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『富士山ブック2024』東北の高校生の富士登山・取材インタビュー2021年参加:福地理史さん第1弾

2024年5月に山と渓谷社から刊行されました『富士山ブック2024』にて、「東北の高校生の富士登山」についてのご紹介いただきました。その中で過去参加者へのインタビュー取材を実施いただきました。今回は2021年に参加した福地理史さんのインタビューを2回に分けてご紹介します。

『富士山ブック2024』(山と渓谷社)

インタビュー:
福地理史さん(東京大学・2年生 19歳 / 東北の高校生の富士登山2021参加)

インタビュアー:
谷山宏典氏(執筆・編集)/佐々木 亨(山と渓谷社編集部)

東北の高校生の富士登山2021(富士山頂上・浅間大社前)

谷山宏典氏(以下、敬称省略)
:富士山のお話をお聞きする前に、福地さんが大学でどんなことを勉強されているか?どういうインターシップをされているか?など現在の福地さんの身の回りのことを少しお伺いしてもよろしいですか。

福地理史さん(以下、敬称省略)
:私は今、東京大学の教養学部理科一類の2年生です。
東大は最初の2年間が教養学部全員一律で教養学部という形で、一般教養の勉強を中心にしますので、今大学で具体的に勉強していることとしては幅広くいろんな知識を深めていこうというようなことをしています。
2年生の後半からは、より専門的な各学部に配属されて専門的なことを勉強していくのですが、私は農学部に進学し、将来的に植物工場や露路栽培の畑を広く経営したいと考えており、「農家になりたい」と常々周りには言っております。
後期以降はその勉強をしていこうと思っています。
インターンシップ等に関しましては、今朝ちょうど6時ぐらいにタイから羽田に帰ってきたところなんですけども、農機メーカーのKubota社と大学との産学協創事業という形で開催されているインターンシップで、10日間ほどタイに渡航させていただきまして、現地の農家であったりKubota社の現地法人であったりとか、そういうところを視察させていただきました。

谷山:インターンシップって就職活動を意識した大学生が3年生ぐらいになってやるイメージなのですが、今は福地さんのように、大学の勉強をしながら1年生からインターンをされている方が多いのですか?

福地:そうですね、決して多くはない気はするのですけれども、一定数いる気はします。ただ、私の事例は比較的特殊だと思います。
私は就職を考えてインターンに参加しているというよりは、もっぱら技術的なところに興味があって、農機や農業の実態を間近で見たいという思いでインターンに参加していますので、基本的に大学卒業後の就職はほとんど考えていません
起業という形で自分の事業をスタートさせようかなというふうに思っております。

谷山: Kubotaがインターンを募集していて、それに福地さんが応募されたという形なんですか?

福地:はい、そうなります。

谷山:グローバル企業のKubotaだからこそ、学ぶべきこともすごく多そうですよね。

福地:農業関連企業の中では売上は断トツで、年間の売上が兆に乗るのはおそらくKubotaぐらいなんじゃないかなと思うので、そういう資本力、資金力がある大企業ならではの力のかけ方や新しい事業の始め方で、今までの事業の存続のさせ方や展開の仕方というのがあることを知り、小さい企業が自分の持っている技術を活かしてどうやっていくか?というのとはまた違った戦い方があるんだなということを学ばせていただきました。

谷山:自分の卒業後のことも考えて、そこから逆算をして、今、何をするべきか?何をしたいか?ということを明確にしながら学生生活を過ごしていることが、今のお話からすごく伝わってきました。

谷山:では次に、福地さんが高校生のとき、2021年に東北の高校生の富士登山に参加されたときのことを、
これからお伺いできればと思います。
そもそも東北の高校生の富士登山に参加したのは、どういうきっかけだったんですか?

福地:当時宮城県の仙台第二高等学校の山岳部に所属しておりまして、「富士山に3,000円で登らせてもらえるらしい!」という噂を聞いて調べまして、そんな企画に行かないわけにいかないよねという感じで、同じ山岳部の同期や後輩を誘って一緒に行こうぜ!と参加させていただきました。

谷山:「噂を聞いて」というのは、誰からどんな話を聞いたのですか?

福地: 高校の山岳部の先輩が、2020年ぐらいに「こういう企画があるらしいから応募してみよう」と応募していたらしく、残念ながら行くことができなかったらしいのですが、そういう企画があるんだよと教えてくれました。

谷山:その先輩は参加の応募人数が多くて、残念ながらこぼれてしまったのかもしれないですね、、、
山岳部の先輩から話を聞いて、ネットで調べたら、応募フォームにたどり着いたということですか?

福地:先輩から聞いて、ネットで調べて内容を読んで、なるほどそういうコンセプトかということで、ぜひ行ってみようという形でフォームにたどり着きましたね。

谷山: 高校の山岳部ではどんな山に登っていたんですか?東北の山がメインだとは思いますが、北アルプスとか、富士山とか、別の地域の山には登られていたんですか?

福地:それはなかったですね。
コロナ禍というのもあって、長距離の移動とか泊まりの山行とかがかなり制限されている状態で、テント泊山行すら高校の山岳部時代には一度も行えなかったというような状態です。
ほとんどが宮城県内の日帰りで、サクッと登って帰ってくるというような形で、高校の行事で年1回1年生を全員岩手山に連れていく機会があり、そのインストラクターとして山岳部が引率していましたので、計3回岩手山には登りに行きました。
高校の頃は、ほとんど県外に出ることはなかったですね、だからこそ、アルプスとか富士山への憧れはかなり強かったです!すごく遠くて高い存在です!

谷山:富士山への憧れと、機会があれば行ってみたいなっていう思いがあったところに、東北の高校生の富士登山の情報が入ってきて、しかも3,000円で行ける!もうこれは行くしかないだろうって周りの友達と盛り上がって、応募されたという感じになるんですかね?

福地:その通りですね。

谷山:富士山は日本一高い山なので、人によっては「自分に登れるかな?」とか不安を感じる人もいるかもしれないですけど、福地さんの場合は、早くその日になってほしい!待ち遠しい!ワクワクする!っていうポジティブな気持ちで当日まで迎えられた感じですか?

福地:そうですね、本当にひたすら楽しみでした。
山に行きたいって常に思って暮らしていたので、ずいぶん張り切って準備して、ずっとワクワクしてという感じではありましたね。

谷山:実際に富士山に登ってみて、特に思い出に残っていることや印象に残っていることってどんなことがありますか?

福地:まず一つ大きかったのが、ふもとの富士宮まで行ったときに見えた富士山があまりにも大きかったという印象です。
宮城県には高くても1800メートル前後の山しかないので、東北にない景色というか、視界のほとんどを富士山が占めるような、あの迫力が印象的でしたね。
「今からあそこまで行くの?えー、なんだそれ?」っていうような、受け入れられないくらいの驚きがありました。
とにかく「富士山ってこんなに大きいんだ!」っていうのが、一番大きかったですね。
登っている間とか、スタッフの皆さんと一緒に滞在している間に関しては、自分の人生や他の人の人生について見つめる時間をたくさん設けていらっしゃったのが印象に残っています。
帰ってきてから親とかにどんな話をしたかな?と思い返すと、その話をたくさんしていたなって思います。
「これこれこういう生き方があるらしい!自分も何となくこれしかないって思っていたことも、全然そんなことない!」みたいなことを、ひたすら話していたなと思います。

東北の高校生の富士登山2021(富士山山頂剣ケ峰)

谷山:自分以外の人の生き方のいろんな話を聞いたり、自分と比較してみたりしたと思うんですけど、特に誰が印象に残りましたか?

福地:田部井進也さんの今までの経歴とかをお聞きしたときに、彼はなかなか面白いルートをたどっていらっしゃるなと思いました。
失礼な言い方ですけど、世間的に見たら一時的にドロップアウトしたような形の時期もあったのかなというふうに思うんですけれども、それでも今こうやって、若者の目をキラキラさせられる大人であるっていうのが、この人のかっこよさだなと感じました。
本当に今も、彼は憧れの大人の一人ですね!

谷山:そんな話を聞いたら、進也さんがめちゃくちゃ喜びそうですよね。

福地:嬉しいという感情を目の前で爆発させてくれるのも、進也さんのすごく素敵なところなんですよね。
進也さんの思っていることを、建前とか本音の使い分けももちろんなんですけど、本音でぶつかってくれるっていうのがすごく魅力的だなと感じています。

谷山:福地さんのそれまでの人生で親御さん以外にそういう大人の方と接する機会っていうのは、ほかにはありましたか?

福地:なかったですね。
そもそも小学校→中学校→高校と進んでいく過程でいろんな大人と接する機会ってほぼないと思っています。
接するという意味では、お店とかでちょっとやり取りみたいなのはあるかもしれませんけど、自分の思っていることとか相手が思っていることとか、そういうのをやり取りしてなるほどってなるような機会は、あまり設けられてないのかなとその時に痛感しました。
今はキャリア教育とかが流行ってきてはいますけども、この東北の高校生の富士登山もそういうことの一部になるんだろうな!と思ったりもしました。
本気でぶつかる機会がそもそもない現状の中、東北の高校生の富士登山には、普段はいろんな仕事をされている方がスタッフとして参画されているので、それこそお医者さんであったり、看護師さんであったり、ガイドさんだったり、写真家であったり、いろんな職の方と話をするという機会が高校生にとっては本当に貴重なので、それがすごく刺激的だったというのはあると思います。

谷山:この登山を通じて、どんな場面で田部井進也さんの本気を一番強く感じましたか?

福地:実際に富士山に登っている時ではなく、行きのバスの中で、「なんで3,000円で登らせるのか、実際どれぐらいお金がかかっているのか、どんな人の尽力があるのか、どんな苦労があるのか、何が大変なんだ」ということを、全部話してくださったんです。
それを聞いた時、「大人の本気ってすごいな!そこまでやるんだ!そこまでできるんだ!」っていうことをひしひしと感じました。
それが一番かっこいいと思う要因だったかなと思います。

谷山:最初は何も知らずに、3,000円でラッキーって思って応募したけれど、実はこの1人3,000円で高校生を富士山に連れて行くには、大人たちがこんなことをやってきたんだということを、プロジェクトリーダーである田部井進也さんからバスの中で最初にきちんと説明を受けるわけですね。
その説明をしないという選択肢もある中で、あえて高校生に最初に伝えるということは、そこにも進也さんが伝えたい思いがあるからでしょうね。

福地: きっと、そうだと思います!
それが今になって、本当にしっかり伝わっているな!伝え方としてすごいなっていうふうに思います。

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続きは、福地理史さんインタビュー第2弾で。

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