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ククブクの味見

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海外の料理本のことならククブクにお任せ! 優れたデザイン性があり、コンセプトにひとと風土と文化が見える海外の料理本「cookbook」を紹介するマガジン「ククブク」を、noteで…
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2020年3月の記事一覧

外に出られないときは他人の人生を生きてみよう

いまだから読みたい料理家たちの回想録 新型コロナウイルスの拡大防止にともなう自宅待機などで、日本では書店がにぎわっているのだとか。 本の利点は、低額で長時間楽しめる娯楽であること、何かと騒がしいメディアから距離を置いて集中できることなどがあると思います。 そんな状況は海の向こうのアメリカも同じようで。 ぼくの友人がTwitterでニューヨークのストランド書店が閉店しているようすを投稿していましたが、 これは日本よりも深刻な状況になってきているニューヨークにおける感染防

絶対菜食ニュージャパン

和食のなかにヴィーガン料理を見つけるcookbook 日本の料理本でもその兆しが見えてきていますが、欧米では新たに出版されるcookbookのテーマが「ヴィーガン」であることの多いこと、多いこと! ぼく自身はまったくこだわりがないのですが、ここ最近ククブクで取り上げるcookbookも必然的にヴィーガン食のものが多くなっています。 今日お届けするのは、ぼくたちがいつも食べている日本料理のなかに「ヴィーガン性」を見出しているイギリスのcookbook。 たくさんのcook

名バイプレイヤーはいつもそこにいる

副菜調理はこれ一冊でおまかせ 映画の話なのですが。 ぼくが敬愛する作家ポール・オースターが監督・脚本を務めた『ルル・オン・ザ・ブリッジ』という映画があります。 主人公のサックス奏者(ハーヴェイ・カイテル)が発砲事件で重傷を負ったのち、青い石を拾ったことで謎の集団に監禁され尋問を受けるんですが、その尋問をする博士役に、オースターは当初作家のサルマン・ラシュディを考えていたんだそうです。 しかし彼を起用する直前に制作スタッフたちの安全を保証できないということで(どうしてかは

晴れたら空で豆食べて

だっていま豆料理がとってもクールだから 豆料理、食べてますか? ぼくは昔はそんなに豆が好きではありませんでしたが、年を重ねるにつれて豆の魅力に気づき、いまではキッチンに5種類の豆(ひよこ豆、レンズ豆、白いんげん豆、レッドキドニー、小豆)を常備し、こんな煮込み料理などを作ったりしています。 豆の種類によって味や食感を変えることができるのが便利ですよね。 豆料理を作るとき、ぼくは誠文堂新光社の『世界の豆料理』をよく参考にしています。 今日はそんな豆料理のレパートリーをさら

SNSの時代こそ、声なき声に耳をかたむけよう

2月に全米を騒がせたある料理本論争 フェミニズムをめぐる議論は最近とても活発ですよね。 なかには、それはかえってフェミニズムの本質から議論をそらしてしまうんじゃないかという報道もあって、日本でもあんなことや、こんなことがあったのは記憶に新しいところ。 この騒動の火付け役となったのはアメリカ人らしいですが、そのアメリカで2月、とあるcookbookをめぐってこんな論争が巻き起こっていました。 議論がだいぶ下火になってきたあとの、ニューヨーク・タイムズ紙の2月21日付けの記

世界を接続するものとして料理を考えるとき

美味しい料理の4大要素の著者インタヴューより 先日は10年代のcookbook業界の最大の功労者、ヨタム・オットレンギの新刊についての情報をお伝えしました。 野菜が主体の、フレーバー(味、香り、食感)をメインテーマに据えたcookbookが9月に発売されるんでしたよね。 今日は10年代末に彗星のごとくあらわれ、料理の4大要素について唱えたあのcookbook作家の新作情報をお伝えしようと思います。 情報元はフード情報サイト「ザ・テイクアウト」の2月24日付け記事です。

セプテンバー・フレーバー

オットレンギ待望の新刊が9月に発売 2010年代に世界でもっとも活躍したcookbook作家はだれだと思いますか? いろいろな意見があると思いますが、アメリカの批評誌「マザー・ジョーンズ」誌では10年代を「オットレンギの10年」として、ヨタム・オットレンギを挙げています。 この記事自体はまた別の機会に翻訳するとして、レシピの同時代性や書籍の発行部数を考慮しても、まあ確かにオットレンギが10年代を代表するcookbook作家だというのは納得のいくところです。 そんなオット

ロック、スポーツ&トゥー・ヴィーガン・クックブックス

あの「ダーティ・ヴィーガン」が帰ってきた! ちょうど去年のいまごろ、新元号は「美願(ヴィーガン)」になるんじゃないかと言いながら、ある一冊のcookbookをご紹介しました。 それがこちら。 マット・プリチャードの『Dirty Vegan』です。 あれから1年が経ち(新元号は「令和」となり)、このcookbookの続編が発売されることがわかりました。 昨年大晦日に(遅くてゴメン!)イギリスのテレグラフ紙に掲載された記事から見ていきたいと思います。 *** 続きはぜ