見出し画像

海外に行くと透明人間になる

親日家の人がいたら手放しちゃダメ。

10数年前、夫の転勤先のアメリカで現地にいる日本人に言われたセリフ。

本当の親日家は少ないよ。
駐在生活の入り口は現実から。

良かった。

夢から入らないで。
この言葉、的外れ感ゼロだから

沁みるーーー

生活のスタートは借家の不具合からのサバイバル


英語が喋れない。
挨拶やカタコト、旅先の買い物くらいなら身振り手振りでできる。
生活するにあたっての英語は別。

サバイバルイングリッシュを学ばないと

出発前のセミナーでもらったパンフレットに書いてあった。

初めて使ったサバイバルイングリッシュは

冷蔵庫の下から
茶色い水が出ています。
配管を点検して修理してください。

Junko Summer

だった。
パンフレットの例文に、なかった。
台所の床が茶色くビタビタ。

問い合わせしても配管工は来ない。

今日は買い物に行きたいのに、配管工がくるかもしれないから家から出れないよ。

ソワソワソワソワ

来ない。

....来たのは10日後。
その後、チェックしにきて

また数日。

家主がケチなもんだから無駄なお金を使わないよう、のらりくらり時間稼ぎをした日数がこれ。

英語力があったなら。
配管工なんて調べなくてもすぐ分かるだろうし、毎日しつこいくらいに電話して

いつくるんですか!
ずっと待ってるんだから、
台所の床びしょびしょなの!

と、息巻いて言えればいいけど。

小心者だから、一度の電話だけで胸つぶれる思い。

何を言うべきか、しっかりメモして
ちょっと音読して、追加の伝わりやすい英単語を書き添えて。

はーーーー。

外国人ってわかっているから
相手に舐められてる。

海外生活のスタートはちょっとダサかった。

マグルの私、アメリカで透明人間になる

一人息子を現地校に入れることにした。期間限定の海外生活だから、現地の文化を味わいたい。

入学の手続きは夫に任せて、
私の任務は実際に通いはじめてからが勝負。

保護者会がツライ。
parent nightって言うらしい。
共働きが基本だから、保護者会は夜に開催される。

ハリー・ポッターの魔法で石に変えられたんじゃなかろうか。

それくらい身体が強張るし口がカラカラ。

周囲のアメリカ人の親御さん、
私のこと見えないみたい。

透明人間みたいに最後まで
視線は合わなかった。

担任の先生には私が見えるらしい。

先生が何やら紙を配りはじめる。保護者一人一人を回りながら。

その紙には息子の筆跡でこう書かれていた。

なにをいっているのかわからない

わかるのはアイドントノウ

がんばる

Junko Summer Jr.

....泣けた。

この空気、ツライわ。
息子が頑張っている現場を確認できたのが収穫。

仲良くしてくれる日と距離を置く日があるみたい

唯一、仲良くしてくれたアメリカ人がいた。その家族のおかげで、

「アメリカに来てアメリカ人とプライベートで遊ぶ」

という貴重な体験ができた。

現地校に居場所がなかった息子と私にとって有難い存在。
アイルランド系アメリカ人だった。

英語が分からない息子なのに、たまに遊びに誘ってくれた。

北米では友達同士の遊びを
playdateって言うらしい。

何曜日ならplaydateできるかしら?
食べ物アレルギーがあるなら
遠慮なく言ってね!
誕生日パーティーをするの、是非来てね〜

gmailにはざっくばらんな誘い文句の言い回しが溢れていて

これがサバイバルイングリッシュだ!とたった数行のメールをしげしげと見つめていた。

メールの結びにCan't wait!!
ってよく書かれていた。

待てません→楽しみ過ぎるから→楽しみにしてるよ〜

という口語。
looking forward to seeing you
は丁寧な表現のようで友達同士ではそんなに使わないらしい。
主に担任の先生など目上の人に使用していた。

不定期に誘ってくれて、その御礼でplaydateに誘う。
日本なら、そのままママ友になったりするんだろうけど言葉の壁が...

距離感は近いような遠くない、くらいの間柄。

でも、学校行事や保護者会で見かけるときは少しよそよそしかった。
日本人と仲良くしているのはあまり公にしない方がいいのかな?

真相は今でもわからない。
アメリカ人同士の事情があるのかも。

透明人間になったり元に戻ったり。

私のアメリカ生活は何かと忙しかった。


せっかくアメリカに来たんだから楽しんだ方がいいよ

アメリカ人のコミュニティに入って苦労しているのは私だけではなかった。
同じ現地校には10人くらい日本人の子がいた。

10世帯の日本人で「日本人会」が構成されており、図書館ボランティアや文化祭のご飯炊き出しなど現地校に子供が馴染めるよう親達が奮闘する機会が年に数回巡ってくる。

日本人会のあるお母さんが言った。

「せっかくアメリカに来たんだから楽しんだ方がいいよ」

「留学とか自分の意思で来たわけでもないのに、イキナリ現地校は
しんどいよ」

....とても救われた一言だった。

何故なら、その人は英語が堪能な帰国子女だったから。

帰国子女の人でも苦労している。

そりゃ、私が石になっちゃうわけだ。

よかったーーー

そこからの私は生活に慣れるため、という目的から
「アメリカにいる間にやりたいことリスト」を優先するようになる。

行きたい場所

食べたいもの

洋服買いたい

英語力を磨くことよりも、思い出作りに精を出す。

突然の帰国辞令、日本に帰りたくなくて毎日泣きながら荷造りをする


アメリカ生活が間もなく2年に差し掛かろうとする時期

突然帰国辞令がでた。

いきなりのブツ切り!

あれ、5年って聞いてたけど?

やっと慣れてきて、お楽しみはこれからだったんですが。

会社員の宿命です。

夫は先に日本へ帰国。

息子と私、片付け諸々で残る。

アメリカ生活で色々すったもんだした
私だったけど、

日本帰りたくない
せっかく慣れてきたのに
もったいない

ポロポロポロポロ
涙が止まらない。

アメリカ生活が楽しくなっていた。

たとえ、たまに透明人間でも。

アメリカ人が優しくしてくれた

お誕生日会をしてくれた
sleepover(お泊り)誘ってくれた
誰かわからない近所のセレブパーティーにちゃっかり参加してにわかSATCしてコッソリ帰った

アメリカって面白い。

アメリカって楽しい。

配管工はplumber

全てが糧になって

C’mon baby,アメリカ

どっちかの夜は昼間

Junko Summer

この記事が参加している募集

#この経験に学べ

53,973件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?