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不可抗力の青春『二十五、二十一』に涙

 高校のころ1年も踏ん張らずにやめてしまった弓道を今やり直したいじゅんぷうです、こんばんは。

 韓国ドラマ『二十五、二十一』、見終わりました!

 フェンシングの神童と呼ばれていたヒロインのナ・ヒドは、父の死とそれにまつわる母との確執で傷つき、心は13歳のまま止まっています。母子家庭ですが母はキャスターで食うには困らない。高校でもフェンシングを続けてはいるものの精彩を欠き、顧問の先生からも見放されている状態。でもフェンシングを好きな気持ちは強く、IMF経済危機で予算がカットされ廃部という逆境に見舞われても憧れの金メダリスト、コ・ユリムが在籍する強豪校への転校に成功します。実はユリムは少女のころ天才ナ・ヒドに敗れ、ヒドを目標にしていたというこの設定、どこかで見覚えが…。

 私の愛読書のひとつ、槇村さとる先生のコミック『Do Da Dancin'!』。幼いころからバレエを続けているヒロインの鯛子は父子家庭で家は魚屋。天才と呼ばれていた14歳のとき、ローザンヌ・コンクールに旅立つ直前に母が事故死して以来、本気のバレエを踊っていないままもう22歳。プリマを目指すのは潮時かというとき、所属するバレエ団の公演にイギリスのロイヤルバレエ団のプリマ、真理が客演することになります。真理は少女のころ、鯛子をライバルとして踊り続けてきたローザンヌの同期だったのでした。

・スター選手のライバルと、くすぶっているヒロインという構図
・感情表現や行動が子どものままのヒロイン
・感情に蓋をしてきたタイプのクールなライバル
・現時点でのライバルとヒロインの実力格差
・それぞれの心の成長とスターダムと愛

 完全に違う点は恋愛で、鯛子の場合は世界的バレエダンサーの三上くん。彼との出会いによって目が覚めた鯛子はバレエへの情熱を取り戻すのです。ヒドとイジンは、お互い応援し合う関係から愛へと発展します。

 ドラマのスタート前に「キム・ヨナと浅田真央」が引き合いに出されていたようですが、それについては思うところあるのでともかく。
 王道といえば王道のキャラ設定ですが、韓国代表候補だとかローザンヌだとかって時点でもう非凡であり、少女漫画的!
 ヒドの娘が高校時代のヒドの日記を盗み読みし、その日記の時代と現在とが交互に描かれ、少しずつ答え合わせされていくというスタイルが巧みで、3話ぐらいからは一気見。そして高校生のヒドが落としてしまった日記の最後の1冊に残されたストーリーに涙を搾り取られました。
 あんなに泣ける「アンニョン」があります?

 元天才少女のカムバック快進撃は見ていて気持ちいいし、どの人物も傷つきながらも誰かに肯定される。現在40歳になったヒドの娘で、バレエから逃げ出そうとしていた少女の心の成長へとつながっていくドラマは決してサッド・エンディングではなかったのではないかと思います。

 高校生のヒド(キム・テリ)も、裕福なおぼっちゃま大学生だったペク・イジン(ナム・ジュヒョク)も、1998年のIMF危機によって人生を翻弄されます。ヒドには時代が味方したのに対し、イジンは幾度となくどん底を見ますが、初の高卒採用を試みたテレビ局に入社し記者として働き始めます。
 そして2001年9月11日。これがヒドとイジンの愛の行方を大きく変えてしまうのですが、私はこの点が気になってしまいました。あくまでも私の見方ですが、ここだけらしくないというか、時代に沿ってはいるんだけど、ヒドとイジンの愛の障壁としてドラマのためにあつらえた事象っぽく映ってしまいました。

 9.11のニュースは、たとえ家族や友人がそこにいなくても、日本にいる私たちも悲しみと恐怖が押し寄せて、日常が不安になるものではなかったでしょうか? 日本と同じように米軍基地を、南北問題を抱える韓国の人たちにとっても深刻だったはず。それが、ドラマでのふたりの愛のすれ違い=事件の部外者との温度差っぽく感じられてしまいました。よく韓国ドラマで描かれる事件や事故などの背景が真に迫っていただけに。でも、それだけ韓国の人にとってはIMF危機が日常を揺るがすものだったのだと思います。

 そこだけ気にはなったけど、単なる回顧や感傷ではない「私たちの時代」と、続いていく「誰かの時代」の物語として、ほかのドラマにはなかったタイプの余韻。名言の宝庫でもありました。

「こういう”愛”がだめならしない」
 キム・テリの声とセリフ回しから感じられる決意のような感情に泣かされます。32歳で高校生役ができるキム・テリすごいなー。ナム・ジュヒョクより年上なんですよ? それがこの無邪気な年下っぷりよ!

己の広い肩に隠れるように彼女を見るナム・ジュヒョク。すき。


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