虐待犬ナツ 〜幸せな犬生へ〜
人からの虐待を受け、完全に心を閉ざしてしまった柴犬にアナタの人生の最後を看取ってもらえたら人として、どんな気持ちになれるんだろうか?
第十一話
この日も奈津と母親とナツの3人で公園に出かけ、公園には子供連れの家族や犬の散歩に来ている人達が沢山いた。
シートを広げて、母親の作ってきた弁当を奈津と食べ、母親はトイレに行くためその場を離れた。
奈津「ナツ今日もいい天気だね。お外に出るって気持ちいいね」
ナツに寄り添い、頭を撫でながら話かけていた。
そこへ3人の奈津と同じ年くらいの少年達がやってきた。
「おい見てみろよ、この犬耳も尻尾もないよ!」
「本当だ。変な犬。犬なのに耳も尻尾もない奴いるんだ!」
少年達はナツを指差しながら、ナツへの酷い言葉を投げ掛けていた。
奈津「……」
「この女も車椅子だし、可哀想だな」
少年達は笑いながら奈津も指を指して馬鹿にしたように話続けた。
奈津「…何よアンタ達、あっち行ってよ」
奈津は怯えた表情で言い返した。
1人の少年がナツに近づき、持っていた棒でナツの体を叩くように仕草をした。
奈津「やめてよ」
その時だった。
ナツは立ち上がり、
ウゥゥと唸り声を上げ始め、少年達に威嚇を始めた。
奈津「ナツ、怒っちゃダメよ」
それでもナツは唸り声をやめずに、近づいてきていた少年に近寄って行った。
その少年は後退りしながら、その場を離れたが、
ナツは2人の少年の方にも近づいて行った。
奈津「ナツ、ダメよ、やめてって。」
奈津はナツの胴体に腕を回し止めようとしていた。
ちょうど母親がトイレから戻ってきているところで、遠目から異変に気づき走って戻ってきた。
母親「奈津どうしたの?」
母親はナツの前に立ち、ナツを抑えつけるようにした。
奈津「この男の達がナツを馬鹿にしてナツが突然怒り出しちゃって。…」
母親は1人の少年の腕を掴み話かけた。
母親「君たちはどこの子?うちの子に何をしたの?」
少年「知らないよ。離してよ。」
母親「知らないはずないでしょ。うちの子が何もなくて怒るはずないの。何をしたのか教えて。」
少年「…その犬の耳と尻尾がなかったから…」
母親「耳と尻尾がなかったから何なの?変だったの?耳と尻尾がなかったら馬鹿にするような態度していいの?この子はナツっていうの。小さい時から過酷な環境で育って、今の姿になったの。それでも一生懸命生きようと頑張って、娘の奈津は一生懸命に面倒見て、今3人でこうやって公園に遊びに来てるんだよ。君たちにとっては変な犬になっちゃうかもしれないけど、私と奈津にとっては宝物なんだよ。」
母親は少年の腕を強く掴みながら少年達を叱った。
「…ごめんなさい。」
少年達は目に涙を浮かべながら、謝り立ち去っていった。
母親は奈津を抱きしめながらナツの頭を撫で、
母親「ナツありがとね。奈津の事守ろうとしてくれたんだね!」
奈津「ママ、怖かったよぉ」
母親「ナツは奈津の事守ろうとしてくれてたんだよ!奈津以上にナツの方が怖かったと思うよ。初めてナツが立ち上がってくれたしね!」
奈津は母親の腕の中で泣きじゃくった。
この日から半年後、ナツの犬生において2回目の立ち上がる事になる出来事が起きる。
親友、奈津の死だった。
第十二話に続く
「ど・ヤンキーホームレス中村君」
2018年11月7日。
東京都府中市の伝説のホームレスヤンキーは、
34歳の若さでこの世を去った──。
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最後まで見て頂いて本当にありがとうございます! 皆さんに喜んで頂ける物語を今後も頑張って作っていきたいと思います!宜しくお願いします