見出し画像

「空飛ぶ広報室」を見ていたときの世界。

空井くんのかわいさを語りつつ2013年を語るエントリ。

空井くんはかわいい。
けっこう頻繁にサブスク配信されてるのを見たのでみなさん「空飛ぶ広報室」ご覧ください。
ほんとにかわいい。オススメは7話。
2月に4話くらいまではボーッと見てたんですが、昨日何を思い立ったか67話見ながらあんまり不当に可愛かったので思わず喚いてしまいました。
いや綾野さんが急に会いたい発言で場を沸かせるからテンションがおかしかったんですよ。やりそーウインク。でもシマチャンはシマチャンじゃなくて微妙に源さんだったのがまたかわいかった。7話コンテナ。そこからなんでみう7話じゃなくて広報室7話を再生したのかよくわかんないけど、まあなんせ可愛かったんです。スーツで職場まで迎えに来て「い〜な〜ぴょ〜〜〜ん!!!」ってブンブン手振ってる自衛官が。一応幹部が。そのあと心底楽しそうに飲み屋でおしゃべりしてる空井くんが。
空井くん何? 可愛いの権化? 絶対可愛がられる法則でもある感じ? 原作そんな可愛くなかったでしょ! なんなら夢破れて傷ついた元パイロット、理由あって広報官! だったでしょ綾野さん可愛いに振りすぎ! ゆるす!!!!って思わず見ながら可愛いって声に出てた。風呂場でよかった。電車の中だったら危なかった。

真面目な感想を言います。
2013年にリアタイして、2014年に別件で東北を訪れる用事があったので、松島基地の見学に行きました。通っているはずの道が通っておらず、時間が読めなくて基地内部の見学は予約しなかったけど、みんなが集まって空を見上げた基地の前には行けたし、それはまぎれもなく聖地だった。あの場所に辿り着くまでに色々なものを見た。2014年の被災地はまだまだ被災地だった。瓦礫こそ観光客の目に見えるところになくても、そこかしこの建物の不在、地図にあるのに目の前にない道が、ナビゲートを狂わせ、私に色々なことを考えさせた。
原作における「あの日の松島」はいわばファンディスクであり、追加ディスクである。本筋に関係はないけど、このキャラクターたちなら、この歴史に対峙したときこう動くだろう、この選択をするだろうという、言うなれば作者による解釈の場。それをドラマでは最も山場にあたるクライマックスに、何の誤魔化しもなく盛り込んできた。おそらく震災のことを本編に盛り込んだフィクションの中で最も早い部類だった。今では震災の前提を受けずに現代社会のフィクションを作ることが、そもそも不可能になっていると思う。ありとあらゆる物事がポスト3.11であり、それが起こらなかった世界を自分たちは知らない。知り得ない。きっと90年代、サリン事件や阪神淡路の後でその影響を受けたものが無数に蔓延ったであろう時代を考える。あしたは震災から10年と言われるけれど、だから何かが昇華されたり報われたりするわけでは決してなく、25年経っても26年経っても、生じた歴史的事象からは経過年数を数え続けることしかできない。実際そういうことだし。
しかし、あれからたった2年しか経っていない世界。生々しくて、剥き出しで、何の記憶も風化させてもらえない世界。フィクションだけど、地続きのどこかにあった世界。この世界にたしかに「いるかもしれない彼ら」の存在感が、どこにもいない人をありありと描き出す生きた脚本によって描き出される。内容としては結構ストレートなラブコメだと思うけど、何を伝えたかったかがこれほど明白なドラマは、下手な社会派の作品よりもメッセージ性に富んでいる。やっぱ野木さんすごいわ、と思う。そういう意味で忘れられないドラマだし、あの時代に出たことに意味がある作品だと思う。単なる職業ドラマにラブコメ要素を足した作品に終始しない、10〜11話の説得力が、この作品を8年経っても忘れ得ないものにしている。

反面、所々で2013年のドラマだな、今ならこうはならないだろうな、というのが出てくるのも含めて、今見る意義がある。多分、制作サイドがというより、2021年に至って社会が少しずつ変わってきてるんだろうなと。
印象的なのは、柚木さんの描かれ方。2013年の描かれ方であれば、確かにこうなるわなという感じ。というか有川浩作品が大体こんな感じ。それ自体を批判するつもりはないし、エンパワメントに正解も不正解もない(強さの定義がないように)。しかし男社会で生き抜くためにおっさんのふりをしていた女性に、「自分はあなたを女として見ているから強がるのはやめろ、痛々しい」と突きつけるところ、初見のときはそんなに辛くなかったけど、今回見返してて頷けない自分がいたのは本当のこと。女性らしい気遣いとか、本当は細やかな優しい女性とか、ンン…となる指摘が多いのも時代的なものを感じたりはした。反面、ずっと防大の頃から想いを寄せてて…というリークに、照れ隠し半分「きもちわる」というのは、たしかに、と思ったりも笑。でもそのバランス感、何人かでモノを作ってる感じがしてちょっと救われる部分もあった。

2013年の、といえば「箱入り息子の恋」もそうで、気がつけば2013年の作品ばっかりなんですけど、本当に細かいところで「あら?」と思うの、自分がかわってきてるというよりは大いに社会が変わってきているのだと思う。正解や不正解を人間は決めがちだけど、いま正解だと思ったことが7年後に変わらず正解である保証はない。世の中の価値判断はどんどん変わりつつあって、それは「優れた作品」同士で比較したときに最もわかりやすい。生きている限り繰り返される気づきと修正は、わりと悪くない。かつてものすごく好きだったドラマに僅かな引っ掛かりを感じたとき、そんなことを学ばされた思いでした。

そういう真面目な思いとはまた別に、キャラクターがみんな魅力的でいいな〜と。役者の個性が光りまくってましたね。うどん県の副知事がとりわけ最高だった。また共演してほしいんだけど、ないんでしょうか。

あと広報室の続編が難しいなら、MIU特番2時間SPのゲスト枠とかで新垣結衣さん来ないか。ないかな〜。ないか…? 志摩と絡んでも伊吹と絡んでもメタ的にうまい。

明日の東北が晴れたら良いな、と思います。
あのとき何もできなかった自分なりに、何か役に立てることをこれからも探したい。生きている人間のできることは意外に多いと思うので。

いつになく真面目な締めになってしまいました。
またよろしくどうぞ。では。

頂いたサポートは映画、文学、芸能、またはそれに類する業界に正規の手法で支払います。より良い未来を、クリエイターの幸福を、未だ見ぬ素敵な作品を祈って。