見出し画像

私は光を見たかった

地獄のような日々を送っていた。


恋人のR子は「死んだら楽になれるよ」という。

R子との共通点は、精神を病んでいることと、レズビアンなところである。そして彼女と私は付き合っていた。

「それは本当だろうか?」

私はR子を見つめた。彼女は私にキスをした。


彼女は、孤独な人だった。

幼い頃に両親が離婚して、母子家庭で育ったと言う。



私の目線からでも、分かる。

彼女は悲しすぎるくらい、愛情不足なのだ。

そして、彼女に負けないくらい愛情不足な私。二人は完全に似たもの同士である。東北の田舎の片隅で、北風に吹かれながら「寒いね」と言う。そしてまたキスをした。


R子は本当に優しい子であった。しっかり自分の意見を持っていたし、精神を病む理由があるならば、過去のトラウマとやはり両親からの愛情不足だった。


20代だけど、精神を病んでいる私たちは、働けるわけでもない。家族の「お荷物」であって、唯一役に立つことがあるとするならば、国から支給される「障害者年金」を家計に入れることである。


「のぞみ、一緒に死のう……」

R子が私の腕をぎゅっと掴んだ。「どうやって?」私は冷静に聞き返すと、彼女はしゅんとした。また北風が今度は音を立てて吹いた。


この狭い世界で「あなたたちはなんのために生きているのですか?」と問われたら、私はきっと「なんのためではなく、居るためにいるのだ」と答えるだろう。


世界はきっと、楽しむためにでも
苦しむためにでもあるのではなく、きっと居る(存在)するためにある。


「死んでもいいけど、私はきっと、死んじゃいけない」


「のぞみって、本当は……」


「本当のこと? 私は何も分かってはいないんだ。他人も、植物でさえも、生命でさえも、神も。私を本当に癒してくれるものは、本当にどん底を味わった人間だけなのだよ」


R子は、泣いていた。


私は彼女を抱きしめた。そして手を繋いだ。


北風が吹く中、それだけで幸せだった。




サポートしてくれたお金(貴方からの愛)は、銅像の制作費としてコツコツ貯めます。 優しい貴方には「じゅんこ3、本当に銅像になったよ、こりゃビックリだ会」にお招き致しますので、楽しみにお待ちくださいませ。尚、石像になる、ブロンズ像になる等、内容が大幅に変更になる場合もございます。