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AI時代に、ヒトが創作する意味はあるのか? - 「伝わる・揺さぶる!文章を書く」

このシリーズでは、1児の親である漫画家:水野ジュンイチロが
「子供にもゼッタイ読ませたい!」と思う本だけを厳選して紹介します。


Chat GPTを使って
「こりゃぁ、もう人間はいらないな…」
って思ったこと、ありますか?

リッチな情報が、小綺麗な文章でぱっと出てくる。

クリエイター(の端くれ)の私としては
「たまったもんじゃない」と思った。
これ、俺がやる意味ある??

子を持つ親としてもまた恐怖を覚える。
子供たちは学校の宿題やレポートを、
AIを使って一瞬で仕上げてしまうだろう。
(自分だったら絶対そうする笑)
それ、意味ある??

果たして、
AI時代にヒトが自分で創作する意味はあるのか?

この問いに対して、
20年以上前に出版されたこの本が決定的な回答を
すでに出してくれている。
(と、私は受け取った。)

「伝わる・揺さぶる!文章を書く」は、いわゆる文章術の本だ。
ベネッセで小論文の教育に携わった山田ズーニー先生が、
人を動かすための文章を書くコツについて紹介している。

文章術とAIになんの関係があるの?と思うかもしれないが、
本書で紹介されている“いい文章を書くコツ”こそが、
AI時代にヒトが果たすべき役割そのものに思えるのだ。


AI時代でも、表現物はあくまで「ヒトが作るモノ」

そもそも文章は何のためにあるのか?
文章だけじゃない。絵や動画、漫画も映画もそうだ。
あらゆる表現物はなぜ存在するのか?

次の一文が、その答えであり、
AI時代にヒトが意識しなければならないことを
示唆しているように思える。

読み手の心を動かし、状況を切り開き、望む結果を出すこと。

伝わる・揺さぶる!文章を書く

表現物は、書き手が世の中に影響を与えるためにある。
就活の自己PR文は人事の心を動かし自分を採用するよう働きかけるもの。
漫画は自分の想いを表現し、人を感動させるために描くもの。
自分しか読まない日記だとしても、
心の負債を吐き出すなり、自分の考えを客観視するなり、
やはり自分に対して働きかける狙いを持っている。

表現物が生み出されるとき、そこには必ずヒトの意志がある。
表現することで世の中に及ぼしたい影響があると言うことだ。

そして、すごく当たり前のことなのだけれど、
AIは意思を持たない。
AIが意思を持って何か表現しているように見えたとしても、
それはAIに表現させようとしたあるヒトの意志が産んだものだ。

ゆえに、AI時代でもヒトの表現物に対する介在意義は
全く揺るがないといえるのではないだろうか。

意思によって、表現物が生まれる。

この原則は、AI時代になっても全く変わっていないのだから。

AIは、ヒトの意志を表現することを手伝ってくれるツールなのだ。
AIは決して表現者の仕事を奪うことはなく、
あくまでよき仕事仲間になるはずだ。

「意思の質」で差がつく時代に

ただし、AIをよき仕事仲間にできるのは
「質の高い意志」を持っている人に限られるだろう。

自分がどのように世界に影響を及ぼしたいのか?
それが明確であればあるほど、
最終的な表現物は説得力を増し、
望む方向に世界を進めてくれる。

逆も然り、
意図が不明瞭な表現物が評価されなかったり、
狙う効果を発揮しなかったのは
AI以前の時代も同じだっただろう。

AIによって意思から先の表現物の質と速度が上がるなら、
AI時代のヒトは「意志」のブラッシュアップに
より意識とリソースを向けられるようになる。

言葉を変えると、「意思の質によって差がつく時代」になるだろう。
(あまり差という言葉は使いたくないのだけど、
仕方ない。差はついてしまう。)

では、質の高い意志を持つにはどう考えれば良いのか?
これも、この本から良い示唆を得ることができる。

うまくAIを使うコツは、いい文章を書くコツとおなじ。意思の質を高める方法とは?

ズーニーさんは、良い文章を書くための必須要件に以下の7つを挙げている。
この7項目は、そのまま「質の高い意志」を設計する上での指針になる。

1. 意見: あなたが一番言いたいことは何か?
2. 望む結果: 誰が、どうなることを目指すのか?
3. 論点: 問題意識はどこに向かっているのか?(問い)
4. 読み手: 読み手はどんな人か?
5. 自分の立場: 読み手から見たとき、自分はどう見えているか?
6. 論拠: 相手が納得する証拠はあるか?
7. 根本思想: あなたの根本にある想いは何か?

伝わる・揺さぶる!文章を書く(水野要約)

まとめて言うなら

実現したい世の中の変化を明確にして(意見、望む結果、論点、根本思想)
言葉が影響力を発揮するように工夫を凝らす(読み手、自分の立場、論拠)

ということだと思う。

この7点を考え抜くことで、
世の中が自分の理想に近づく可能性が高まるとも言えるだろう。
なんて素晴らしいことだろうか!
本書中に、7点ごとの考え方や実例が豊富に提示されているので、
ぜひ読んでみてほしい。

今まで自分が文章や表現物を作るときに抑えられていいたかというと
全くできていなかったと反省する。
改めて、自分でも意識したいし、
子どもたちにも教えていきたい大事なことだ。

余談だが、7項目のうちAIが得意なのは "6.論拠" だけだ。
論拠となるファクトを収集し、分かりやすく整理するのはAIの得意分野だろう。しかし、残りの6点についてはAIは全くと言っていいほど関与できない。
これもまた、人間が表現において果たすべき役割が大きいと自信をつけさせてくれる。

AIは創作の加速装置であり、表現物を生むものではない

結論、こと創作においては
AI時代になっても本質はそんなに変わっていないのでは?
と思う。

意思の質が問われていたのは昔からだ。

意志に従って表現物として可視化するのが、
人間なのかAIなのかの違いに過ぎない。

質の高い意思を持てるなら、
AIはそれを実現するパワーとスピードを与えてくれるだろう。

持てないなら、AIが出力するものは
質量だけムダに大きい、ヒトや世界に影響を与えない、
詮無きデータとでも呼ぼうか。
そういう名前のつけがたいものになるだろう。

この時代に意味のある表現物を生めるようになるために、
ぜひ本書を熟読して「意思の質」を高めることに挑戦してほしい。


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面白かったと思った方は、漫画も読んでね!


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