精神覚醒ノ肥後虎 ACT.28 当て逃げ!?


 あらすじ

 ミドリのST205は謎の失速を遂げる。
 夫婦喧嘩する両親や父の逮捕により、彼女の心は限界になっていたからだ。
 虎美は彼女の前に出る。
 抜かれると降参し、家に帰ることを決意した。
 それから数日後……帰り道でひさ子はクルマを当ててしまう……。


 わしは森本ひさ子。
 麻生北高校の3年生だ。
 愛車はマツダのBG8Z型ファミリアGT-Rだ。

 両親は遠くで共働きしとって年に数回しか帰らないから、祖父母と兄と共に蛍食堂で暮らしている。

 勉強は苦手で……虎ちゃんと飯田さんと異なり運動も苦手ばい。
 テストの問題は分からない問題ばっかりだし、体育の授業もボールをぶつけられるし……。
 
 おまけに運も悪い。
 野球部やサッカー部、テニス部のボールが当たるし、クルマが脱輪するし……。

 運転はできるけい、虎ちゃんや飯田さんにはおよばない……。

 わしってできることがない。

 そんな自分だけど、ある日の学校の帰りに人のクルマをぶつけた。
 罪深いことをしてしまった……。
 どうしようもない……。

 夜11時。
 いつもより元気のないわしを見て、お兄ちゃんが話しかけた。

「ひさ子、どぎゃんしたん?」

「なんでもなか」

 気にしないフリをした。
 しかし、後に騒動になってしまう……。

 翌日、わしはそれを抱えながら登校した。
 教室へ着くと小日向先生が挨拶してきた。

「おはよう、森本。暗かな顔ばしとるばってん、何かあったん?」

「何でもなか」

「何でもなかではなか。怒らんけん、何か言うてみい?」

 重い口を開く。

「昨日……人のクルマばぶつけたん……帰り道で……」

 それを言った途端、クラス中がざわめきだした。

「森本さん、クルマをぶつけたん?」

「弁償来るかもしれんたい !」

「静粛に! 静粛に! 森本のこつはこん後で話すばい」

 実際にその話をしたのは全ての授業が終わり、部活が始まる直前のことだった。
 しかし、内容は安心するものだった。

「森本、ぶつけたクルマは当たり屋やったか?」

「当たり屋……?」

「そうたい。わざと事故の被害者になるこつでお金を請求する人のこつばい。最近ある当たり屋が事故ば沢山誘発しとる。車種は銀のゼロクラウンのアスリートたい」

「そんクルマ、当たり屋やったんですか!? わしが当てた車種と一致しています」

「やはり当たり屋やったんか……」
 
 それが良いことか悪いことか……。

 その話に虎ちゃんも参加する。

「ってこつは、ひさちゃんば狙ってぶつけてきたってこつ!?」
 
「当たり屋の目的は損害賠償たい。それで金ば手に入れようとしとる 」

「やばいわね……森本さんから金を取ろうとして入るわね」

「森本、ドライブレコーダーをつけとった?」

「つけております」

「では、電源入れとったん?」

「入れておりました」

「証拠となった当たり屋の映像を見せてくれ」

 この後、証拠映像をみんなで見ることにした。

 18時に学校から帰宅して、他の自動車部の2人と共に蛍食堂へ向かう。
 そこにはわしが当てたゼロクラウンと、店内に入ると運転手らしき男性がいた。
 おばあちゃんとお兄ちゃんが困った顔をしている。

「あなたのお孫さん、クルマを当てましたよね? 自分、お孫さんの家がここだと特定したんですよ。昨日の夜、ここに止まっているのを見ましたから。自分のクルマ、傷つきましたから」

 わしら自動車部が蛍食堂に入ってくる。

「お孫さんが友達を連れて来ましたよ」

 おばあちゃんに忠告を入れる。

「おばあちゃん、そいつ……当たり屋たい!」

「そいつ、ひさちゃんのお金ば取ろうとしております!」

「森本さんを悪者扱いしているわ!」

「あ、当たり屋!? ひさ子、こん人は当たり屋ばい?」

「損害賠償ば目的でわしのファミリアにわざとぶつかってきたばい!」

「お孫さん、何を言っているんですか!? ぶつけてきたのはあなたの方では!?」

 おばあちゃんとお兄ちゃんにファミリアの中にあるドライブレコーダーを見せ、当たり屋だと理解した

「あなた、当たり屋やったとですね!?」

「当たり屋は帰ってほしかです!」

 当たり屋やと知ったおばあちゃんとお兄ちゃんはわしを庇いだす。

「帰らんなら、バトルたい! 自動車のレースたい!」

 ついにわしは淡河を切る。
 
「いいですよ。こっちだってクルマの運転は自信ありますからね」

「ひさちゃん、バトルで追い詰める気やね」

「森本さん、あいつにはオーラが出ているわ。弱くないかもしれない」

 オーラの色は金色、金属性の覚醒技の持ち主だ。

「負けたら反省して欲しか。コースは豊後街道たい」

 わしと当たり屋はクルマに乗り込み、スタートラインに立った。
 スタートの合図は虎ちゃんが務める。
 
 しかし、悲劇的な結末で終わることは誰も知らない……。

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