎美、それも言わないのよ!」

 やれやれ、ひさちゃんの運の悪さは変わっていない。

「あ、クルマやひさ子のことで話したら授業に遅れるわ。虎美、ひさ子、授業へ急ぎましょ」

 学校に到着してすぐ話をしとったら、時間が無くなったばい。
 うちらは急いでダッシュしたけど……。

「待って~! 虎ちゃん、飯田さん!」

 体力が極端に低いひさちゃんはうちらに置いていかれる。
 
 久しぶりに学校が始まった今日、友達も速そうなクルマを購入しとった。
 後にうちは彼女たちの秘密を知ると、共に最速を目指すこととなる。


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