さんぽ道
・はじめに・
この記事は、今までのオトンとの朝散歩「モーニングポタリング」をまとめたお話です。
散歩をし始めるまでと、散歩を楽しむ父娘の様子や、心と体の変化などを再編・加筆しました。
・・・
私が作詞・作曲し、歌った歌
「さんぽ道」も合わせてお聴きいただけたら嬉しいです。
穂音(ほのん)さん、くどうまさやさん、ステキな曲に仕上げてくださりありがとうございます!
※You Tubeは、noterの穂音(ほのん)さんの素晴らしいお力!をお借りして、只今制作中です。
完成したらまた歌について詳しく書いた記事にします!
・ここからがお話です・
↓
・・・・・・・・・・・
「さんぽ道」
「てっぺんかけたか!」
「てっぺんかけたか!」🐦♪
「てっぺんはげたか!」😳え?
「つっぴんつっぴん♪」
「つっぴんとっぴん♪」🐦♪
鳥さんたちの鳴き声らしい。
「カラスの二度寝っ♪」
屋根でカラスが、気持ち良さそうに翼を広げて毛づくろいをしているのを見て、オトンが笑顔で指差した。
「カラスさんも黒い羽を広げると美しいね。」
「そうだね、歩く姿も美しい。」
山の木々の上にある、澄んだ青空にあさひが昇る。雲たちも気持ち良さそう。
花びらに小さな朝露が乗ったお花たちが陽の光でキラキラ輝く。
みんなに「おはよう」とあいさつを交わす。
オトンの耳には、鳥の声が「てっぺんかけたか!」に聞こえているのでしょう。
ほとんど音が聞こえないオトンの耳に、鳥さんたちの素敵な声として。
『モーニングポタリング』とは
オトンが命名した、朝散歩のことです。
父娘で行くと、山の中は静かなので、オトンにも大好きな鳥さんの可愛い声が奇跡的に聞こえる。
ニコニコしながら嬉しそうに一緒に囀っています。
オトンとは、私の父の愛称です。
オトンは片耳が完全失聴、もう片耳は補聴器を着けていてもほとんど音が聞こえません。
家の中では、近くにいると会話ができますが、隣の部屋から大声で「お父さーん!」と叫んでも聞こえません。TVの音も愛猫の鳴き声も聞こえません。
外だといろんな音がするので、ご近所の方と立ち話している会話も聞こえません。ちょっと離れて作り笑いで見ています。
そんな時は、私が通訳者となり、みんなでお話できると喜びます。
去年の6月から我が家で同居を始めました。
私が高校を卒業し、実家を出てから約30年振りの父娘での暮し。
元々は明るくてオシャレで、人付き合いが良く、お話好き。
ロードバイクと動物と自然をこよなく愛し全国を自転車で周り、元気に過ごしていたオトン。
昔、私が病気で入退院を繰り返していた頃は、私と小さかった孫である私の息子のために、仕事帰りに颯爽とロードバイクを走らせ、苦手な料理を失敗したりしながらも頑張って「愛情たっぷり晩ごはん」を作りに通ってくれていました。
私が土日出勤の時は、孫をお散歩に連れて行き遊んでくれました。
オトンが来ると我が家がパァーッと明るくなり、笑顔があふれる。
息子も私もにゃんこたちも、優しくて可愛いオトンが大好き。
今でも息子は、オトンをじさまと呼び、たまに帰ってきては好々爺に癒やされると言っています。
長年独り暮らしだったオトンは、50歳を過ぎてから徐々に耳が聞こえ辛くなり、70歳を過ぎて補聴器を着けてもほとんど聞こえなくなりました。
学生時代から大好きだったロードバイクも、周りの音が聞こえず危険なので乗れなり、自転車仲間や飲み友達とも上手く会話ができず、家に引き篭もるようになってしまいました。
意欲も気力も体力もなく、ペットボトルの蓋すら開けられないくらい衰弱してしまったオトン。
娘である私は、大病をして手術と治療で体力が低下し、仕事も忙しく、心も不安定になり、暫くオトンの家に通えない時期がありました。
その間に衰弱したオトン。
自分で最低限の食料を買いに行き、少量食べ、TVをたまに観ていた様子。
兄が様子を見に行くと、その時だけはキリッとして、家の中には絶対入れなかったようです。
合鍵でオトンの家に入ると、ベットに小さく丸くなって寝ていた。補聴器を外しているので私の声掛けにも返事はない。
ごみ捨てもしておらず、家の中はグチャグチャ。
部屋だけでなく、お風呂も、トイレも、台所の流しも、人が住んでいるとは全く思えない状態。
泣きながら数日かけて大掃除をし、若い女の子のおしゃれな家のようになりました。
それからは、私自身の体調の良い時に『娘訪問介護』としてオトンの家に通い始めました。
食欲もない。お風呂や出掛けるのも強く拒否する。
オシャレだったのに髪の毛はボサボサ、髭も伸びて、まるで生気のない仙人のよう。
私は『娘訪問介護』に行くと、家事をし、すっかり無口になってしまったオトンに笑顔でいろいろ話しかけ、お昼には持参したお弁当を楽しく一緒に食べる。
「美味しいね!」と言いつつも、ほんの少ししか食べない。
散髪したり、何とか工夫してお風呂に入ってもらい、洗いたての清潔な服を着て爽やかな気持ちになってもらおうと奮闘した。
徐々に元気になり、おしゃべりを楽しむオトン。でも直ぐに寝てしまう。
「オトン元気になあれ!」といつも願っていました。
その頃の私の夢は
『自然が大好きだったオトンと「お散歩」に行くこと』
でした。
それから数年経ち、オトンと暮らしていたメダカと海老の助、貝太郎とサボテン家族を一緒に連れて、我が家で同居を始めました。
モリモリご飯を食べ、可愛い3匹の猫たち三毛猫三姉妹と戯れ、お風呂にも自らウキウキと入るようになったオトン。
いつも笑顔で、大好物の半熟目玉焼きのことを「ぎょくれつおちゃんちゃばやし!」にゃんこ次女ちゃんのことを「ももたんこぼの助さぶろっタコ君」呼んだり、意味不明な『オトンおもしろ語録』を言うほど元気になりました。
オトンよ、次女ちゃんは女の子だよ。「さぶっろっタコ君」て何?
部屋の窓から見える木々や花や鳥を眺め、窓を開け網戸にすると、風が緑の香りを家の中に運んでくれます。
しばらくして、体力のついたオトンに「お散歩に行こうよ!」と試しに誘ってみました。
「うん!行こう行こう!」と嬉しい言葉が返ってきてビックリして心が踊った私です。
『モーニングポタリング』の日は、
オトンは張り切ってオシャレして孫からプレゼントしてもらった黄色いネオンカラーのカッコイイキャップを被り、スニーカーを履いてさっさと玄関前で待っている。
私は慌ててタオルとティッシュと麦茶を入れた水筒を、手作りのお散歩バッグに入れ、お気に入りのデニムのキャップを被り、にゃんこ娘たちに「いってきまーす」と言って家を出る。
「モーニングポタリングにレッツラゴー!」
ふたりでガッツポーズして歩き始めます。
家から直ぐ近くの裏山へ父娘で散歩に行くようになりました。
いろんなコースがあり、始めは最短距離の菜園まで歩いてみました。すぐに息切れ。
段々と慣れて長距離歩けるようになり、毎日コースを変えます。
ある日は林道の急勾配の階段を登ってゼーゼーしながら頂上の芝生広場に着くと「登りきった!」と嬉々とした顔で麦茶を飲む。
山中を全て見渡せる長いスロープの道も歩く。
チャレンジ朝散歩が楽しい。
すれ違う人たちや、大好きなワンちゃんたちともあいさつする。
いつも新しい発見がいっぱい!
同居するまで聞いたことのなかった、オトンの思い出話を聞きプッと吹き出し笑い合ったり涙する。
花や、野菜の説明の書いてある立札を見ては「なるほど〜、こんな植物や、珍しいのお野菜があるなんて知らなかったね」と眺める。
夏は暑くなる前の涼しい早朝5時半から。冬は昼間の暖かい時間に。
毎日ではないけれど、ゆっくりいろんな景色を見たり鳥の姿や声、おしゃべりを楽しみながらお散歩する。
そのうち、裏山ではなく、小川が流れる小道を歩き、井戸の汲み上げポンプがある小さな池に行き、アメンボやオタマジャクシを観察した。
その後、ちょっと離れた喫茶店でモーニングを食べに歩いて行ってみた。
住宅街の児童公園を巡りにお散歩したら、道に迷ってふたりで笑いながらヒーヒー大汗かいて帰り道を探したり。
その時も児童公園、周りの家の外壁や庭のお花を眺める。
昔は畑が多かったこの地域も、ほとんどが住宅になり緑が減った。寂しいけれど、賑やかな子どもたちの声が心を明るくする。
『オトンが明るく元気になった。
私の夢だったお散歩にも一緒にも行けるようになった。』
信じられない。
オトンがいつも幸せそうな笑顔でいきいきしている。
一緒に楽しくお散歩できるようになったんだ。
長い時間がかかったけれど、こんなに幸せな時が来るなんて。
嬉しい、とても嬉しい。
まだ寝ている時間も多いけれど、お散歩は元気の源!
簡単な家事を手伝ってくれるようになり、ちょっとした買い物にも行ってくれる。
裏山には沢山の人たちが、家族やお友達と、ワンちゃんのお散歩、一人でのリラックスタイムに訪れています。
ゆっくり歩きながら四季折々の花や緑の香り、すれ違う人達の笑顔を楽しむうちに、オトンは更に元気になっていきました。
お散歩効果で、ご飯も私より沢山食べる。野菜嫌いも克服した。
汗をかくので嫌がっていたお風呂にもウキウキ入り、体の調子が良いと言う。少し日焼けし肌もツヤツヤ。
すれ違う人たちと私の会話に混ざるのも「聞こえないから」と作り笑いをして離れて見ていたのが、一緒に楽しく話せるようになった。
ある日オトンは「海に旅行に行きたい!」と言い出し、
息子が子どもの頃、親子三代で毎年行っていた、海旅行に8年振りに行けた。大人になった息子もとても楽しそう。
私は感動して江ノ電の中で、オトンと息子の写真を撮りながら、笑顔で泣いた。
オトンは、足の早い息子や私よりもタッタカタッタカ早足で海へと歩く。
青空と海の境界線に沈みゆく夕陽を眺めながら、丁寧にドリップしたコーヒーを3人で飲む。
早朝5時には「海にお散歩に行こう!」と起こされる。
浜辺で見る日の出は最高に美しかった。
念願の落語を聴きに浅草まで行くこともまでできた。
聴こえないけれど私が下手な筆談書き、噺家さんの迫力で目がキラキラしていたオトン。
歩き疲れているはずなのに、浅草で食べたいと言っていた鰻も、更に沢山歩いて鰻屋さんでぺろりと食べた。
流石に帰宅する前には膝が痛いと足を引きずり、私が脇を支え、傘を杖代わりにして歩いていた。
同居を始めるまでは、ご飯を幼稚園児のお弁当くらいの量しか食べれなくて、やせ細っていたのが信じられない。
今では少しお腹が出ている。隠しているみたいだけど、バレてるのよ、オトン。
オトンは「あそこにもここにも行きたい、そのためにモーニングポタリングで足腰鍛えないと!」と目を輝かせている。
お腹も引っ込めないとね。心の中で私は笑っている。
最近は、裏山でのラジオ体操も始めて、父娘でやっている「じゅんみはとオトンの朝ラジオ」の収録も裏山の澄んだ空気の中やってみた。
私より張り切るオトン。
ラジオ体操の後、裏山を下ったところにあるカフェでモーニングを食べ、店員さんの優しさでまた笑顔になった。
晴れて気持ちの良い朝は「早くモーニングポタリング行こう!」と起こされる。
いろんなことに挑戦することが楽しくて仕方ないようだ。
「お散歩の力ってすごい!」
オトンのハッピースマイル大好きだ!
これからも沢山モーニングポタリングで歩こうね!
「お散歩」は、車やバイク、自転車とは違う景色が見える。
それぞれ見えるもの、感じることが違うのも楽しい。
ゆっくり歩くことで、自然の優しさに全身が包まれ、心が穏やかになる。
私も自然の一部なのだと感じる。
「子どもの頃に祖母と歩いた畑の小道。」
「今ではすっかり大人になった息子が幼い頃に、小さな小さな手を繋いで公園まで歩いた道。」
「オトンと私、それぞれ歳を重ね、再び一緒に暮らすようになってから歩く裏山へさんぽ道。」
「ひとりで星を見に、ひんやりした空気の中で今日を思い、明日を願い、静かに歩く夜道。」
いろんな道がある。
普段気付かない小さなことに感動して心が華やいだり、大きな自然の豊かさに、日常の悩みや苦しみから開放され癒される。
どの道を歩いてもゆっくりとやわらかい笑顔の花が咲く。
たった10分でも、長いお散歩も、
晴れた日も雨の日も雪の日のお散歩も。
いつかは楽しい思い出の一つとなってゆく。
「お散歩」が好きだ。
・・・・・
長い長い長い記事を最後まで読んでくださり、ありがとうございます!
夢だったお散歩
お散歩で元気になったオトン
朝ラジオまで始め「おじいちゃんになってこんなに楽しくて嬉しいことがあるんだね!」とコメントを読んでは喜んでおります。
私もオトンと一緒にお散歩でいきいきと!
これからも、おとぼけ父娘をよろしくお願いします。
みなさんへ
青空に輝く太陽のような感謝の気持ちを込めて。
じゅんみは
一一一一一一一一
文・絵・写真・歌
じゅんみは
『さんぽ道』Duo.ver
・・・・・
こちらのマガジンで今までの
「モーニングポタリング」
おとぼけ父娘の朝散歩日記が読めます!
↓
こちらは、不定期にやっている「じゅんみはとオトンの朝ラジオ」のマガジンです。
オトンのフリートークでは何が出てくるかわからない?!
朝でも昼でも夜でも、聴くとクスッと笑ってもらえるようなおとぼけラジオになればと思っています!
↓
・・・・・