心が跳ねる桑田佳祐の音楽
先日
姉の家で父を囲み楽しいひとときを過ごしました。父は現在82歳、ステージ4の癌と闘っています。癌の数値を抑える注射を月1で打つ治療を続けて早2年。かつて母が癌に罹った1996年には想像が及ばなかった癌治療の進化に驚くばかり。さらに、高齢者の癌は病気の"巡り"も緩やかで、父は自宅で自分らしい生活を続けながら闘病生活を送ることができています。改めて医学の進歩に対する心からの敬意を新たにする日々
父は健康第一/自愛優先をモットーに趣味の卓球に励んでいます。趣味というより"生き甲斐"、それほどまでに夢中です。父と会う約束をするときは、とにかく卓球のスケジュールを聞くが原則
昨日は難しい相手だったのに
勝てたんだよ
対戦相手にも労われてね
そう話すときは
病気のことを忘れているかのように
幸せそうです
癌は残念ながら骨へ転移をしているため、発見されたときは既に手術ができない状況でした。残りの人生は癌と共に歩む、その一択です。骨が脆くなっているので骨折は御法度と心得ながらも、昨年は3回転んだり倒れたりを繰り返しました。その都度、肝を冷やしながら骨折を回避する父は強運の持ち主...正しく言うなら、倒れるときには何故か偶然にも看護師さんや介護士さんが近くにいたり、姉の目の前で倒れたり。父の身体は床や地面へダイブすることなく、誰かの保護下でナイスキャッチされる幸運に恵まれています。そのため、大好きな卓球をほぼ休むことなく週2〜3回こなしておりパッと見は元気な高齢者なのです。
さて
久しぶりに姉の手料理をいただきます。食が細くなった父のために質の高い食材が少しずつふるまわれます
多かったら残していいんだからね
姉がそう伝えて
"うん、分かった"と頷く姿は
父が姉の子供になったような
微笑ましい光景
"今日は娘が作った料理を美味しく食べるんだぞ''という父の気概を妹は垣間見ました。ゆっくり噛み締めるように食事と対話しているようです
大好きな海老ピラフはさすがに
食べきれないかもしれない
しかし そこで深呼吸
ゆっくり息を吸って 吐いて
再び食べ始める父
姉への感謝と持ち前の負けん気根性が マリアージュ
完食したのです
美味しかった
ご馳走様
食事が終わるとソファでお昼寝
今度は私の出番です。卓球で疲れた脚をマッサージします。強い力は求めません。柔らかく包むように、ゆっくりじっくりツボを押します
あぁ 気持ちいい
リップサービスもあるでしょうが
とりあえず褒めてくれました
ウトウト微睡む父がふと呟きます
桑田佳祐の曲が聴きたい
それは 意外なリクエストでした
母が元気だった頃、私はサザンのコンサートへ行った延長線上に自宅でよく桑田さんの曲を聴いていました。やがて、自宅のリビングでサザンの曲が流れることは日常の一部になっていきます。月日が流れ、母が逝き私が結婚して父が再婚をしてからはサザンの音楽が家族の話題に上らなくなりました
良い曲いっぱい歌ってるよな
曲名が思い出せないけど
元気が出るんだよな
桑田佳祐の歌声
父は徐に起き上がりながら
言いました。姉がタブレットで次々に桑田さんの曲、サザンの曲をタップしていきます
悲しい気持ち
BAN BAN BAN
ミス・ブランニュー・デイ
愛の言霊
LOVE AFFAIR 秘密のデート
希望の轍
太陽は罪な奴
勝手にシンドバッド
どの曲を聴いても父は終始ご機嫌
"良い曲だなぁ 歌詞も洒落てる"
遊び心満載の歌詞と明るいリズム
さすが桑田佳祐
J-POP界の巨人
まるでエネルギーがチャージ
されたかのように
元気が湧いてきます
その場の空気が
桑田佳祐の色に染まりました
桑田さんて紫綬褒章
受賞しているんだよね
その時のコメントが忘れられない
この度はこのような由緒正しい賞をいただきまして、身に余る光栄であるのはもちろんのこと、私のような者が本当にいただいてよいものかと、非常に驚いております。
サザンの音楽
桑田佳祐の音楽を知っている者なら
謙虚なコメントの真意が分かります
デビュー以来、ずっと目立ちたい
一心で下劣極まりない音楽をやり続けてきた私が、このような高貴な章をいただけるならば...
桑田佳祐の真骨頂
デビュー以来
日本一真面目にお下劣な歌詞を
洒落た抑揚で歌い上げる
美しいメロディとロックなビートで
ファンを喜ばせてくれる
世の女性を遠回しに揶揄しても
粋なサウンドで爽やかに吹き飛ばす
悲しい別れは前向きに
真っ直ぐな愛の歌が心に沁みる
数多くの引出しから放たれる
奥行きのある錆びつかない音楽
身体が 心が 跳ねます
ありがとう 桑田佳祐
ありがとう サザン
父の日に幸せホルモン療法
癌細胞を小さくする魔法
これからはSpotifyで注入
どうか
桑田佳祐の魔術が
父の痛みを和らげてくれます
ように頼みます
スキップビートはお下劣の神曲
Junko Summer
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