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「アバランチ#2」私怨と私利の殴り合い。

 予告通りの第2弾。いかがお過ごしでしょうか。
 私も秋花粉や乱視と闘いながらドラマを見ています。いや何で張り合ってんだ。

 今週のアバランチは半年前に亡くなった開発途上国支援組織の女性の真相に迫る話。
 このコンテンツは人の生き死にもそりゃ当然ながら絡むわな(前回は死んでると見せかけて死んでなかった)と見る方も気持ちが引き締まる。
 しかもアバランチメンバーの身内とあって熱の入る展開。前回同様に「懲悪」までがしっかり描かれるんだけど、前回にも増して当事者性が強くなるがゆえに私的制裁の色調も強く、西城くんの葛藤に思わず移入して見てしまいました。

 不正資金流用を摘発したがゆえに消されるという隠蔽体質と、それを他ならぬ外務副大臣の指示でやっていたという黒も黒、叩けば埃の闇が暴かれるのは痛快ではあるものの、その暴力的なまでの暴露と民衆の正義感の高揚、コメント欄で盛り上がる一瞬の危うさまでも切り取った登場人物のガタガタ感がよかったですね。
 最初に資金分配、おそらく褒賞の意味合いも兼ねてるんだろうけど、それらをやんわりと断る羽生をはじめとしたメンバー、ビジネスライクでないがゆえに根の深い憎悪や怨嗟、私情の割り切れなさを感じて、エモいと同時に危うさが漂っていました。

 山守さんが本丸から指示を出すいわばインスペクター(警部的役回り)なのに対して、羽生さんはなんとなく実働を担うリーダーでプレイングマネージャ(警部補的役回り)的、リアル巡査部長の西城はその羽生の指示で動くという、元所属もあってか疑似警察組織ユニットめいていたのも何らかの伏線かなあと思います。
 ちょうど人数もそれっぽい。今はわりと大人しいですが、あの組織がどう絡んでくるかもまた見ものですね。多分参加メンバーの過去なりモチベーションなりは様々な形で今後明らかになるんだろうけど、関係者が何人かいるだけに衝突は不可避だろうな。いやほんと誰も彼もが公的機関に所属なり在籍経験なりしているもので、板挟みになる箇所は絶対に出てくる気がしますね。今のところ要約すると敵っぽい(多分利を追求すると結論として単純な敵とも言い切れなくなるであろう)内閣官房副長官の大山がどう動くかが肝要な気がしています。

 あと欠かしちゃいけないマッキーの私怨ね。あのメンバーの中では(西城を除く)最も感情が出るキャラクターかなと思っていたので2話で過去と行動目的が明らかになり、自分の口で追求して真実(少なくとも一因とされる要素の一つ)を言及できたのは彼にとって救いだったのではないだろうか。ただこれを言っちゃうとドラマとしておしまいではあるんだけど、とりあえずの溜飲を下げられたマッキーの今後の行動指針がまだちょっとよくわからないので、何を狙って、何を目指してまだ「アバランチ」に属するのか、成し遂げたいことがあるとすればそれは何なのか、まだまだ掘り下げられて欲しいなあと思う所存。ただ人となりを解するのには今回とても良い回でした。最愛の弟による最愛の姉の話。死んだ人間が戻らなくても、死んだ人間の意思を継ぐことはできる。希望ある話ですね。

 また今週の羽生さんはまた優秀なエージェントぶりに磨きがかかっていましたね。狭いエレベーター内とマンション室内での戦闘、前の階段廊下アクションもそうだったけど、狭いがゆえにカメラワークが際立って尚更ファッショナブルなアクションとして成立するのクオリティ高すぎですよね。
 そう、羽生さんは元警察組織の職員ではあるんだけど、判断力に優れ攻撃力も高く交渉術もある、単独行動で情報を引き出し仲間を部下として働かせる、その振る舞いが完全に「エージェント」のそれなんですよね。今まで綾野さんの演じてきた警察官は一貫して「警察組織の公務員」という範疇に良くも悪くも収まる人が多かったので、ああ今回は結構踏み込んで違う造形をしてきたな、あくまであの組織で教育と経験を積んではいるが明確な「外」の人なんだな……というのを随所に感じます。このキャラクター造形が唯一無二で今までの誰とも重ならない。いや誰と重ねてもある程度の正解は得られるんだけど、それが羽生誠一という人物の本質には全くたどり着けない。この造形がめちゃくちゃに好きです。下手したら今までで一番好きな部類かもなあ。一番好きが並列状態で三十人くらいいるけど。
 このまま東ドイツ(※もうありません)に放り込んでもそれなりの仕事をしてきそうな綾野さん。トンカツとカレー並みに相性の良い俺得なキャラクター。世界に、そして藤井道人大監督に感謝です。もう「ジョーカー・ゲーム」と「PSYCHO-PASS」のオタクは息も絶え絶えです。ありがとう。

 次回はリナ回が示唆されているわけですが、リナはリナで経緯のよくわからない女だし、そもそも警察OBばっかりのアバランチに一人だけ自衛隊から加担しててどこ繋がりよって思うし、間違いなく何かをやってきて今ここに至っている人なので、その過去と理念が語られるのが楽しみです。
 西城くんも今回は柔道二段を発揮する機会に恵まれなかったので(思わず「スタンガンかよッ」と叫んだ)、次は肩車か支え釣り込み足、もしくは払腰でも決めてくれたらいいなって思ってます。背が高くて足が長いから足技も手技も腰技も映えるぞっ。思わぬところで大学のつながりが発覚してしまったので、彼の立ち位置も物語上重要なところを占めそうですね。

 さて今回はこの辺で!
 またよろしくどうぞ。では。
 

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