虐待犬ナツ 〜幸せな犬生へ〜
人からの虐待を受け、完全に心を閉ざしてしまった柴犬にアナタの人生の最後を看取ってもらえたら人として、どんな気持ちになれるんだろうか?
第九話
奈津が自宅での療養になり、帰宅に備えてナツをセンターから奈津の自宅へ戻す事になった。
奈津「ようやくナツに会えるんだね!良かった。」
母親「良かったね!ナツも家で待ってるから早く帰ってあげようね」
車に乗り母親の運転で家に向かっている車中で、お爺さんと散歩をしている柴犬を見て奈津は母親に問いかけた。
奈津「ママ、なんでナツは尻尾がないの?耳の形もあのワンチャンと違う。」
母親「...奈津には理解できない事かもしれないけど、ナツは私達と同じ人間から虐待という暴力を受けて心も体も傷ついてしまったんだよ...ナツは虐待を受けていなければ、さっきのワンチャンみたいに尻尾も耳もあって元気に外を散歩できていたのかもしれないね。どんなに酷い事をされても生きたいっていう強い気持ちがあるから、今もナツは心に傷を追ってしまってるけど、一生懸命に生きてるんだよ。」
奈津「なんでナツにそんな事するの?」
母親「奈津は絶対にそんな事はしないと思うけど、人の中には自分よりも弱い動物をイジメしまう人もいるの。そんな事は許せないし、許してはけない事。ナツを保護してくれていたカタツムリ保護センターには、ナツみたいな境遇の子や、捨てられてしまった子などがいるんだよ。実際にナツは受けてしまっているから、今のナツをどうやって幸せな一生を過ごしてもらうか私達で頑張っていこうね。」
奈津「そうだったんだね...本当に可哀想だよ。」
自宅に到着し、奈津は真っ先にナツの元へ向かった。
奈津「ナツただいまぁぁぁ!」
凄く大きな声で、最高の笑顔でナツに話しかけたものだから丸まって寝ていたナツは顔上げ、ビックリしたような表情になっていた!
奈津「ナツ久しぶりだね!帰ってきたよ。ナツと会えなくて本当に寂しかったよ。」
奈津は車椅子から降りて、ナツの頭を撫でながら、ずっとナツに寄り添い久しぶりの至福の時間を過ごしていた。
奈津「私は絶対にナツに嫌な思いはさせない。絶対にナツと元気になって毎日散歩行こうね」
母親「奈津、もうお布団でお昼寝しようね。」
奈津は首を横に振った。
奈津「ナツと一緒に寝るからこのままでいい。」
母親「駄目よ。しっかり体休めないと奈津の体調が良くならないよ。」
奈津「ママ、今日だけお願い。ナツと一緒に寝かせて。」
母親「分かったわ。今日だけだからね。」
この日、夜眠る時間まで奈津はナツに寄り添い続けた。
奈津「ナツ、夜は一緒に眠れないけど、絶対に起きたらすぐにナツのところ来るからね。」
そう言い残し奈津は母親と寝室へと向かった。
奈津「ママ、私の体はいつ良くなるの?」
母親「きっとすぐに良くなるよ。」
奈津「私の体が早く良くならないとナツは寂しい思いしちゃうと思う。」
母親「そうね。だから早く良くなるようにいっぱい寝ようね」
次の日の朝も起きてすぐにナツの元へと向かい、一日ナツに寄り添い語りかけていた。
奈津「ママ、ナツを連れて公園行こうよ。」
母親「まだ駄目よ。お医者さんも外出の許可は出してくれていないから。もうちょっと我慢してね」
奈津「はーい、、、ナツ私の体が良くなるまでもうちょっと待っててね」
こんな日々が続いていたが、奈津の体を蝕む病魔は日に日に奈津の体調を悪化させていた。
自宅に戻ってから1ヶ月後の日だった。
いつものようにナツに寄り添っていた、奈津が苦しそうに胸を抑えていた。
母親「奈津、大丈夫?すぐに病院連れて行ってあげるからね。」
苦しそうにしながら、
奈津「ママ嫌だよ。病院行ったらまたナツに会えなくなっちゃう。」
母親「何言ってるのよ。すぐに病院行くよ」
母親は奈津を抱き抱え、嫌がる奈津を病院へと連れて行った。
医者「お母様、奈津ちゃんの病気の進行はもう止める事はできない状況まできてしまっております。今の状態で、もっても残り1ヶ月かと思われます。」
母親「先生なんとかならないんですか?なんとか少しでも長く生きさせてあげられる方法はないんですか?」
医者「私達もいろんな手段を考えましたが、奈津ちゃんの病の進行を止める事はできません...」
母親「そうですか...」
医者「今日は病院で観察させて頂きたいと思います。」
奈津の余命宣告、1ヶ月が言い渡され母親はその場で泣き崩れた。
この日の夜奈津の体調は落ち着き始め、母親は朝まで奈津の看病をした。
二日間病院での入院をして、また奈津は自宅へと戻った。
奈津の余命は残り1ヶ月を切っていた。
自宅でも酸素マスクをつけていたため、ナツに寄り添う事が出来なくなっていたため、ナツを奈津のベットにのせて2人は寄り添って寝るようになっていた。
酸素マスクを外して母親が奈津に体調を尋ねた。
母親「奈津、今日の体調はどう?」
奈津「...」
母親「無理しないでいいから、ゆっくり寝ててね。」
奈津「...ママ...公園に行きたい」
奈津からの突然の要望に母親は考え込んだ。日に日に悪化してしまう奈津の体調、今日行かなかったら二度と行ける日は来ないかもしれない、そう思い、
母親「分かったわ、じゃあナツを連れて3人で外に行こうか!」
奈津「...うん。」
第十話へ続く
「ど・ヤンキーホームレス中村君」
2018年11月7日。
東京都府中市の伝説のホームレスヤンキーは、
34歳の若さでこの世を去った──。
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実際に暴走族だった作者の体験をもとに書かれた血湧き肉躍る青春フィクション。
最後まで見て頂いて本当にありがとうございます! 皆さんに喜んで頂ける物語を今後も頑張って作っていきたいと思います!宜しくお願いします