加来順子

日韓/韓日の翻訳をしています

加来順子

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マガジン

  • 書評講座 Vol. 1

    • 11本

    課題書: 1)『エルサレム』- ポルトガル、ゴンサロ・M・タヴァレス著、木下真穂訳、河出書房新社、2)『キャビネット』- 韓国、キム・オンス著、加来順子訳、論創社、3)『クィーンズ・ギャンビット』- アメリカ、W・テヴィス著、小澤身和子訳、新潮文庫

最近の記事

読まれてナンボー長編受難時代

いやあ、長かった。正直、こんなに長くかかるとは思いませんでした。 韓国の翻訳書は今や毎月、いや毎週のように新刊のお知らせが届くほど活況を呈しています。運よく出版支援金もゲットできました。話題の監督による映画も公開されました。なのに、今回ほど持ち込みを断られ、あるいは無視されたことはありませんでした。さすがにメンタルが削られすぎてフィジカルまで消えてしまいそうでした。 一番の原因は「(内容云々以前に)長い」。訳文にして700ページ超です。すでに高騰気味だった原著者印税と紙代に

    • サポートを得るー鴨を背負った葱

       さて、意地汚いハンティングから日の目を見た訳書のご紹介です。  昔いただいたアドバイスのなかに「韓国の文芸書は映像化の予定がないと翻訳は出せない」というものがありました。正直いうと〈書籍でバズったら即映像化〉という流れには今でも抵抗があるのですが、どの業界もボランティアではないので、助け合って食べていかなくてはなりませんよね。  今では逆に「映像化されるような韓国のエンタメ文学は厳しいですね」と言われたりします。「映像化されたら純文学じゃないのか?」という疑問はさておき、物

      • 企画を持ち込むーメンタル千本ノック

        ……はい、私のことですね。 「一作でいいから(以下省略)」という初心をコロッと忘れて欲を出し、さっそく原書あさりの旅に出ました。現地の目ぼしい文学賞を獲った作品を取り寄せると、まずは重版しているか確認し、最初の訳書を仲介してもらっただけで面識はないエージェンシーにのりこみ、たまたま対応してくれたスタッフに版権の空きを確認しては企画書を送りつける、ということを繰り返しました。  翻訳書は著者に加えて訳者の印税、さらにエージェンシーの仲介料が書籍の価格にのる。コアな海外文学ファン

        • はじめての訳書ー風吹く日の桶屋

           私は日本の大学で基礎から朝鮮語(韓国語)を学び、在学中に韓国で語学研修(3ヶ月)を受けて交換留学生(1年)になりました。いずれも大学の承認は受けたものの単位としては認められないプログラムだったので、求められない限りはプロフィールに書きません。  専攻は文学でしたが、卒業後は国際税務を中心とする日本の経営コンサルティング会社に就職し、業務の一部として実務翻訳をしています。そのような経歴の人間がなぜ出版翻訳を手がけることになったかについてお話してみたいと思います。   当時は

        読まれてナンボー長編受難時代

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        • 書評講座 Vol. 1
          11本

        記事

          これまで訳した本

          #チョ・チャンイン #この世の果てまで #パク・ワンソ #慟哭 #神よ答えたまえ #キム・オンス #キャビネット #野獣の血 #韓国文学 #海外文学 #ガイブン

          これまで訳した本

          ゴンサロ・M・タヴァレス『エルサレム』の訳者解説を書く

          書評家の豊崎由美さんを講師にお迎えして「翻訳者向け書評講座」が行われました。当日の様子を発起人の新田享子さんがブログに書いてくださいました(ううう、楽しかった……)。 指摘のあった箇所と「どこまでネタバレするか」で分かれた意見を参考に修正してみました。 -------------------------------------------------------------------------------------- 訳者あとがき 「タヴァレスが創造したこの世界

          ゴンサロ・M・タヴァレス『エルサレム』の訳者解説を書く