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肥後の走り屋たち ACT.9 大内胤子

あらすじ
虎美は生徒会に突如呼ばれた。
彼女たちは虎美たち自動車部にバトルを申し込んだ。
勝てば部活を認めるという条件付きだった。

 4月25日の土曜日。
 生徒会とのバトル当日となった。

 ある豪邸でもそのことで話題となった。
 3人の男女が夕食を食べていた。
 リーダー格と思われる大人びた青年、その仲間と思われる10代後半の少年、紅一点となる少女だ。

 仲間と思われる屈強な男が知らせに来る。

「愛羅、麻生北の生徒会がバトルをするらしいぞ!」

「誰とするんだ?」

 愛羅と名乗る大人びた男が言う。

「自動車部と名乗る、麻生北2年の生徒だ。どっちが勝つんだ?」

「そりゃ生徒会でありんすよ」

 
 今度は少女が答えた。

「あいつらに勝てそうな気配はないっすよ」

 少年も続く。

 愛羅はフォークを持って呟く。

「麻生北の自動車部、復活したのか……」

 過去にその学校の自動車部は存在していたようだ。

 バトルの時間。
 箱石峠往路スタート地点よりずっと前にある、妻子ヶ鼻パークヒル前にうちら自動車部(仮)の3台のクルマが停車する。
 今日は学校行事の1つなので、全員制服を着てきた。

 後から生徒会が乗る3台も停車した。
 車種は、幻のレーシングカーのカラーリングをした灰色のケンメリことKPGC110型日産・スカイライン2000GT-R、青と水色のSA22C型マツダ・サバンナRX-7、銀色のA53C型三菱・ギャランGTOだ。
 3台にはそれぞれ、両サイドには生徒会での順位を表す数字、ASOというステッカーが貼られていた。
 彼女たちも制服姿だった。
 

「よく来たばい。バトルは星取り方式の団体で行く。前に言ったばってん、3戦中2勝した方が勝ちとすっばい。まずは誰が行くと?」

「私が行きます」

「私が行くばい」

 トップバッターが両方とも決まった。
 自動車部が副部長の飯田ちゃん、生徒会は書記でギャランGTO乗りの大内胤子で行くこととなった。

 飯田覚(CXD)

 vs

 大内胤子(A53C)

 コース:箱石峠往路

 先鋒を努める私はSVX、相手の大内書記もギャランGTOに乗り込み、スタートラインに立つ。
 バトルを待つかのように、2台のエンジンが吠える。

 
 スターターは菊池生徒会長が務める。

「スタートいっくばい! 5、4、3、2、1、GO!!」

 
 両者共に勢い良くスタートする。

「飯田ちゃんが後攻っばい!」

「パワー的に考えたら、飯田さんが有利やのに、ばってんなーして後攻を取ったばい?」

 455馬力と4WDのトラクションを使えば、相手をすぐに引き離せるかもしれない。
 だが、バトルというものは油断できないから、後攻を取って様子をうかがいながら走ることにした。

 スタートラインを出ていく2台の後ろを生徒会の2人も眺める。

「先行を取ったとか」

「胤子ちゃんの走り、エグかよ! プレッシャーを与えまくるとよ!」

 人面岩前の連続S字区間を抜けていく。
 道路の両側が草原となっている自然豊かな地を切り裂くように2台は走っている。

 しばらくはその区間が続き、ギャランGTOの後ろを煽るようについていく。

「やっぱパワーはこっちが上ね。けどすぐに抜くわけには行かないわ」

「中々ついてきとるばい。ばってん、アレば発動するとよ!」

 
 緩い左からの右ヘアピン。
 ギャランGTOは軽いドリフト、SVXはグリップ走行で攻めていく。

 そこを抜けて直線に入ると、先頭を走るクルマは左から右へと、無色透明のオーラを纏いながら蛇行運転を始めた。
 

「行くとよ! 悪戯なる精神流<威張りの蛇行運転>!」

 やや遅めの速度で走行しているギャランGTOを見ると、私の感情は高ぶっていく。
 両手で掴んでいるハンドルを叩きたくなり、苦虫を噛み潰したように歯が痛くなる。
 なんなんだ、あれ?

 私は前のクルマをすぐに追い抜きたくなる。

「なんなのよ、アレ!」

 今ハンドルを握っている手の力が強くなる。
 いらつきのあまりだ。

 私は悟った。
 あいつはまた使ってくるかもしれない。
 技は1度使うと、すぐにはもう1度使うことができないけど。

 彼女には特別な何かでまた使えるかもしれない。
 その力で……。

 左中速ヘアピンを抜けると、ギャランGTOは<威張りの蛇行運転>を再び使ってくる。
 それを見た私のイラつきはエスカレートする。
 

「くそゥ!」

 
 私は虎美や森本さん以上に気が短い。
 その性格から、こういう技には弱い。
 

 イライラが貯まった私は、次の右ヘアピンでブレーキが遅れてしまい、距離が広がってしまう。

「どう、私の技? 恐ろしかよ!」

 
 えげつない戦法だ。
 私は先行を取るべきだと思った。
 それだったら相手を離せたかもしれない。
 

 S字を抜け、左コーナーに入る。
 私とギャランGTOとの差は変わっていない。

「中々しぶといわね……」

 S字を通って2連ヘアピンを通過し、シケインを通過する。
 差は少し縮まった。

「どこで抜こうかしら……」

 私は5日前に行った、かなさんの特訓を思い出す。

「さとりん、あんたの走りは面白くねーんだよな……」

 
 かなさんはそんな私に対してぴったりなメニューを用意した。

「さとりん、あんたには常に同じタイムで走ってもらう」

「同じタイムで走るなんて無理難題ですよ!?」

 そんな走りはできるのだろうか?

「無理って言わねーの。あんたには変則的な走りが必要だ。それを身に付けるためにやってもらう。遅すぎても、速すぎてもダメだ。タイムが同じじゃあなかったら、なぜ悪いのか自分で考えこい」

 こうして、バトル当日までその練習した。
 速すぎたり、遅すぎたりすることもあったものの、同じタイムじゃあなかったことを自分で考えた上で何度も走ることで変則的な走りを身に付けていった。

 バトルは連続コーナーに突入する。
 それらの区間では距離が変わらなかった。

 右高速コーナーに入る。
 私はここでギャランGTOを捉えた。

「今、仕掛けるわ!」

「なんか来っばい!?」

 SVXは無色透明のオーラを纏い、光と音、気配を消しながら、獣の如く外側からギャランGTOを狙う!
 消えるラインを描く!

「山崎ノ槍柱流<スピニング・ラビット>」

 
 一瞬で前に出た。
 その追い抜きにギャランGTOは手も足も出なかった。

「防げんかった……」

 この後は直線。
 私はSVXのパワーとトラクションを使って、ギャランGTOを引き離した。
 相手はゴールまで抜き返すことはなかった。

 結果:飯田覚の勝利

 2台が戻ってきて、それぞれのドライバーが降りてくる。
 勝った飯田さんを労った。

「おつかれ、飯田ちゃん」

「序盤で相手は私をイラつかせてきたから、負けると思ったわ……中々の強敵だわ」

 次は2回戦だ。
 1度勝ったとはいえ、油断はできない。

「今回の勝利であんたら自動車部に白星が1つ付いたたい。今度は誰がいくと?」

「ひさちゃん、行くと?」

「不安ばってん、わしゃ……行くばい!」

「こっちはルリ子が行くと!」

 2回戦の主走メンバーがそれぞれ決まった。
 わしはファミリア、副会長はSA22Cに乗り込み、スタートラインに立つ。

 大戸ノ口コーナー。
 あの4人がギャラリーに来ていた。
 車種はそれぞれ、赤いZC32S型スイフトスポーツ、黄色いJZS161型アリスト、青緑のZN6型86、藍色のレクサスRCFの4台が停車していた。

「自動車部のSVXと麻生北生徒会書記の乗るギャランGTOが通ったらしいけど、どうありんす?」

 アリストの女が口を開く。

「両者中々の走りだった。けど何か物足りないな……」

 
 返したのは、スイスポ乗りの愛羅だった。

「次も来るらしいッスよ。あと2回やるらしいッス」

 ZN6乗りの少年も口を開く。

「バトルはそれだけじゃあないからな……」

 RCF乗りの屈強な男も続く。

「見せてもらうぞ……今の麻生北の走りをな。俺たち麻生南のサウス4に……」

 彼らはなぜ麻生北の走りを見に来たのか?
 その4人組とは一体!?

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