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メディアリレーション


メディアリレーションは広報業務のうち、最初に立ちはだかる壁であり、永遠のテーマです。広報の仕事=メディア露出という誤解も消えませんが、必要なスキルセットであることは間違いなく、できるようになるまで量をこなす時期は必要です。

一方、アップデートを怠るとすぐにその感覚は衰えます。私は一定の期間、メディアの方とコミュニケーションをとらずにいたり、後述するアポ前の作業をせずにいると、何となく「まずいな」という感覚に陥ります。特に、他の作業からスイッチしたばかりだと「あれ、何からやるんだっけ」となる事もあります。

今回は、そんな時に見返すためや、今年2月にカンブリア宮殿の放映があったので、企画化にたどり着いた過程、日頃からどんなことをやっていたのか書き留めておこうと思います。

日頃からやっていること
自社が対象となる得る媒体を、とにかく読んで・見ています。続けることで、媒体の特徴やどのような情報が必要か理解が進みます。

どんなふうに見ているか
・新聞

世の中で起きていること、同じ業界や競合他社の記事はどう掲載されているか、同じレイヤーの会社は何をフックに掲載されているか、記事とプレスリリースの照らし合わせなど、逆説的にポイントをチェックできます。
〝新聞”とひとまとめにいっても、各社・各記事で論調は異なります。社説と政治、法改正のトピックではそれらが明確です。
なので、新規性を持つスタートアップを応援する傾向にあるか・グレーな部分を暴きにくるかを見極めて対応する必要があります。圧倒的に前者が多いのですが、会社やサービスが打撃を受けることなど構わず、曖昧なものに明確さを追求する記事があるのもまた事実です。また、創業初期であれば、記者としてのダメージとならないよう「この会社は潰れないか」もチェックしているはずです。

・テレビ
経済番組を中心に見ています。どんな番組か把握できていれば、録画かオンデマンドで2倍速で見ます。自社だったらどんなテロップになりそうか、書き出してみるとイメージしやすく、企画がぼんやり見えてきます。社会トレンドとユーザーの動向が合致した時が提案するタイミングですが、情報の鮮度が落ちるのも早く、常に社内外の情報にアンテナを張って置くことが重要です。

・Web媒体
IT系の情報や記事を中心に、タイトルにサッと目を通し、読みたい記事もまたサッと読みます。記名がひろいやすく、過去に自社のことを書いていただいた記者・編集の方の記事は読んでいます。

・経済誌
前年以前のテーマをチェックし、再現性が高い特集や、アップデートの余地がある企画を把握しておきます。連載以外では、今どんなことを追っているか聞いてしまったほうが早いです(聞き方注意)。編集ポリシーや記者の個性がいちばん強い気がするので、相性が影響するかもしれません。インタビュイーとなる創業者・社長の人柄や振舞もよく見ているように感じます。

▼ 最近の例:弁護士ランキングを共同企画


アポがとれたら
カンブリア宮殿を例に、やったことを時系列でまとめてみます。毎回ここまで固めるわけではなく、余白を持って一緒に作っていくスタイルが私の理想です。

【アポ前にできていたこと】
・カンブリア宮殿がどんな番組か・必要なシーンとその数を把握(予測)
・近しい業種、フェーズの会社の過去放映を見ておく。IT系の中でもBtoBは数社だけでした。

【数日前〜当日】
・企画書作成。この時は5枚でした。わかりやすさが重要なので、番組が成立しそうかは瞬時に判断されます。凝縮した情報 ≒ 放映できそうな内容をコンパクトに収めるイメージです。
・社長に同席をお願いする。カンブリア宮殿は社長の登場シーンやコメントが多く、放映後に「座右の銘」というコーナーもあるので、人となりを知ってもらえるようにしました。
・当日(プレゼン)のファシリテーションをイメージしておく。
・カンブリア宮殿の制作に触れている書籍「テレ東のつくりかた」も読んでみました。

【当日〜クロージング】
・アポの数時間前は予定もブロックしています。準備・練習・集中。
・「(撮影になった場合に)できないことはない」旨をそれとなく伝える。
・この会社、この広報とだったら番組が作れそう、という印象を残す。面接のようなものかもしれません。
・情報が不足していないか、企画会議や検討の土台にあげられそうか、それとなく聞いてみる。補えるようであれば、すぐに追加で送ります。

【撮影時期】
・放映情報が漏れないように注意しながら、協力が必要なメンバーにとにかくお願いする。
・制作スタッフの電話、メールには即レス
・撮影の立ち合い
・撮影中も新規の提案(「こんなシーンもできます」)を重ねていきました。

撮影が始まった12月から放映された2月までの約3ヶ月、やりきる強い気持ちを持ちながらも、不安がなかったわけではありません。12月は撮影シーンを調整しきれるか、1月には視聴率がとれるのか、2月には体力が持つかな、といった心境でした。

そして放映はこちら。(バックナンバー、ぜひテレ東BIZでご覧ください!)放映後は各事業部などからポジティブなフィードバックがもらえました。


現場の努力の尊さ

冒頭に、量をこなす時期は必要と書きましたが、これを乗り越えられずに心身をすり減らしている広報担当者がいることもまた事実です。
どれくらい難しいか表すと、経済に大きな影響をもたらす業界のトップ企業や、斬新な施策を打ち出し続ける企業でもない限り、社名も知らない・興味も持たれていないところからスタートします。インバウンドの取材はほぼ皆無ですし、取材誘致に繋がったとしても企業の思い通りに記事がでることはありません。

また、掲載に至った時に広報の努力は評価すべきですが、企業・事業の成長に依存する部分も大きいので、掲載数は目標設定に置かないことをおすすめします。評価者が実務をまともにやったことがないとすれば、なぜ掲載がとれないのか、到底わかるはずもありません。

それでも、場数を重ねてコンスタントに取材誘致できる程になれば、思考の幅や戦術が繋がり「プレイヤーとしてだいたいのことはできる」と自信を持って良いのではないかと思います。

いろいろ書きましたが、広報業務の中には簡単に解けないことばかりがあふれていて、正解かどうかもわからない答えや選択肢が無数にあります。このとき大切なのは、その仕事に自分なりの方法で挑む力をつけることだと思います。

アンコントローラブルでありながらも、重要な広報業務のひとつであるメディアリレーションの領域を頑張りたい場合や、何からはじめて良いかわからない時、この記事が参考になれば嬉しいです。



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