![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/93753590/rectangle_large_type_2_d5e302344986da87e75cd0f08500db6b.png?width=800)
【68.水曜映画れびゅ~】"In the Heights"~【Netflix配信開始】オスカー級の、お手本のようなミュージカル映画!~
今週の日曜日に、このような記事を投稿しました。
先月末行われたアカデミー賞。
『CODA あいのうた』の作品賞受賞や『ドライブ・マイ・カー』の国際長編映画賞受賞など、様々な素晴らしい作品が受賞・ノミネートされました。
一方で、今シーズン公開・配信された映画の中ではアカデミー賞確実と謳われながらも、作品賞などの主要部門へのノミネート、はたまたどのカテゴリーにもかすりもしなかった作品があり、そういったものに上記の記事では光を当ててみました。
そして本記事で紹介するのも、アカデミー賞になぜかおこぼれした一作。昨夏に公開された"In the Heights" です。
あらすじ
変わりゆくニューヨークの片隅に取り残された街ワシントンハイツ。祖国を遠く離れた人々が多く暮らすこの街は、いつも歌とダンスであふれている。そこで育ったウスナビ、ヴァネッサ、ニーナ、ベニーの4人の若者たちは、それぞれ厳しい現実に直面しながらも夢を追っていた。真夏に起きた大停電の夜、彼ら4人の運命は大きく動き出す。
リン=マニュエル・ミランダ原作のブロードウェイミュージカルを映画化
本作の基は、”ブロードウェイミュージカル界の風雲児”リン=マニュエル・ミランダ制作のミュージカル。
ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、リン=マニュエル・ミランダは、現在のブロードウェイを語るうえで欠かせないスーパースター。
特に有名なのが、自身が脚本・作曲・作詞・主演を務めたミュージカル『ハミルトン』。
アメリカ合衆国建国の父の一人アレクサンダー・ハミルトンの生涯を軽快なポップミュージックで描いたこの作品は、大ヒットという言葉では足りないくらいの、社会現象級のヒットとなりました。
そんなリン=マニュエル・ミランダは、近年では映画業界との繋がりも強くなり、『モアナと伝説の海』(2016年)や今回のアカデミー賞で長編アニメ賞を受賞した『ミラベルと魔法だらけの家』(2021)で作曲を担当したり、Netflixオリジナルのミュージカル映画『Tick, tick... BOOM! : チック、チック…ブーン!』(2021)で監督を務めたりもしています。
そんな彼が大学時代に書いた原案を基にして、後にトニー賞13部門にノミネート、ミュージカル作品賞を含む4冠を達成したミュージカル『イン・ザ・ハイツ』。
彼のルーツであるプエルトリコ系・ドミニカ系のコミュニティが暮らすニューヨーク・ワシントンハイツを舞台にした物語です。
それを、大ヒット映画『クレイジー・リッチ!』(2018)の監督ジョン・M・チュウがメガホンをとり、映画化しました。
ワシントンハイツ
本作で舞台となったワシントンハイツ。
ニューヨークのマンハッタン北部に位置するこの街は、前述した通りドミニカ系移民が集まる地域。実際にこの街では、英語よりもスペイン語をよく耳にするといわれています。
そんなワシントンハイツはニューヨーク市の街でありながらも、そこに住む移民たちは決して裕福ではありません。多くの人が低賃金の仕事に従事しており、そのような現実も映画内で描かれます。
しかし劇中のワシントンハイツの住民は、そんなことに悲観することなく、誰もがアメリカンドリームを夢見て、明るく楽しく暮らしています。
そうやって生きていられるのは、一緒に歌って踊ってくれる仲間たちとともに住んでいるから。そんなラテン系らしいワシントンハイツの暮らしぶりが、この作品では描き出されています。
お手本のようなミュージカル映画!
そんな本作の見どころは、なんといっても歌と踊り!
特にオープニングシーンは最高で、最初からアクセル全開の圧巻のダンスシーン!それはもう、『ラ・ラ・ランド』(2016)の"Another Day of Sun"並み煌びやかさです。
そしてもちろん、見どころはそのオープニングだけにとどまりません。
正直ミュージカル映画というのは、オープニングで盛り上げた後は、ストーリーと歌がちぐはぐになって間延びすることが多いのですが、本作はそこら辺のメリハリがしっかりしているんですね。
しっかりとストーリーに沿ったタイミングで、歌とダンスでの山場がドッと来ます。なので、ひと時も飽きがこない極上のミュージカル映画となっています。
なかでも、映画中盤の民営プールの場面とかは、最高でした。
なぜ、アカデミー賞にノミネートされなかった?
というふうに、私も胸を張ってオススメしたいこの『イン・ザ・ハイツ』。実際のその評価も非常に高く、公開時はアカデミー賞有力候補の謳い文句で売り出されもしました。
しかし、蓋を開けてみれば2021年度のアカデミー賞ノミネートはゼロ。
一体なぜだったのでしょうか?
その一番の要因は、夏に公開されたことにあるでしょう。日本で7月に公開された本作は、アメリカでは6月に公開されました。映画の設定が真夏なので、公開のタイミングとしては絶好ではありました。
ただアカデミー賞という観点から言えば、それは悪手。
アカデミー賞を狙う作品というのは、10月以降というノミネーション選考が始まる手前に公開して、インパクトを残すというのが鉄則。ゆえに、ノミネーションがなかったのでしょう。
かといって、アカデミー賞にノミネーションされたいから、真夏の映画を秋になって公開するのもなんか違うと思うし…。
個人的な意見を言えば、この『イン・ザ・ハイツ』は、今回作品賞にノミネートされたミュージカル映画『ウェスト・サイド・ストーリー』に負けず劣らずの作品です。
一方で、『ウェスト・サイド・ストーリー』が7部門にノミネートされたのに、本作はゼロ。公開タイミングの問題があろうと、正直納得しがたいんですよね。
確かにアカデミー賞にノミネートされる作品というのは一定のクオリティが保証され、ゆえに注目度も高いです。
ただアカデミー賞がすべてとは言えず、『イン・ザ・ハイツ』のようにアカデミー賞に全くノミネートされなかった作品でも、オスカー級の作品って毎シーズンあるんですよね。
私は、そんな作品たちを、アカデミー賞の陰に隠れて埋もれさせたくはないです。なので今回は、あえてこのタイミングで『イン・ザ・ハイツ』を紹介させていただきました。
皆さんにこの作品の面白さに再注目していただければ、幸いです。
そして、なんと偶然にも、今週からNetflixで配信されています!
加盟されている方で、まだ観てない、もう一度観たい、という方は、ぜひご覧になってください!
前回記事と、次回記事
前回投稿した記事はこちらから!
これまでの【水曜映画れびゅ~】の記事はこちらから!
来週は、人気俳優ベネディクト・カンバーバッチ主演の傑作"The Imitation Game"(2014)を紹介したいと思います。
お楽しみに!