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医療機関でのデジタル化について(あえて医療DXとは言わない)

株式会社クオトミー代表取締役の大谷(オオヤ)です。
バックグラウンドは整形外科医で、医療者の課題を解決することで医療を支えたいとの想いで起業しています。
主に都内の急性期病院で手術を執刀するなど中堅の臨床医をしていましたが、2023年3月末をもってメスを置き、2017年12月より創業していたスタートアップ事業にフルコミットし、医療機関(主に病院)向けのプロダクトを開発・提供しております。
UCSF留学時の米国ベイエリア生活での経験から、デジタルを利用して生活が豊かになることに衝撃をうけ、医療業界もデジタルで医療者を取り巻く環境をよくできるのでは!!と試行錯誤を繰り返し、現在は手術症例一括管理ソリューション「オペワン」で、非医療業務のデジタル化による外科系医師の業務効率化に取り組んでいます。
本Noteでは、医師の働き方改革のソリューション「タスクシフト・シェア」の話題から、医療機関のデジタル化のレベルについてやクオトミーで取り組んでいる外科系診療科の業務について書いています。
内容を一言でいうと、医療DXとか言う前にデジタル化しよう、です。
デジタル化に興味のある医療機関さま/外科系診療科の医師の方々、クオトミーと同じく医療DXに取り組んでいるヘルスケアスタートアップ・大企業の皆様の参考になれば幸いです。
※オペワンに御興味のある医療機関の方はお問い合わせください!


業務効率化に関する外科系医師の興味・関心

医師にとって春は学会シーズンで、新型コロナ禍が明けてから非常に活況‼︎
各地で多くの議論・刺激・出会いが生まれています。

さて、株式会社クオトミーは2024/4/18-4/20に横浜で開催された第53回日本脊椎脊髄病学会(東海大学医学部外科学系整形外科学さま主催)、そして5/23-5/26に福岡で開催された第97回日本整形外科学会学術総会(慶應義塾大学医学部整形外科学教室さま主催)に協賛し、ランチョンセミナーを企画させていただいたり、未来展示ブースに出展させていただいたり、、、と非常に充実しておりました!!
ご来場いただいた先生方、学会主催の先生方には大変お世話になりました。

特に前者の学会では「AIによる外科系医師へのインパクト」というタイトルのセミナーを共催し、千葉大学整形外科教室の牧聡先生にご講演いただき、ご参加いただいた医師の先生方からも大好評でした。

演者:牧先生と座長:折田先生。感謝‼︎

ご参加いただいた皆様への「業務効率化」や「働き方改革」に関するアンケート(有効回答197件)の中身を一部シェアしたいと思います。
まず、ご回答いただいた医師の方々で、「勤務先での業務効率化に興味がある」と回答した先生は98%!!

業務効率化への意識の高まりを感じる結果です

では「もっとも効率化したい業務は?」の問いに対しての回答結果は・・・


ダララララララッッッ(ドラム音)


ダーン!!



第1位 外来診療
第2位 文書作成
第3位 病棟業務

1位「外来診療」という結果でした!
しかし、票の実数をみてみると2位「文書作成」との間に差はほぼ無く、少し空いて第3位「病棟業務」という結果でした。
この学会の参加者の大多数である脊椎外科医の方々からのアンケート回答と考えられますが、本業である「手術」に関する業務は下位にランキングされていました。

外科系医師の端くれとして自分の臨床経験から、アンケート結果を私見まみれに考察してみます!

外来業務に関しては、もっと効率よく診察ができるのではないかと考えている外科系医師が多く、それは問診だったりカルテ記載だったり、、、患者さんへの診察・診断などの医療行為とは異なる「間接的な業務」の負担が外来業務は大きい。

文書作成も同様に、患者さんに対しての直接的な医療行為ではない。
なぜカルテに記載したことを、保険会社のフォーマットに手書きで複写しなければならないのか・・。
手術でどっぷり疲れた1日の終わりに待っている文書作成は本当に辛い。

外科系医師は、治療行為である手術に関しては「業務効率化」の優先度は低いと感じている。
補足すると、手術時間を早くするための個人そしてチームとしての「研鑽」に取り組んでいるのは当然のことで、外科系医師として大前提。

筆者の私見

これまでのように医療は現状維持ではなく発展していきますし、デジタル治療やAI診断支援も盛り上がってくるでしょう。
医療やテクノロジーの進歩で患者さんに恩恵があったり、また新たな課題が生まれたりして、臨床家が観察したり介入したり疫学的手法を用いてエビデンスを創出していくはずです。
つまり、診断や手術治療のような医療行為の本質を判断するには経過をみる時間が必要なんです。
(あくまで僕らクオトミーが考える)現在の緊迫した医療現場で解くべき問いは「複雑に絡み合ったアナログな非医療行為の業務フロー」で、デジタルを用いた間接的な業務の効率化や生産性向上を行い、医療者の負担を減らし医療現場をより良いサステナブルな環境にしたい‼︎と考えています。

医師業務のタスクシフト・シェア

「医師の働き方改革」で具体的に取り組まれているソリューションの1つが、医師事務作業補助者の方に比較的簡易な業務についてカバーしてもらったり、特定行為看護師の方に集中治療や救急・外科系の手技的業務を行ってしてもらう等の医師業務のタスクシフト・シェアです。
特定行為看護師による直接的な医療行為のタスクシフト・シェアはどんどん推し進めて頂くとして、、、クオトミーがデジタル化を推進したい間接的な非医療業務とは具体的にどんな業務があるのでしょうか?
医師事務作業補助者の方が取り組んでいる「比較的簡易な業務のタスクシフト・シェア」の現状はどうなっているでしょうか?
2023年のデータにはなりますが、全国大学病院81病院での取組状況の数字がありましたので引用します。

医師事務作業補助者の作業取組状況(N=81)

・各種書類の記載(77大学)
・診療録等の代行入力(65大学)
・医師の検査オーダーに基づく検査予約(61大学)
・患者の外来診察予約(56大学)
・症例実績や各種臨床データの整理、研究申請書の準備など(55大学)
・日常的に行われる検査に関する定型的な説明・同意書の受理(46大学)
・医師が診察をする前に、医療機関の定めた定型の問診票など(24大学)
・レセプトに関する情報入力(18大学)
・院内での患者移送・誘導(12大学)
・入院時のオリエンテーション(11大学)

大学病院における医師の働き方に関する調査研究報告書(概要)より一部改変

これらの作業内容をみて、どう思いますか?
(そもそも医師がやる必要のなさそうな仕事もありますが、、、)なんかデジタルに置き換えることができそうじゃないですか!?
これらの間接的な非医療業務に関してはデジタルで効率化でき、医師の働き方改革が進みそうですよね!!
医療DXが実現できそうです!!!

ところが・・・・

医療機関のデジタル化

現実的には、今の医療現場でいきなり医療DXへのステップアップは難しいです。
では、まずそもそも現在の医療機関がどれだけデジタル化に取り組めているかを、筆者の私見から説明させていただきます。
まず、すべての経済活動をデジタル化するLayer X 福島さんの2021年8月のnote内にある図表「デジタル化の4つのレベル」をご覧ください。

LayerX福島さんのnoteより

Level 1 ツールの電子化(Digitaization)は、これまでアナログだったものが単に電子入力になったに過ぎません。あくまでツールが変わっただけなので業務は効率化されません。
業務の効率化は、Level 2 業務のデジタル化(Digitalization)から始まります。デジタルに合わせた業務設計になっているからです。たとえば、稟議を通すのに、紙やハンコが必要なくなった。そんな状態です。
そして、業務の自動化だったり、データ起点の意思決定が行われたり、アルゴリズムのマッチングが行われたり、、、これがLevel 3のDigital Transformation(=DX!!)です。
そして、企業間・業界間でのエコシステムが進むとLevel 4のDigital Ecosystemが構築される、と福島さんは表現されております。
この秀逸すぎる「4つのレベル」を引用させていただき、筆者なりに医療機関のデジタル化をまとめると、以下の図表のようになります。

医療機関のデジタル化レベル

Level 1 ツールの電子化(Digitization)

紙ではなくPC上でカルテ記録する様になった状態で、ツールが電子化されております。
紙カルテの汚い字が読めないことがなくなった、コピペができる、紙で保管しなくてよい、などのメリットあります。
クラウドによるメリットは受けておらず、業務は効率化されていません。

例)
紙のカルテがオンプレ型電子カルテになった。
回覧板から電子カルテ内のメッセージ機能(わかる人にはわかる、くじら🐳メールなど)になった。
ノートの手術台帳をエクセルに切り替えた。
カンファレンスをZOOMにした。

多くの医療機関がここに位置する

Level 2 業務のデジタル化(Digitalization)

業務フローがデジタル化されて、業務が効率的になっています。
ワンストップでの情報共有が可能となり、データ可視化や一括でのデータ抽出なども可能。
インフラ発展の恩恵を受けソリューションの提供価値も時代に合わせて向上していきます。

例)
クラウド型電子カルテを使っている。
Microsoft Teamsを使っている。
入退院調整業務のクラウドサービスを使っている。

一部の医療機関で導入されている

Level 3 業務の高度化、組織構造変化(Digital Transformation)

医療機関内のある部署で1度記録した情報は各部署に共有され、複数部署にまたがる業務が効率化され、データを活用した意思決定がなされるようになります。
医療の高度化により多職種連携の重要性が増していますが、アナログでやるとかなり大変だと思いますが、この段階になるとシームレスな連携が可能です。
医療機関内の組織構造がデジタルを前提としたものに変化すると思います。
機械学習や生成AIの恩恵をうけ、業務の一部が支援されたり、自動化されたりします。

例)
患者さんとの診察内容が自動で診療録ドラフトに記載される。
各部署が入力した内容が医療経営データ構築に活用される。
記録からワンボタンで請求業務に必要な書類が作成される。

ここに到達すると病院経営にも活きる

Level 4 ステークホルダー横断でのデジタル化(Digital Ecosystem)

複数の医療機関で患者情報を共有することで、地域医療連携が進み、医療資源利用の最適化が進む。保険者、被保険者、プロバイダー、企業など、ステークホルダー間の情報共有もスムーズになる。

例)
患者さんの診療録が複数医療機関で共有されている。
病院外での患者さん自身のモバイルヘルスケアデータが医療に活かされる。
リアルワールドデータが創薬・医療機器開発に活かされる。

このような未来が議論されていることが多い

業務フローがデジタル化されて構造的に変革が起きたDX状態のLevel 3以降では、医師の意思決定から自動化される業務が多く、いま「医師の働き方改革」内のタスクシフト・シェアで取り組んでいる業務自体がなくなるor極端に減ることになります。
その時の医師の働き方は、医療行為以外はデジタル化を前提とした業務になっており、Future of workと呼ばれるものになっているはずです。
多くの医療機関でデジタル化がLevel 2まで進み、医療機関に勤める医師が業務効率化を体感する社会までには時間がかかることが予想され、非医療業務のタスクシフト・シェアは、Level 2に至るまでの時間稼ぎ的な意味合いがあり、現在の緊迫した医療現場において非常に重要だと思っています。

外科系診療科の現状とクオトミーの取り組み

私たちは、外科系診療科向けに手術症例一括管理ソリューションOpeOneを開発・提供しています。
クラウド型の手術台帳で、チームでの手術症例情報を共有し、外科系医療者の非医療業務効率化により時間外労働削減という価値提供をします。
その開発・営業の過程で多くの医療機関さまに外科系診療科の非医療業務の現状を伺うと、各医療機関さまで様々な取り組みや工夫をされております。


「ZOOMでカンファレンスするようにしています」

ZOOMなどによって場所の制約がなくなり、移動時間を短縮していると思います。
一方で、PACSビューアーをプロジェクター投影することでできていた画像共有ができなくなり、ZOOMカンファレンスのために若手がパワポを作る必要が新たにでてきたりしていないでしょうか。
また、結局は多くの医師の時間を合わせて集まる必要はあるため、議論すべき症例を事前に把握していなかったり等、上手くファシリテートされていないカンファレンスでは、ZOOMでも対面カンファレンスでも長時間化されてしまいます。


「手術スケジュールは共有フォルダでエクセル管理しています」

手術台帳を院内サーバーに置いたエクセルで管理している診療科の先生も多いと思います。
マクロなどを駆使して手術データベース化を工夫している医療機関さまもいらっしゃいます。
しかし、クラウドでの共同作業とは異なり、別の誰かがエクセルを編集していると入力できなかったりして不便ではないでしょうか。
マクロを作ってくれた医師が異動して困っている、、、などの声もありました。


「LINEで症例情報の共有をしています」

医療情報セキュリティ上の問題がある可能性があります。



このように、現場では様々な工夫はされつつも、外科系診療科の非医療業務領域のデジタル化は、まだアナログ状態 or 進んでいたとしても業務ツールの電子化で留まっている医療機関が大多数です。
医療DXを叫んでも、医療機関側がDX-Readyの状態ではありません。
その前段階として、医療機関のデジタル化が急務です。
まずは、これまでの業務フローや運用面での組織内文脈を弊社に伺わせてください!!
クオトミーでは「アナログ業務から業務のデジタル化」または「業務ツールの電子化から業務デジタル化」という医療機関のデジタル Level2 へのステップアップを支援し、医療DXへの足がかりを作ります。

※実はまだ少数派ですが、一部の医療機関さまでは非医療業務のワークフロー設計がデジタル中心になっています。Level 2!!
このような医療機関さまとは、医療DXにむけた先進的な取り組みを進めていきたいので、是非ご連絡ください!!

オペワンで非医療業務のデジタル化に取り組みます!

外科系医師・病院経営者向けの手術症例一括管理ソリューション「OpeOneオペワン」のお知らせです。
外科系診療チームがもつ「手術に関する情報(スケジュール、プラン、手術所見など)」をデジタルに一括管理し、手術に関わる医療者のワークフローを効率化する医療機関向けサービスで、外科系医師の働き方に対する具体的なソリューションを提案します。
気になった医療機関勤務の外科系診療科管理職の方や事務管理職の方はコチラの製品ページからお問い合わせください。

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