【3.水曜映画れびゅ~】”BlacKkKlansman” ~Black Lives Matterを語る前にこれを見ろ~
"BlacKkKlansman"は2018年公開のスパイク・リー監督作品です。
あらすじ
Black Lives Matterと映画
黒人への不当な差別に対する抗議運動"Black Lives Matter"は2020年に大きな局面を迎えました。
5月には黒人男性ジョージ・フロイド氏が警察官によって頸部を膝で押さえ続けられ死亡し、また8月にはジェイコブ・ブレイク氏が警察官によって複数回の銃撃を受けました。
事件によって抗議活動は活発になり、その動きはアメリカから世界中にも広がり、日本でも東京や大阪をはじめとする各地で抗議デモが行われました。
特にテニスプレイヤーの大坂なおみさんが抗議を訴えるために試合の棄権を表明したり、全米オープンで過去に起きた警察の暴行事件の犠牲者が記されたマスク着用したりするなどメッセージを発信し、日本のメディアも大きく取り上げました。
では…
なぜ黒人差別はここまで根深いのでしょうか?
正直言って、黒人に対する差別は私たち日本人には理解しがたい部分があります。
でも、それもそのはずではあります。
なぜなら私たちは黒人のことをよく知りませんし、周りには黒人ないし外国人がいること自体が稀です。
そして中学・高校などで黒人奴隷や差別に関する歴史などはほとんど教えられることはありません。
では、教えてくれないなら知らないままでいいのででしょうか…?
自分に関係ないこととして知らないままでいることはそれも一つの選択ではあると思います。
ただ知ろうと思うのであれば、学校で教えてくれなくとも“黒人差別の歴史”と“なぜ黒人差別が起きるのか”について教えてくれるものはあります。
その一つが映画です。
黒人差別を描いた映画
黒人差別の歴史を描いた作品はこれまで多くつくられてきました。
例えば2013年公開の『それでも夜は明ける』では、実話を基に南北戦争以前のアメリカ南部における奴隷制度をリアリスティックに描きました。
また同年に公開された『大統領の執事の涙』では、1960~80年代に執事として大統領に仕えた実在の黒人男性ユージン・アレンの視点から公民権運動の変遷を知ることができます。
そのほか『グローリー』(1989)、『評決のとき』(1996) 、『グローリー/明日への行進』(2015)、『グリーン・ブック』(2019)など、黒人差別の歴史やその境遇を知るうえで欠かせない映画は数多く作られています。
その中でも私が特に見てほしい映画があります。
それが本作『ブラッククランズマン』です。
KKK (Ku Klux Klan)
本作の原題は“BlacKkKlansman”。
このタイトルには、ちょっとした仕掛けがあります。
それは、白人至上主義を掲げる団体Ku Klux Klanを意味する“KKK”という文字がタイトルに隠れていますことです。
つまりこの映画は、黒人差別と深いかかわりのあるその”KKK”にまつわる物語です。
ではKKKとは何か?
簡単に言えば、白人至上主義の集団。
白人以外の人種を嫌い、白人が人類の中心と考える人々の集まりです。
その思想は過激で、黒人をリンチにするといったKKKによる残虐な事件等が歴史的に記録されています。
また標的となるのは黒人に限らず、アジア系やヒスパニック系の移民、ユダヤ人に対しても強い敵対心を持っています 。
KKKだけが敵じゃない!
ー警察 vs. 黒人
本作は、ある黒人警察官とKKKとの間に起きた壮絶な実話を基にした作品。
しかし、黒人の敵として描かれるのはKKKだけではありません。
そのもう一つの敵こそが、現在のBLM運動にもつながる問題。
警察です。
白人警察官による黒人の一般市民への凄惨なる差別。
そんな扱いを受ける黒人が警察に対しての嫌悪感と敵対心。
今なお議論が絶えない”警察 vs. 黒人”という構造が本作ではっきりと描かれています。
この映画の舞台設定は1970年代後半ごろですが、「それから40~50年経った現在は何が変わったか」ということも考えさせられます。
前回記事と、次回記事
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次回の記事では、クリスチャン・ベールの好演が輝る"Ford v Ferrari"(2019)について語っています。