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精神覚醒走女のオオサキ番外編・BCNR33の逆襲 ACT.1「馬鹿にされたからには」


 あらすじ

 大黒ふ頭にてライブへ来ていたキャラメルズ。
 ライブは無事成功したものの、事件は起きる。
 メンバーの田井中好子はパープルギャルズの桑木ケイに愛車のBCNR33型スカイラインGT-Rを馬鹿にされるのだった。

 2月18日……。
 昼15時、私たちキャラメルズはレッスンをしていた。

 ワンツーとダンスを踊っていく。

 しかし、私は今までより調子が出なかった。
 踊れなくなっている。

(あれ……?)

 ダンスのレッスンが終えると、ランちゃんから叱責を受けた。

「何で踊れなかったのよ、スーちゃん!」

「ごめん、ランちゃん。実はショックな出来事があって……」

「その出来事って何なのよ?」

 休憩時間に入ると、出来事の詳細を伝える。

「なるほど、桑木ケイさんにR33を悪く言われたの!?」

「スーちゃん、あの人って有名なパープルギャルズの?」

「そうだよ。R33のことを「最悪なクルマ」って言われたんだよ……そう言われて私は傷ついたよ……」

 先輩とはいえ、失礼な行為だ……。

「確かに……R33はスカイラインGT-Rの中で賛否別れるクルマだからね。大型化しただけでなく、某事件や某漫画の影響でさらに批判的な見方をする人もいるわ。それほどじゃないけど、私のS14も結構賛否別れるクルマなのよ」

「それは分かっているけど……」

 某事件とは、レーシングドライバー土屋圭市が所有していたマイカーのR33が広報車のR33に敗北した事件だ。 
 しかもその広報車はチューニングが施されていた。
 土屋さんはその行為を猛烈に批判し、日産の評判だけでなくそのクルマの評判が落ちてしまった。

 某漫画においても、かつてR33に乗っていた登場人物がその車のことを「失敗作」とこき下ろしているシーンが存在する。
 彼はR33からR32に乗り換えた。
 さらにその人物に影響されて批判する人も少なくない。

 ランちゃんが言っている通りS14も批判の多いクルマだけど、このクルマとR33はある時期に作られたという共通点がある。
 それ日産の経営不振だ。
 この頃はバブル崩壊による高級車・スポーツカーの売り上げが低下し、もとから指摘された商品企画やマーケティングの下手さからヒット車を出せず、評論家からよく批判を受けていた。
 中には「トラックよりは速い」という皮肉を言われたクルマも存在するほど……。

「まぁ、気にしないで。今はそれを忘れましょ」

「そうだね」

 考えたら、アイドル業やレーサー業に支障が出る。
 私は忘れたかった。

 だが、忘れられなかった。

 翌日、2月19日の午後3時。
 埼玉の鎌北湖の北にあるコース、鎌北サーキット。
 廃道となった国道186号をはじめとする鎌北湖周辺の道路をサーキットの改装したコースだ。
 ここは関東のニュルブルクリンクと呼ばれている。

 私はこのコースをBCNR33と共に練習走行をしていた。
 車が2台も入れそうではない道を攻めていく。
 
 しかし……!

 私は大谷木の車地像後の高速ヘアピンでハンドルを切りすぎてしまう。
 それが原因でBCNR33はスピンしてしまった。
 ちなみアテーサET-Sを抜いてFR化されている。

「ごめん……BCNR33、今日の私は調子が悪いみたい」

 やっぱあの件が響いているのだろうか…….。
 幸いBCNR33には何も当たらず、傷ひとつも付いていなかった。

 調子が悪いと感じた私はピットとなった第2駐車場へ停車する。

 休憩すると、ここにS14前期とワンエイティがやってきた。
 停車したS14からランちゃんが降りる。

「あの桑木ケイさんという方……。聞いた話によると、かなりのR33嫌いで知られるわよ。生まれた頃から、父の愛車という理由でBNR32型スカイラインGT-Rを好み、「自分のクルマだけしか考えられない」と考えていたけど、BCNR33が出たときはそのデザインやサイズから父と共に失望してしまい、「先代への冒涜」と考えているのよ」

「R33を嫌う一方で、そのクルマのイメージを悪くした広報車事件や某漫画のことは知らないらしいよ」

「某漫画を件を知らないって意外……」

 クルマ好きなら知っていると思った。

 他にも私の知っている情報では、大のマスコミ嫌いでも知られている点だ。
 それらを見かけるとBNR32に乗ってドリフトしながら逃げる。
 特に梨田昌孝というレポーターを嫌っている。
 
「R33嫌いの顔を持つ割には、かつて先輩女優の運転手を務めていたらしいわ。走行会にも顔を出しているみたいよ。運転は下手なプロレーサー以上に上手く、もしバトルになったら相手には出来ないかも」

 ケイさんと戦うときになったらどうしようか……。
 戦うときが来たらもっと腕を上げなくてはならない。

 夜8時、練習を終えると喫茶店へ訪れる。
 キャラメルズのメンバー御用達の店だ。
 店長は横須賀銀杏のシュウさんが務めている。

 シュウさんは見た目が怖いけど、面倒見のいい人だ。
 昔、痴漢を撃退したエピソードも存在している。
 また女の子からモテモテで、車のトランクが閉まらなくなるほど貰ったほど。

 愛車はハコスカことKPGC10型スカイラインGT-Rで、かなりかーマニアだ。

 シュウさんの前のテーブルに座った私たちはごはんを注文し、それを食べながら彼と話す。
 ケイさんの件でお話しした。

「へぇ、パープルギャルズの桑木ケイに好子のクルマをバカにされたのか? BCNR33ってGT-Rの中でも激しく好き嫌い分かれるからなあ」

「そうなんです。この前のライブで……」

「なるほど。これ、興味あるかい?」

 シュウさんはチラシを取り出した。

「3月4日に富士スピードウェイ近くにある峠、明神峠で開催されるスカイラインGT-R限定のレース大会があるんだけど……好子ちゃんは参加するのかな?」

 このチラシには「覚醒技(テイク)の使用OK」と書かれていた。
 覚醒技とは後で説明しよう。

 このチラシに目を一瞬光らせた私の選択肢は決まっていた。

「イベント参加します……!」

 そんな私に対してシュウさんは衝撃のメッセージを放った。

「この大会、パープルギャルズの2人のが参加するらしいよ」

「前に話したでしょ、ケイさんと戦ったら相手に出来ないって」

「遅くない相手だよ! 勝てるの!?」

 私の決意は固かった。

「バカにされたBCNR33のためにケイさんと戦うよ。私は負けないよ」

「覚悟は出来ているね」

「はい、勝って見せますから」

 こうして大会に参加をするのだった。

 参加を決めてから5日後の24日、私は鎌北サーキットで練習をしていた。
 走っている途中、ケイさんとBNR32が停まっていた。

 猛スピードで走る私のBCNR33を、キックして停車させる。
 人間とは思えない離れ業だった。

「聞いたわよ、あなたもあのレースに参加するのね」

「そうです。あなたには負けませんから!」

「どうかしら? 私とBNR32のコンビネーションに勝てると思うの? 私のドリフトについてこれる? 私だってプロなのよ!」

 この時、ケイさんの身体から2色のオーラが出る。
 オーラの色は紫色と黒色だった。

「私は覚醒技超人よ」

 このオーラは覚醒技使い、いわゆる覚醒技超人である証拠を表す物だ。
 色で属性を表し、ケイさんの場合は毒属性と闇属性を表している。

 ちなみにこの能力とは、走り屋を中心に使われる特殊能力のこと。

「私だってBCNR33乗りのプライドがありますから。私も覚醒技超人です」

 私の身体からも青色と水色のオーラが出る。
 水と氷属性を表している。

 大会まであと8日。
 ケイさんらパープルギャルズには負けるわけには行かない!

 TheNextLap

 

 

 
 

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