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DX成功のためにUXが重要な理由

今回は、昨今よく耳にするDX(デジタルトランスフォーメーション)において、UXが重要である理由についてお話ししようと思います。あくまで私個人の考えですが、少しでもビジネスの場面で役立つことがあればうれしいです。

DX・UXとは?

DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは、単純にデジタル化することを指すのではなく、デジタル化することで、人々の生活をより良いものへと変化させること。既存の価値観や枠組みを根底から覆すような、イノベーションをもたらすことを指します。

UX(ユーザー・エクスペリエンス)とは、ユーザー体験のことです。ユーザーがサービスや商品から得る一連の体験を指しています。
サービス・プロダクト開発ではユーザー中心のUX戦略によって、どんな価値を生み出し、その価値をどう伝えるべきかが重視され、そのことがビジネスグロースの重要な要素になると考えられています。

DX化に際しても、単純にデジタル化するだけの認識であればUXを考慮する必要もないように感じるかもしれません。ですが先に述べた、DXを正しく解釈した認識に立つと、デジタル化することでより良いものへと変化させ、イノベーションを起こすためにはUXが必要不可欠であると言えます。その理由については、後述します。

アメリカのUXリサーチの実態

ここでは、UXの先進国であるアメリカの実態についてお話しします。
2022年に行われたuser interviews社の「THE STATE OF user research 2022」調査によると…
 
・専任のUXリサーチャーが「いない」と答えた企業は6%
・5人に1人が自社組織にResearch Ops Managerがいると回答
・44%が部門横断型で従事し、平均的に見ても1部門以上を兼務

上記のような現状が見えてきます。
調査の対象は一部の先進的なIT企業だけでなく、多様な業種・規模の企業に対して行われています。つまり、アメリカの企業ほぼすべての部門にUXリサーチャーが在籍していて、とてもポピュラーな役職であると言えます。

DXにおいてUXが重要な理由

DXにおいてUXが重要である理由については、以下の3点が考えられると思います。
 
・デジタル化してもユーザーに使われないものでは意味がないから
・開発における失敗のリスクを減らすことができる
・UXは総合的に見る必要性があるから
 
まず、1つ目。DXは単純なデジタル化のことを指すわけではなく、人々の暮らしや環境を良くするために行うものなので、使われないものでは意味がないということが挙げられます。
そして、2つ目。UXリサーチによって、サービスやプロダクトが「ユーザーに使ってもらえるものなのか?」を事前に検証することで、開発における手戻りの回数がグッと減ることが挙げられるでしょう。生産性が高まり、結果的に時間とお金の節約につながります。UXは、サービスなどのリリース前に開発者が製品を再調整する時間を最大50%短縮するということも示されています。
さらに、3つ目。UX改善のためには、サービスに携わるステークホルダー全体を見る必要があるからです。日本では、顧客観点でのリサーチばかりを行う傾向があるように感じますが、サービスの改善を行うためには、ユーザー、制作者、サービスの運用者など多角的な観点でのリサーチが大切です。
例えば、お掃除や習い事のマッチングサービス。この場合、利用ユーザー以外に、お掃除をする人や先生に加え、サービスを運営する事業者もいます。これらどの観点もバランスよく見ていかないと全体の改善にはつながりませんよね。また、ハードウェアを売る場合も同じことが言えます。買う人だけではなく、店舗で販売するスタッフや工場で生産に携わるスタッフなど、大きな枠で見ていかなければならないんです。
つまり、DX化の成功のためには、関わる人すべての体験(UX)も検証(リサーチ)し、最適化し続ける必要があると考えています。

組織全体でUX成熟度を高める必要性

UXへの取り組みは、UXリサーチャーなどの専門家だけが行うのではなく、会社全体で取り組む必要があります。
UXにおける大切な考え方にHCD(Human Centered Design)というものがありますが、エンジニアや営業担当などを含めた組織の全員がこの考え方を熟知し、UXに取り組んでいる状態。いわゆる「UX成熟度」が上がるとはこの状態を示していて、これこそ組織が目指すべきUXのゴールだと考えています。
 
「UX成熟度」とは何かというと、組織全体でどの程度UXに取り組んでいるか、成熟度を測る基準のことで、6つの段階があります。
以下が一般的に考えられている各段階の達成条件です。
 
1. まだ何も取り組んでいない状態
2. ようやく取り組み始めた状態
3. UXが重要だと考え一部で実装を始めているものの、一貫性がない状態
4. UXが役に立つと信じており、その価値を認めている状態
5. UXが戦略の中心となっている状態
6. 組織のDNAとして根付いている状態
 
「UX成熟度」の段階が上がっていくほど、ビジネスリスクはおのずと低くなっていきます。つまり「UX成熟度」は、組織を支援してくれるフレームワークだということです。
UXのゴールを達成するためには、この「UX成熟度」を高めていくことが大切だと考えられます。
UX成熟度についてこちらのイベントの記事で一部私の方で説明してますので、ご参考にしてください。

既存事業のUX改善がDX成功につながる

今回は、DX化を適切に行うために、UXの観点をあわせもち、なおかつ組織全体で取り組むことが重要だということをお伝えしてきました。最後に、UX実践のために意識しておきたいことを書き留めて置こうと思います。
UXというと、新しいサービスや革新的な事業の立ち上げなどで活用される場面が頭に浮かぶと思います。しかし、私のこれまでの経験では、もっと日常的な場面、どちらかというと、みなさんが普段のビジネスで日常的に関わっている、既存サービスやプロダクトにこそ必要な取り組みなのではないかと考えています。
 
過去にGAFA企業に在籍されている方にお話を聞いたことがあるのですが、実はGAFA企業でも、既存サービスのUXリサーチは常に行っているそうです。その理由としては、既存サービスをリサーチし続けていく中で新しいニーズを見つけたり、改善していくことで新しい価値観やイノベーションが生まれたりすることがある、と考えているからだそうです。これはGAFAに限ったことではないと思いますし、普段私たちが携わる目の前のビジネスに、良い変化をもたらし続けることができる理想的な向き合い方だと考えています。
 
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
今後の記事では、海外のUXリサーチの事例、Research Ops Managerという役職などについてご紹介していきます。今後もお付き合いいただけると幸いです。

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