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『子どもが面白がる学校を創る』 上阪 徹

○概要

リクルートを経て、留学斡旋会社を起業した後に、横浜市の中学校長を勤め、広島県の教育長に就任した平川理恵さんによる公立校改革を描く。

「イエナプラン」教育実践校の設置、公立の国際バカロレア認定校の創設など、これまでになかった改革を進めていく平川教育長。印象に残った3点を以下で紹介したい。

①民間の力の活用

異年齢集団で学ぶイエナプランを実践するオランダ視察でも、商業高校改革のため世界経済の最先端を走るアメリカ視察でも、図書館のリニューアルでも、とにかく造詣の深い民間人にコーディネートを依頼する。

行政だけでできないことには、民間の力を活用する。行政が苦手なことや、民間がより優れていることに対しては、惜しみなく民間の活用を考えていきたい。

②海外も行ってみてしまう

前述したが、オランダでもアメリカでも、最先端のところに視察に行ってしまう思いきりのよさ。

当然、予算上の制約はあるにしても、他の都道府県はどうなのかだけでなく、もうひとつ視座を上げて、海外を見るというのは、日本にこもりがちと思われる地方公務員には、時には必要なことかもしれない。

③本質的な問いを立てる

さまざまな改革に通底しているのは、本質的な問いは何か、と考え続けるところ。

イエナプランも異年齢の子どもたちがともに学ぶが、これからの時代を生きていくためにどんな過程で学ぶべきかに焦点をあてている。子どもが自分で学ぶ計画を作り、異年齢の子どもと協働していくのは、まさしく社会で求められる力に合致すると思われる。

商業高校改革でも、カリキュラムのテーマを「生きる」に設定。これからの時代、勉強させて資格取得を目指すだけでよいのか。生きるためにはお金がいるし、どう稼いでいくか、そのあたりが腹落ちすると、生徒は自然と学びを進めていく。

単に記憶に残る知識を教えるのではなく、創造的で本質的な問いを投げ掛けた上で、記憶と創造の間を埋めていくことこそが、教職員に求められ、そのための改革が進んでいる。

最後に

基本的には前例を打ち破り、新たなことをするのは善だと思っているが、本書では当然、光の面に焦点が当てられているので、影の部分も確認しながら、改革については評価すべきだと思う。


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