詩集 キリンの洗濯 高橋杞一
どうしてこの本を買ったかなあ……。たぶん、表紙のキリンの姿に惹かれたから。本屋さんでのジャケ買い。改めて披いてみると今では珍しい活版印刷。表紙も随分焼けちゃったし汚れたなあ……。
「破裂」
夜に
どこか遠くの扉がひらく
これだけの詩。扉が開くことが破裂とはねー、ととても不思議な感覚。ビッグバンかなあなんて思ったり。
「ホッチキスがやってきて」
朝
ホッチキスがやってきて
ぼくを
机にとめる
ちょっと可笑しい風景。最後が秀逸で「(はずれない……)」机から引き剥がせないんだね。学校だろうか仕事だろうか。ホッチキスで留められると痛そう。
「夏は夜」
顔が
うまくほどけない
「論語の今後」
夜、フトンの中で話がはずむ
ねえ、さわってもいい
何を?
ちょっと面白い会話。うふん。なにを?楽しい。論語と並べて、孔子
と並んでいる頭の中が楽しい。
「キリンの洗濯」
二日に一度
この部屋で キリンの洗濯をする
キリンは首が長いので
隠しても
ついつい窓からはみでてしまう
折りたためたらいいんだけれど
傘や
月日のように(後略)
キリンを洗濯する。大家さんに見つかるとか気にしながら。どうして?そのキリンはどこから来るの?どこから来るともしれないキリンが「洗って」という。可笑しい。とても可笑しい。そしてちょっと哀しい。
あとがきに突然俳人杉田久女の名前ができて今回びっくりした。
磯菜摘む行手急がむいざ子ども 久女
と呼びかけられたような気がして編まれた詩集なのだ、と。1988年の出版。ちょうどそのころ、カンガルー日和とか納屋を焼く、とか村上春樹の短編集を読みふけった時期で、ペーソスというかライトバースな感じがけっこう好きだった記憶。いま奥付見たら第4版を私は買っている模様。詩集って4版まで出たりするものなのかしら。人気があったってことかな?わかるきはする。
(1989 初版発行 詩集 キリンの洗濯 あざみ書房)
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