光速の走り屋オオサキショウコ2部 ACT.12「裏赤城での戦い」

あらすじ


 新技を習得したオオサキは毛利のND5RCに勝利する。
 トップとなった彼女だが、後ろから最後の刺客が現れる。
 谷輝とS15だ。
 2台は裏赤城に入っていく。

 どんどん暗くなる天(そら)。
 エンジンブローしたC4を荷台に載せたトラックはTakasaki市内を走る。
 ワシはこのクルマの中でラジオを聞いていた。

「現在、1位は大崎翔子選手の180SX! 裏赤城に入りました! その次が谷輝選手のS15型シルビア!」

「オオサキさんがトップなんや」

 ワシは師匠がトップだと聞いて衝撃と喜びを感じた。
 このまま守って欲しいという願いといつ抜かれるかという不安が交差する。
 果たして結果はどうなる?

 現在、大胡赤城線、通称裏赤城にいる。
 大野工業の事務所前を通過し、後ろのS15と共に右ヘアピンをドリフトで通過する。

 緩い右コーナーからの左ヘアピンもさっきと同じ走り方で攻める。

 差は少しずつ広がっていく。

「中々の腕じゃのう。じゃが、ワシから逃げられん。ペースを上げるぞ」

 S字セクションがくる。
 S15は500馬力を越えるパワーを使ってワンエイティに接近する。
 狭い区間とはいえ、上り坂だからすぐ離した距離を縮めてくる。

 すごいパワーだ。
 350馬力のRB26を積んだクルマが非力に見えてしまう。
 どんなチューンされているのだろうか……?

「そのS15には排気量を2.2リッターにしているだけでなく、VEヘッドが搭載されております。NEO-VVLという可変バルブタイミングとリフト機構を持っているパーツで、同メーカーのエクストレイルGTから流用されたと思われます。カムシャフトにハイ&ローのカム駒を設け、そこに接するロッカーアームを設定回転数で切り替えることで、開閉タイミングとリフト量を変化させており、低回転と高回転のトルクを両立させております」

 
 実況がS15の秘密を解説していただいた。
 そんなチューンがされていたのか。
 ただし装着しているクルマの販売台数が少ないため、VEヘッドというパーツはレアらしい。

 後ろのクルマにどんどん接近されてしまい、右直角ヘアピンに入ると追い抜きの体制に入ってくる。

「そこじゃあ!」

 外側から迫ってくる。

「何ィ、外側から!?」

 おれのワンエイティのフロントを抑えつけながら、S15はどんどん前に出ていく。
 ここでトップが変わった。

「おっと、ワンエイティの先頭を走るのを許さず、強引を抑えつながら、S15の谷選手トップに踊り出た!」

 それを聞いた、スタート地点にいるおれの仲間たちにも戦慄が走る。

「オオサキが抜かれた!? しかも覚醒技を使わず……」

 その追い抜きに智姉さんが驚いている。

「何という奴だ……このままじゃあ優勝を取られる」

 
 六荒も続く。

「オオサキさん……」

「必ず抜き返してください!」

 桃代さんと薫さんはそう願った。

 S15を先頭とした2台は緩い左の高速区間を通っていく。
 その区間はパワーのあるクルマがワンエイティを引き離す。

「優勝するんは、ワシじゃあ!」

 
 忠治館を抜け、3連続S字セクションに入る。

「追い抜かれた……けど、逆転する可能性はある。おれの腕を信じる!」

 
 2連ヘアピンの1つ目である右中速ヘアピン。
 身体への負担を減らすために強力な技ではなく初歩技で攻めることにする。

「<コンパクト・メテオ>! イケイケイケイケイケイケェー!」

 やや速度の乗った高速ドリフトでS15に接近していく!

「なぬッ!?」

 コーナーの立ち上がりでS15のリアフェンダーと並ぶ。
 2つ目の左ヘアピンでは相手が内側、おれが外側に突入する。
 当然内側にいるS15の方が有利で、ワンエイティの前に出るも、その後の右高速セクションに突入しても距離はテールトゥノーズのままだった。

「しつこいのう」

 左ヘアピン。
 どちらもグリップ走行で駆け抜けていく。
 一定の距離を保ったまま、幅の広くなった右コーナーに突入する。

「ここだ!」

 相手の隙を見て、前に出ていく!

「オオサキ選手! 再びトップに返り咲いた!」

「よっしゃー!」

 
 その実況を聞いた、スタート地点の六荒が興奮する。

「絶対に諦めん。トップに戻ったる!」

 右中速コーナー、緩いS字、右ヘアピンをどんどん抜けていく。
 ワンエイティを先頭とした2台はテールトゥノーズだ。
 S15がギリギリ追いかけていく。

 

 2連続左ヘアピンを抜け、直線を通り、左ヘアピンに入っていく。
 内側からS15がワンエイティのフロントフェンダーに接触しながら抜きにかかる!

「またS15が再びトップに踊りでた! 抜いたり、抜き返したりという攻防戦が繰り広げられたりしている!」

 S15を先頭となった2台はパワーでワンエイティをやや引き離し、登り坂を駆け抜ける!
 右中速ヘアピン。
 どちらもドリフトで通過する。
 

 軽いS字区間から左中速コーナー。
 こちらはグリップ走行でクリアする。

 しばらくは高速区間が続き、S15との距離が離れる。
 クルマ1.5台分の差だ。

 ただし途中で3連続コーナーに入り、ドリフトで距離を縮めるも、再び高速区間に入ったことでまた距離が開く。

 左ヘアピン。
 ここはドリフトで通過する。

 2連ヘアピンにも突入する。
 坂のキツい1つ目の左はグリップ走行、2つ目の右はドリフトで攻略した。

 
 それらで距離を縮めるも、この後は直線なので差は再び広がる。

 いよいよあそこが近づく。

「恐怖の25連続ヘアピンが来る! あそこで逆転しないと……!」

「練習走行でここを走ったんじゃが、あそこは慎重にならんといかん区間じゃった。コーナーは相手の方が上じゃ、果たしてトップを守れるか……」

 左ヘアピンを軽いドリフト、直後の右中速コーナーをグリップ走行で抜けると、恐怖の25連ヘアピンが顔を見せる。

 後ろを走るおれは、右側のあれを見ていた。

「右側には溝がある。下手すればタイヤやサスペンションにダメージを与えてしまうが、ここを乗れば追い抜くことができる!」

 これは一か八かの作戦だ。
 果たしておれのクルマの運命は!?

 25連続ヘアピンの1つ目、右中速ヘアピン。
 内側から勢い良く突っ込む!

「今だ!」

 溝をまたぎながら、S15と横に並ぶ!

「なんじゃと!」

 冷静な表情が崩壊するほど、谷は驚いている!
 横一列に並んだ2台はコーナーを抜けてもそのままの体制を貫く。

 2つ目の左ヘアピンに入ると、コースのスペースの狭さからS15は失速し、ワンエイティが前に出る。

 だが、谷はすぐ閃いた。

「溝じゃ。これを使えばええんじゃな」

 3つ目の右ヘアピン。
 S15も溝をまたぎながらワンエイティに接近する。

 前のクルマの半分に入ったまま、4つ目の左ヘアピンに入る。
 内側を切り刻むようにコーナリングしていき、S15を引き離す。

 
 その後も両者共に溝をまたぐコーナリングを行い、抜きつ抜かれつの攻防戦を繰り広げる。
 
 
 25個目の左ヘアピン。
 サイド・バイ・サイドで突入する。

「イケイケイケイケイケイケイケイケェー!」

「先頭はわしじゃ」

 脱出する2台。
 パワー差で、登り坂に強いS15が半身前に出た。

 半分前に出た2台の列は展望台までの直線を駆け抜けていく。
 ただし道路は狭いため、相手のクルマは全力の加速ができない。

 が、S字に入ると、相手はイン側にいたため、後輪部分もワンエイティの前に出て、接戦の末にトップに戻った。

「今まで僅差だったのに、抜かれた!?」

「さらばじゃ」

 この接戦で負けるとはショックだ。
 せっかくに前に出られるかもしれないというのに……。
 このままじゃあ負けてしまう!
 

 天(そら)の雲はどんどん覆われていく。

 スタート地点。
 私は天(そら)を眺める。
 斜め上に手を伸ばした

「滴が降ってきた……天気が変わるかもしれない。」
 

 そう予感した……。
 さら続く。

「また発動するかもしれない……アレが」

 毛利戦で発動していた物だ。

 2台は右ヘアピンに差し掛かる。
 どちらもドリフトで通過し、差が縮まる。

 一時S字を交えた区間で半分S15のリアフェンダーの隣に入り、その後の左ヘアピンで半身前に出る!

 そこに出ると萌葱色と白のオーラがワンエイティを再び包み込む。

「また来たんか……」

 しかし谷の口は笑みを浮かんでいた。

「もうすぐわしのターンが来るぞ」

 天(そら)の雲は一帯を包み込んでいた。
 覚醒技の能力で、高速区間にてS15をクルマ1.5台分の差に開くと、さらにS字と右ヘアピンで距離を作っていく。

 ヘアピンとコーナーが連続する区間を通ると、差は3.5台になっていく。

 その差は牛石まで保っていた。

「このままだと優勝できるかもしれない。イケイケイケイケイケイケイケイケイケェー!」

 だが、小沼駐車場に入ると、そんな情勢にメスに入る。

「おっと、雨が降ってきました!」

 雨が降り始めが怖いものだ。
 葛西モミジ戦で経験している。

「2位の谷輝選手は雨が得意なドライバーです。一進一退の勝負を繰り広げられましたが、雨で状況は変化するのでしょうか?」

 16号線の残り区間を、雨を味方につけたS15は青と黄色のオーラを纏い、水を得た魚のごとく、追い上げていき、ワンエイティの真後ろに接近した。

「なん……だと!?」

「こっからわしのターンじゃ!」

 16号線と70号線を繋ぐ左ヘアピン。
 どちら雨の路面をドリフトで通過していき、こっから大沼に向かっていく。

「わしの能力は雨でクルマのグリップ力とハンドリング、ドライバーの集中力と操作性を引き上げるんじゃ」

 逆転できたのはドライバーが雨を得意としているわけじゃあない、覚醒技の能力が発動したからだ。
 おれと同じだ。

「さぁ2台は大沼に向かっていきます。長かったキャノンボールはいよいよクライマックスだ」

 
 雨に濡れたキャノンボール終盤戦。
 能力が発動し、オーラを纏う2台の勝負の行方は!?

The Next Lap
 

 
 
 
 
 

 

 

 

 
 

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