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大人のためのエンタメ vol.2 : この物語はフィクションです。ただし、、、

もうあの時のように楽しめないテレビやアニメ、ゲーム。
仕方ない、僕たちはもう大人になってしまい
日頃直面する問題はもっと現実的で
ヒーローも魔法もないことに気づいてしまった

そんな大人たち「だからこそ」楽しめる
大人のためのエンタメ特集(ゲーム多め)です

前回はこちら。

蜘蛛の糸

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このゲームのメインストーリー「A NEW HOME」は深く示唆に富んだ物語だ。
ゲームの序盤は「寒さと飢えに苦しむ集団をどう導くか」と言う課題に直面し、中盤は「限られた資源や人員を何に投資するか」と言う戦略性を要求してくる。それらにようやく慣れてきた終盤になって、この物語の本性を表す、ある問題を突きつけてくる。

実は外にまだ多くの生存者がおり、いくつもの集団が熱源のあるこの地を目指してやってくると言う。その数は、既にいる住人の数倍にも及ぶ。

それは良いニュースのように思える。実際住民の一部は生存者の存在に勇気づけられ、生活が安定してきたこの街にて「彼らを助けたい」と思っているようにも思える。
しかし同時に露骨に不快感を示す人々もいる「ギリギリの人数分にしかない住居や食料を、知らない奴らに分け与えないといけないのか!?」と。
そして、実際に彼らは到着する。かつての自分たちと同じように、悲壮感と衰弱しきった身体と共に。

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ここであなたには当然2つの選択肢が与えられる。「受け入れる」か「追い返す」か。そしてどちらを選んでも物語は続くし、どちらかを選んだから「間違い」だとは言われない。このゲームに、いや、この世界に「正解」は存在しない。どちらも正解であり、不正解だ。

ここまでで既にピンとくる人もいるだろうが、これは当時ヨーロッパで最も重要な社会問題となっていた「難民問題」のメタファーだ。

「困った人々を助けるべきだ」と言う人々と「しかし経済的負担や治安への不安が大きすぎる」と言う意見に別れ、欧州全土が真っ二つに別れた。拒否した事で悪評を産んだ国もあれば、受け入れた事で多くの問題を生み出してしまった国もある。そう、どちらかが正しい、なんて言う緩い問題ではなかった。

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もちろん、良心を大事にする多くのプレイヤーは「受け入れ」を選ぶ。僕もそうだった。しかし、急激に倍増する難民に対して用意しなくてはいけない家の多さ、無くなっていく食料の速さは、すぐに事態の深刻さを教えてくれる。あなたは増えた人員をすぐに労働力に変え、これまでの何倍の規模にこの街を成長させる義務を負う。間違った指示をすれば、次々と人々は死んでいく。

11bit Studio(開発会社)よ、なんてゲームを作るんだお前らは、、、

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このゲームを作ったのは11bit Studioと言う、ポーランドの小規模開発会社だ。隠れたゲーム大国として知られているが、この鬱でドSな設定がポーランドの国民性と関係しているかは知らない。因みに日本のアニメやゲームが非常に人気な国でもある。


不信に満ちた集団という狂気

まだ終わらない。難民問題を乗り越えたあなたに、この物語は最後の問題を突きつけてくる。

前回大量に受け入れた難民たちによって、重大な情報がもたらされる。「北から、途方も無い大寒波が訪れる」というのだ。既にこの地はマイナス40度。時々更に10−20度下がる事もある中、それを遥かに上回る寒さが訪れるという。

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これを聞いた一部の住民が、以前からの不満を含めてあなたに反旗を翻す。「お前の元でこんなところにいても死ぬだけだ。俺たちは元いたLondonに帰る!」と。既にLondonは凍結し、熱源もない。帰ったところで良い場所があるとは思えないが、極限の生活が続き我慢の効かなくなっている彼らは耳を貸さない。同じく不満を持つ人々を先導し、「Londonへ帰る人々」という意味のグループ「Londoners」を作り、周囲を説得していく。反体制派の誕生だ。

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規模の大小を問わず、グループのリーダーをすれば、こういった経験をする事になる。あなたも完璧な判断ができているわけではないが、「自分の欲求」が満たされない場合に、事を大きくし、グループを離れたり、リーダーを安易に否定する。「自分達ならもっと良くできる」というそれは、確実に妄想なのだが、残念ながらそれを想像できる程人は賢くない。

「いいか、この話はフィクションだぞ!フィクション、絶対フィクションだからな!!」
人生が難しい事だらけだから、わかりやすいゲームを楽しんでいるはずじゃなかったのだろうか、、、?
それともトランプ以降の現実が、もはやファンタジーの域に達してしまっただけなのだろうか、、、?

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戦争と平和、現実と妄想

このLondenersに対して、あなたは2つの戦略を取る事ができる。すなわち「認める」のか「弾圧する」のかだ。放っておけばLondonersは拡大し、あなたを支持する人間は少数派に陥る。そうすれば追放されるのはあなたの方だ。

弾圧:自警団という名の「軍隊」を組織し、彼らの集会や扇動活動を取り締まる。Londonへ帰るという全く無謀な意見に人々が惑わされない為には仕方ない、、、のか?意見の違うものを力で抑える行為を、普段僕らはなんと呼んでいたのだったろうか?一度自警団を組んでしまえば、その力は増大する。強硬な中心人物を処刑し、厳しい相互監視体制を作り、プロパガンダで「ここが最良の居場所だ」と「正しい教育」をするようになるまでは、そう時間はかからなかった。

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共存:といえば聞こえはいいが、放っておけば彼らは増大する。そうさせない為の手段とは正しい判断で街を運営し「人々を満足させる」事だ。全く持って正しい手段のように思える。それが可能なら。現実は程遠い。
 「集団」が「非現実的な希望」を保つ為の「手段」をご存知だろうか?何千年も前から世界中の指導者たちが使ってきた、非常に効果が高い手法。それを「宗教」と呼ぶ。今は貧しくとも未来がある。あなたは今幸福な状況にある。そう人々を「教育」する事で、体制の崩壊を抑える方法は「そう思いたい」人々の願いによって簡単に浸透していく。教会を建て、ミサを開き、人々は希望と安らぎを覚える。強硬にあなたに反対するLondonersが無知で愚かな人々に見えて来る。今世界で生きていけるのはこの場所だけなのに、それを率いているあの方はあんなにも偉大なのに。大袈裟なイベントが行われ、限られた資源で大きな建物が立ち、人々はそのうちあなたを「教祖」そして「神」と呼ぶようになる。

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あなたが普段歴史を学び、ニュースを見た時に、いろんな事を考えるだろう。しかし、多くの場合それは「民衆」の視点だったのではないだろうか?それは今のあなたが恐らく自分はそちら側にいると思っているからだ。「独裁者はいけない」「平和的解決」「宗教は怪しい」「何故戦争をするのだ」と。今あなたは集団の統率者という立場に立った。非現実的な理想主義者を前に「正しい事を知っている」あなたは、どんな考えと手段で民衆と向き合うだろうか。

繰り返すが「平和的で民主的なやり方なまま皆が幸せで充分な暮らしができる」状況など、ここでは起きない。

あなたなら、どうする?

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名作Frostpunkの紹介は一旦ここまでとします。ゲーム内では、更にAI時代を彷彿とさせるシナリオや、労働階級とエリートとの対立など、様々な問題をあなたに突きつけてきます。興味を持った方は是非遊んでみてください。

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あくまでも、フィクションです・・・

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