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WAY WAVE @GARRET udagawa(20230312)

 声が響くフロアに横溢した、ソウルシスターズの漲るファンクネス。

 “アトロク”の愛称で親しまれている、RHYMESTERの宇多丸がパーソナリティを務めるTBSラジオ『アフター6ジャンクション』(ジングルがカッコイイ)の3月7日(火)放送分にて、同番組の音楽コーナー「LIVE & DIRECT」に出演、ライヴ音源を聴いた宇多丸から絶賛されるなど(といっても、宇多丸はだいたい絶賛しているが)着実にその名を広めているシスターズ・ソウル・ユニットのWAY WAVE。昨年末リリースのシングル「ソウル・シュガー」では忌野清志郎ほかとの共演でも著名な三宅伸治をプロデューサーに招くなど、実力あるミュージシャンたちとのコラボレーションを展開し、高い評価を得ているなか、第53回となる定期公演「部員集会」を開催。東京・渋谷にあるGARRET udagawaには、部員(WAY WAVEのファン)やソウル、ファンク・ミュージックの好事家、“アトロク”経由など、さまざまな人たちがオーディエンスを形成し、ソウルフルな宴を享受した。

 ゲスト・アーティストとの対バン&コラボレーション・スタイルが顕著だった定期公演「部員集会」だったが、2023年第1弾は前回(記事 →「WAY WAVE @LOFT HEAVEN」)同様にPARIS on the City!や空中カメラのベーシストの田中裕一と、伊澤一葉やYun*chiらにドラムで参加しているちーさーことワタナベチヒロがサポート・ミュージシャンとして参加した全編WAY WAVE仕様に。スペシャルゲストにはWAY WAVEの後輩のキッズダンス・ユニット"ダンスナッツ”をラインナップ。もちろん専属DJのarincoも顔を揃え、ライヴの本来の楽しさを満喫するようなステージとなった。

 出囃子となるスライ&ザ・ファミリー・ストーン「ダンス・トゥ・ザ・ミュージック」を用いたイントロダクションから、賑やかなムードで包まれる。「モノクロのキミ」では途中でゆったりとしたラヴァーズロック・テイストへ落とし込み、フックで転調を戻してからの「ソウル・ファンキー・ミュージック!」のコール&レスポンス、ファンキー・ヒップホップ・テイストの「最高の彼氏」では、ストリート風のフロウからフックの「最高!最高!最高!」のファンキーなコールへ繋げるなど、序盤からヴォルテージが上昇。その熱が暴発するのを予測してか、ホーンを効かせた哀愁ラヴァーソウル風の「ひとりぼっち」でクールダウンするなど、ソウルクイーンの面目躍如といったパフォーマンスで魅了していく。

 「部員集会へようこそ!」の呼びかけからのフロアのレスポンスに「これ!これ!」と頷くシスターズ。声出しが許され、本来の形のライヴが戻ってきた瞬間に感激と喜びを実感したようだ。「声が出せる喜びを分かち合うために全力で〈ヤッター!!〉と言ってもらいたい」という杏奈らしいリクエストにオーディエンスが応えると、フロアに万雷の拍手と歓声が沸き起こった。優奈の「声があると嬉しい!」との言葉は、ステージに立つ者としての心の底からの声なのだろう。

 シスターズによる弾き語りは「どうでもいいのさ」「妄想デートソーダ割」の2曲。「どうでもいいのさ」はズッチャズッチャという軽快なリズムで牧歌的なソウル・ポップ。「女子って人の恋愛とか興味ないとか言っておきながら、結局その話題で酒飲むのが好き」という"女子あるある”をそのまま歌詞にしたという「妄想デートソーダ割」は、グルーヴィなギターに導かれるファンク歌謡。レトロで野暮ったさも滲ませる作風は、タイトルや歌詞よろしく下世話な興味に尽きない居酒屋トークの世界観にシンクロするようで、フックのハーモニーコーラスも耳を惹いた。

 前回からスタートした田中、ちーさーを招いた4名編成でのバンドコーナーでは5曲を披露。その冒頭の「ダウンタウングラデーション」は、タイトルからも想起出来るような、夕映えの海が似合うようなAORや当世でいうシティポップといったリゾート・サウンドが特色。とはいえ、そこはソウルシスターズゆえ、スタイリッシュというよりもセンチメンタルなノスタルジーを横溢させるアレンジで黄昏を浮かび上がらせていた。
 「祭囃子」は、さまざまなソウル曲の要素をパッチワーク風に散りばめたようなファンキー歌謡。田中がシンセベースへスイッチしての「ビリビリBEAT」は、フックのファルセットからの意気盛んなメロディ展開が美味。

 JBマナーのビートが這う優奈作の(杏奈いわく「不倫の歌!」)「2番目の女」でバンド・セクションを終えると、杏奈のソロ弾き語りによる「青い空と小麦畑」、さらにダンスナッツとの共演へ。「青い空と小麦畑」はウクライナでの戦争に思うことがあって、ウクライナの国旗になぞらえたタイトルにしたとのこと。政情をテーマにした楽曲はWAY WAVEでは珍しいが、政治・社会問題を表現するコンシャスな内容の是非は別として、自らに宿った感情や想いを歌へ託したいという能動は、表現者としての矜持として続けてもらいたいところ。楽曲はBONNIE PINKが歌いそうな切なくも希望が見えるミディアムという印象だった。
 Da-iCE「Clap and Clap」をバックにキュートなダンスを披露したのが、キッズダンサーのダンスナッツの面々。さらにシスターズが加わっての「SUMMERGIRL」は、明るい花がパッと咲き並ぶような爽やかで愛らしい、頬が緩む空間となった。

 ソウル・カヴァーはグラミーにもノミネートされたスウィング・アウト・シスターの代表曲「ブレイクアウト」とホイットニー・ヒューストン「すてきなSomebody」の2曲。「ブレイクアウト」では、"オプティミスティック・アルトフルート”とも言われるコリーン・ドリュリーの低域ながら明るいヴォーカル・メロディゆえやや歌いづらそうな感もあったが、転調してせり上がるような終盤にWAY WAVEらしい活気溢れるテイストで盛り上げに成功。「すてきなSomebody」はおそらく自身の最も好きな楽曲の一つなのか、肩肘張らずに愉しく歌うことに特化したような姿勢が見られ、大声で歌い響かせたいという感情を全身で表現していた。

 "ズズン ランラン ズズン ラン”のコーラスと唸るようなヴォーカルで腰を揺らせる「おどれないけどおどりたいの」からはクライマックスへ。昨年12月リリースの『ソウルシュガー』収録の「またね」からタイトル・チューンの「ソウルシュガー」で本編は終了。「ソウルシュガー」での「ナナナーナ ナーナ ナーナナナナー」のレスポンスに「最高です!」を繰り返し、破顔でのステージアウトとなった。

 アンコールは新曲「合コン三昧オーイエイ!」を。これまでにギター演奏で披露したことがあるそうだが、WAY WAVEがコーラスで参加することになった、東京スカパラダイスオーケストラの茂木欣一や大森はじめらと結成したバンド"THE GOOD KIDS”のリーダーで、KINGBEESやThe 3peaceで活動し、HRK名義で乃木坂46などへ楽曲提供をしている原広明がアレンジしたニューヴァージョンで披露。何ともWAY WAVEらしいタイトルによるチアフルな楽曲を、より賑わいを高めたアレンジに仕立てて、合コンよろしく「オーイェー」の声が往来する歓宴のようなエンディングとなった。

 姉妹ならではの阿吽の呼吸とシンクロ性はもちろん、安定感あるヴォーカルは健在だったが、そこへライヴを共に作るオーディエンスの声への喜びが重なり、パッションの昂ぶりも垣間見えたステージ。ライヴは生き物ということを実感し、歌えることの充実感に満ちていたのは、その表情からも窺い知れた。ライヴ途中で優奈が「いつかバンドワンマンするから!」と口走った時があったが、WAY WAVEの音楽で多くの人たちと楽しさを享受し合いたいという想いがついこぼれてしまった……そんな瞬間だったのかもしれない。WAY WAVEのグルーヴの波は勢いづいていきそうだ……そんな予感が脳裏をかすめながら、渋谷の街を後にした。

◇◇◇
<SET LIST>
00 INTRODUCTION(include phrase of "Dance To The Music" by Sly & The Family Stone)
01 マジカル恋愛体質(with arinco)
02 モノクロのキミ(with arinco)
03 最高の彼氏(with arinco)
04 ひとりぼっち(with arinco)
05 どうでもいいのさ(sing wiht play a guitar)(with arinco)
06 妄想デートソーダ割(sing wiht play a guitar)(with arinco)
07 ダウンタウングラデーション(with BAND)
08 祭囃子(with BAND)
09 ウエディングラッシュ(with BAND)
10 ビリビリBEAT(with BAND)
11 2番目の女(with BAND)
12 青い空と小麦畑(杏奈only with a guitar)
13 ダンスナッツDance Section "Clap and Clap"(by Da-iCE)(with arinco)
14 SUMMERGIRL(with ダンスナッツ, arinco)
15 Breakout(Original by Swing Out Sister)(with arinco)
16 I Wanna Dance with Somebody(Original by Whitney Houston)(with arinco)
17 おどれないけどおどりたいの(Original by ズクナシ)(with arinco)
18 WAVY GIRL(with arinco)
19 またね(with arinco)
20 ソウルシュガー(with arinco)
≪ENCORE≫
21 合コン三昧オーイエイ!(New Song)(with arinco)


<MEMBER>
WAY WAVE are:
Anna Koike / 小池杏奈(vo,g)
Yuna Koike / 小池優奈(vo,g)

DJ arinco(DJ)

田中裕一(b,syn b / PARIS on the City! / 空中カメラ)
ちーさー / ワタナベチヒロ(ds)
Special guest:
ダンスナッツ(dance)

WAY WAVE 第53回部員集会

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【WAY WAVEに関する記事】
2020/01/19 HALLCA,WAY WAVE @渋谷 RUIDO K2
2020/12/13 HALLCA,WAY WAVE @渋谷 RUIDO K2
2021/04/09 天野なつ ✕ WAY WAVE @下北沢CLUB251
2021/10/17 Mia Nascimento / WAY WAVE @GARRET udagawa
2021/11/17 WAY WAVE @TOWER VINYL SHIBUYA【インストア】
2022/02/13 WAY WAVE / ユメトコスメ @GARRET udagawa
2022/05/03 WAY WAVE @TOWER VINYL SHIBUYA【インストア】
2022/08/11 WAY WAVE @GARRET udagawa
2022/12/10 WAY WAVE @LOFT HEAVEN
WAY WAVE @GARRET udagawa(20230312)(本記事)

もし、仮に、気まぐれにも、サポートをしていただける奇特な方がいらっしゃったあかつきには、積み上げたものぶっ壊して、身に着けたもの取っ払って……全力でお礼させていただきます。