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チャレンジ、キャリア、イノベーション
先日、EテレのサイエンスZEROという番組でペロブスカイト太陽電池の特集を見ました。
ペロブスカイト太陽電池は、従来のシリコンタイプと比べて非常に薄くて柔らかく、そして発電効率がシリコン並みに高いという特徴があります。これらの特徴から分かるように用途の多様性が非常に広く、次世代太陽電池の大本命と目されています。
世界的にも注目されつつあるペロブスカイト太陽電池ですが、日本人大学院生の研究に端を発しています。当初ペロブスカイトは注目されていませんでしたが、担当教授(桐蔭横浜大学 宮坂力特任教授)が学生の好奇心・興味・研究意欲を尊重したことでチャレンジングなテーマに挑戦できたことで後の成功につながった、と当該院生が番組内で語っていました。部下や後輩のチャレンジングな行動を動機づける大切さは、ジャンルに関係ないということです。
そのようにして始まった研究ですが、2022年現在でペロブスカイトの研究者は推計で約3万人に上ります。そのうち約半数が中国人で、日本人は1,000人も満たないとのことです。
中国の開発意欲の高さには感心するばかりですが、発端である日本で1,000人にも満たないことは非常に残念なことです。エネルギー自給率の低さから脱却できるチャンスではあるのですが、関心がないということなのでしょうか。
ペロブスカイト太陽電池の問題だけでなく、日本における研究職は厚遇されているとは言えません。研究費が少ないために、中国などの外国からの招聘を受ける話はよく聞く話です。私も以前研究職の方から聞いた話はこうでした。
「研究というものはすぐに何に役に立つかは判断できない。以前は会社も理解してくれて長期的な研究ができていたが、最近はすぐに結果(=利益につながること)を求めてくる。このような状況なので、良い研究成果が出にくくなっている」とのことです。
現場はこのような状況ですが、日本人のノーベル賞受賞者数は世界7位なので、決してイノベーションが起きにくいわけではありません。個人ではなく、組織によるイノベーションを起こしにくい状況にあるようです(山口周『世界で最もイノベーティブな組織の作り方』より)。
ペロブスカイト太陽電池にまつわる話を聞いた上で、私が感じたことは以下の四点です。
部下のチャレンジングな試みをどうモチベートするか
萌芽しそうな企画をどう拡げるか
組織としてどうやってイノベーションを起こすか
研究職の重要さがないがしろにされている
1.と2.に関しては、発案者たちのキャリア自律を促進するために有効な対策となるでしょう。特にキャリア焦燥期にある若手社員にとっては自らのキャリアを認知する動機づけになります。
3.は心理的安全性との関連が強いです。心理的安全性とは、それを得ることによってミスをなくし、その結果生産性を高めるというようなイメージを持たれている方も多いかもしれません。
もう一つの側面として、アイデアが出やすく共に学習する職場になる⇒イノベーションを起こしやすくなる⇒結果が伴うことで生産性が高まる、というものがあります。ネットを見てもあまりこちらに触れていないのですが、無意識にイノベーションを起こすことを避けているのかと勘ぐってしまいます。
いずれにせよ、心理的安全性を得るのであれば、ギスギスしない話しやすい職場だけを目指すのではなく、同時にイノベーションを起こしやすい職場も目指すべきでしょう。
4.は近視眼的に結果や効率を求めすぎることの象徴だと言えます。その結果、技術的なイノベーションが起こりにくく、却って生産性が低下する恐れがあります。従業員が長期的な視野で仕事にあたれるようにどうすればいいか、改めて考えたいと思います。
<参考>国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)
ペロブスカイト型太陽電池の開発
依藤聡
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