【102.水曜映画れびゅ~】"The Whale"~心の叫び~
"The Whale"は、4月から日本公開されている映画。
今年行われた米アカデミー賞で2部門を受賞した作品でもあります。
あらすじ
娘との絆を取り戻す5日間
大学のオンライン講座で講師を務めながら一人暮らしをするチャーリーは、恋人のアランを失ったショックから体重が272kgまで増えてしまった。
あまりにも太りすぎているため、彼には命の危険が常にあった。しかしチャーリーは病院に行くことを頑なに拒み、友人で看護師のリズに頼って暮らしていた。
そんな彼には、生きている間に果たしたいことが一つだけあった。
それは…
娘との絆を取り戻すこと。
チャーリーはアランと結ばれるために、過去に妻と娘を捨てて家を出ていってしまっていたのである。
その娘エリーと再び親子になりたいと願う、チャーリー。
そんな彼の最期の5日間が描かれる。
最期に正しいと思えることを…
272kgという大巨漢で、自力で起き上がることもできないの男が主人公の本作。
そんな彼が体重減量に励む物語や太った姿で陽気にはしゃぐ物語というわけでなく、この作品の主題は「失われた家族の絆」。
死期を感じ取ったチャーリーは、疎遠になった娘との時間を過ごそうとします。
しかし娘のエリーはただでさえ気難しい性格のうえ、自らを捨てた父に不信感を強く抱いています。
それでもチャーリーは… 諦めたくなかった。
ありのままの自分を曝け出し、自らの愛を、たとえ真っ当に伝わらなくても、たとえ不器用であろうとも、最後の最期には分かり合えることができるかもしれないという希望を持って、娘に伝えようとするのです。
そんなチャーリーの”心の叫び”が、私の胸に突き刺さりました。
ブレンダン・フレイザー、魂の演技
本作で主演を務めアカデミー主演男優賞に輝いた、ブレンダン・フレイザー。
かつては『ハムナプトラ』シリーズで主演を務め、イケメン俳優として一世を風靡した俳優です。
しかし近年はあまり姿を見ることがなかったフレイザー。
実は、ゴールデングローブ賞を主催するハリウッド外国人映画記者協会の元会長からセクハラを受けていたことを告発して、干されていたのです。
さらには私生活で離婚をし、子供を親権を争い裁判が泥沼化。その結果で鬱病に苦しみ、実際に過食症になっていたともいわれています。
そんな彼の映画界への復帰作が、本作『ホエール』。
その役柄は、鬱で苦しんでいた実際のフレイザーの姿を想起させる部分が多くありました。その不思議な因果が彼にオスカーというご褒美を与えてもくれたという、ブレンダン・フレイザーの俳優人生を重ね合わせることでより大きな物語に、この作品はなっていくのです。
そんな彼の魂の演技に、思わず目が潤みました。
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次回の更新では、こんな映画が日本でも作られていたことに驚きの『37セカンズ』(2019)を紹介させていただきます。
お楽しみに!