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「最高の離婚」は対話を諦めない

ケンカップルが好きだ。
というか、友達みたいなカップルが好きだ。カップルには恋人である以前に親友であってほしく、親友である上に恋人と呼んでも差し支えない関係性、くらいの意味を過剰にふっかけたい。
全部載せ特盛りトッピングマシマシ。とりあえずそういう存在が世界に1人でいいなら、そんくらい夢見てええやんと思う。

「最高の離婚」は、「花束みたいな恋をした」がめっちゃ良かったという話をフォロワーさんにしてたとき、すごく勧められた。すでに4つもサブスクに加入しているのにどれも配信してなくて、どうしても見たくて結局新規サービスに加入した。Blu-rayBOX買うかどうか悩んだ。でも一応、忘れがちだけど一応、わたし引っ越しを控えているんですよ。なんの話もまとまっていないけど。なので今回は見送った。引越ししてからまだ在庫があれば考えようかしら。面白かった。2013年のドラマなのに、全く色褪せてなかった。もしかしたら色褪せてないというのは(2013年は全く昔のことではないという)私の願望かもしれないけど、それにしたって何度か声を出して笑った。

あらすじは至ってシンプル。気の合わない夫婦が離婚を決意する。男はめんどくさい性格をしていて、女は大雑把。なんとなく結婚にうんざりしている。近所に夫の元恋人が住んでいる。その夫(内縁の夫)はめっちゃ浮気性。悪気はない。基本的にはこの4人が軸になって話が進んでいく。

「花束」もそうだったけど、あらすじはめちゃくちゃシンプルで、極めて普遍的。でもそれ以外のところに意外なまでの面白さがあって、何を思ったか出勤前の朝にサブスク契約して、怒涛の勢いで3話まで見た。帰ってきてから4話、夜中に56話、次の朝に10話まで。仕事がなければたぶん、今日中に見終えてた。永遠に見ていたい。会話のテンポもさることながら、拘るところの些細な箇所が堪らない。ツッコミの切れ味がいい。飽きない。すごいね。
異性婚の、異性愛者の2組(もっと言うなら周りもみんな異性愛者だけである。それもシングルはほぼいない)を軸に話が進んでいくので、徹頭徹尾「分かり合えない男と女」に稿が割かれる。しまいには「結婚って同性でやっちゃえばよくね?」ってところまで極論が進んで、違うだろってなるところは却って誠意があって良かった笑。
日常生活であればそんなに人と人は会話で分かり合えないし、言語能力も高くはない。でも「色々考えすぎる男」と「なんも考えてない男」、「考えてないようで考えてる女」と「考えてるようで考えないようにしてる女」の会話を通した対比がとにかく見事で、もう、勉強になりました。なるほどカップルってのはそうやって作るんだなと。そうやって補完し合いながら生きるために他者を必要とするんだなと。30歳周辺っていう年代もさることながら(近い)、「好き嫌い」と「勢い」以外の要因で他人を能動的に選んで生計を共にする、家族になるという過程を丁寧に描いたすごい作品だな〜という印象を持ちました。名言がめちゃくちゃ多かった。すっごい痛烈な批判をするんだけど、「まあこんだけ言っても女は聞いてないんですけど」と最後に付け加える最大の皮肉。殺意を抱いてます、からマスカラとタンバリンで殴り合う男たち。いっこいっこのエッジが効いてて最高でした。それでいて別れが訣別じゃないところがめちゃくちゃいい。対話を終わりにしないところがすごくいい。簡単に終わらせてくれないんだよね。家族だからね。それで終わりってならないんだよね。なんだかこのいびつな「家族ぐるみ」が、ただの家計単位に終始しない広義での「家族」を感じて、非常に示唆に富むと感動したのでした。すごいなあ。
最終的な濱崎「夫妻」(カッコつき)の選択、まさにケンカップル好きには納得の一言でした。先に見ていたから、絹麦のふたりとかぶる部分もないではなかったけど、基本的にはまったく別個の人間を感じて、それもすごいなあと思ったところ。脚本の引き出しがすごいです。

瑛太さんはそれこそウォーターボーイズやオレンジデイズの頃から知ってる役者さんで、「アンフェア」の安藤がめちゃくちゃ印象に残ってるけど、コミカルからシリアスまでなんでもできる人だなという印象を改めて強くしました。早口で反論するのもドルオタに染まるのもたいへんリアリティがありました。妙にこだわりが強くてあれ嫌いこれ嫌いって言うところとか。めんどくささがすごい。真に迫ってる。
真木さんはクールな役が多くて勿論クールな役が好きなんですが、夫のマイウェイぶりに一歩引いて、いつでも冷静で、その割にめちゃくちゃ批判的で、中に芯の通ったような情熱が見え隠れするところがよかった。方言丸出しで詰るところも迫力あって良かったです。凄みがあるんだよね。「孤狼の血」や「SP」でも見た凄み。これホームドラマなんですが。最高でした。
オノマチ×アヤノゴの組み合わせはもうテッパンですよね。謎の安堵がある。生きてる間にこの2人のホームコメディで夫婦役が見たいな〜。見たいよ!!!!(暴れる患者) 幸せな夫婦役を見せてくれ…なんやかんや紆余曲折あってこう着地「だけ」はする感じの……ひとがしなないやつ……今回も素敵でした。一回だけキスしてたけど。尾野さんの「2人お似合いだもん」って独白するシーンは思わずもらい泣きしました。尾野さんのヒステリックな声、一番高いとこは心に来るんだよね。そういえば尾野さん真木さんの声の組み合わせ、2人ともアルトめ、たいへん聴きやすくて素敵でした。
我らが綾野さんは……い、一度くらいモテない役やりません? ダメ? モテない綾野剛は世間的に解釈違いかな…私はちょっと見てみたい…今回もスマートで絶妙に隙だらけで絶対モテるだろって雰囲気が素敵でした。ありがとうございます我々の業界ではご褒美です。嘘つきまくるけど「灯里が好きなのは本当」って半泣きで言ってるところはあまりに必死でカッコ悪くて逆に性癖に刺さりました。同じことを感じた人は多かったはずだ。

毎回エンディングの仕様が微妙に違うので飛ばさず律儀に全部見てしまいました。
謎ダンス可愛い。あれ絡みはだいたいアドリブなんじゃないかな…大まかなふりしか決まってなさそう。そしてだんだん出てくる桑田佳祐。最高。もっとやって。
実はまだスペシャルを見てないので、時間を見つけて見てみようと思います。一両日中に見てそう。

「恋はDeepに」の小出し情報が破壊力高すぎてこうしちゃおれんと慌てて手を出した旧作でしたが、思いの外お気に入りになってしまいました。今度から「好きなドラマです!」と胸張って言おうと思います。おすすめしてくれたフォロワーさんありがとう! 目黒の土地勘全くないけど楽しめました! どうでもいいけど一度あのへんの宿に泊まったことがあって、夜にお友達とのみに行った帰りにケーキ屋求めて徘徊したことを思い出しました。夜の道を歩くシーンが多かったせい。あの人元気かなあ。

それではまたよろしくどうぞ。では。

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