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Furui Riho @代官山UNIT(20230109)

 才と彩が飛躍を生む、充実の80分。

 自身は“嫌い”だという愛らしい丸顔の頬にエクボを作りながら「私ちっちゃいんですけど、後ろの人見えてますか? 大丈夫ですか?」と語り掛け、その反応を文字通りの声で受け取り、にこやかな笑顔でフロアを見渡す。早々とソールドアウトとなったことに「チケット発売後すぐに手に入れた人たちが多いってことは、“Furui Riho愛を持った精鋭のチーム”がここにいるってことでしょ?」と感謝を伝える表情も、悦びに満ち溢れていた。10ヵ月ぶりとなるFurui Rihoのワンマンライヴ〈Furui Riho Oneman Live 2023 "Beginnings"〉は、Furui Rihoの勢いの加速度をさらに高める充実のステージとなった。

 個人的に彼女を生で初めて観たのは、2021年4月の代官山・SPACE ODDでのライヴ(→「Furui Riho @代官山SPACE ODD」)だったから、まだ2年弱しか経っていない。当時はまだフル・アルバムはおろか公式なフィジカルCDもなかったが、昨年3月に待望のフル・アルバム『Green Light』(レビュー→「Furui Riho『GREEN LIGHT』」)が放たれると、8月にシングル「We are」、10月よりオンエア・スタートとなった夏子主演のドラマ『アイゾウ 警視庁・心理分析捜査班』の主題歌へ「ウソモホント」を書き下ろすなど、俄然注目度が高まっていることもあり、会場の代官山UNITは後方のバーカウンターまで彼女の一挙手一投足を目に焼き付けようというFurui Rihoラヴァーで一杯に。

 ちなみに、SPACE ODDのキャパシティが約300名なのに対し、ここ代官山UNITのそれは約600名。アルバム・リリースからFurui Rihoを知ったり、初めてライヴを観るというファンが3分の1ほどいたから、この1年で急激な“勢い”をつけたというのも頷ける。倍加したオーディエンスが自身の音楽に揺れる光景は、さぞかし快感だったに違いない。

Furui Riho

 そのFurui Rihoを支えるのは、バンドマスターで同郷の盟友・“ブーちゃん”ことハナブサユウキと(よく見ると違うが、最初の印象から北海道のVaundy=ブウンディと勝手に呼んでいるのはここだけの話)、エドガー・サリヴァンやMEMEMION(ミームミオン)のギタリストの坂本遥(元THEラブ人間)。昨春の渋谷Veatsでのライヴ(→「Furui Riho @Veats SHIBUYA」)では、同郷のドラマーの三浦隆之介が加わっていたが、今公演ではドラムレスのトライポッド編成。長年活動を共にしてきたハナブサユウキを中心としたセットゆえ、阿吽の呼吸で歌とビートが跳ねるサウンドメイクはお手の物だ。

 オープナーの「I'm free」からソリッドでシリアスなデジタル・ダンサー「Sins」、バンド・メンバーに“グリーン・ライト”が当てられるなか、鍵盤とギターが映えるイントロをプラスしたライヴ仕様のアレンジでスタートした「青信号」、「今日は、声出しても、いいらしいよ?」「踊っちゃっても、いいらしいよ?」とオーディエンスを煽ってからフロアにチルなヴァイブスを生み出した「Candle Light」まで一気に捲し立てると、「We are」では2名のダンサーを呼び込んでジョイフルなムードに。歌唱前には、ダンスを入れたら可愛いかなと思ったけれど、自分が踊ることを想定せず、恥ずかしいから「今日は踊りません」と言ってゲストダンサーを呼び入れたのだが、途中からダンサーに促される形でしっかりとダンスを披露。歓声のなかで歌い踊り、最後は笑顔でピース。「正直言っていい? めちゃくちゃ練習した」と茶目っ気たっぷりに“種明かし”をしてくれた。「抱きしめられたい人!」と言って始まった「ABCでガッチャン」は、オーディエンスに歌唱を促しながら、「We are」のジョイフルなヴァイブスな流れにラヴリーなそれをプラス。演奏後、しばらく自身をギュッと抱きしめたポーズのまま「一人一人抱きしめたいところですが、ステージの上から失礼させていただきます」というハートフルなサーヴィスも。

 中盤には、自身のライヴMCでの叫び掛ける練習(「トーキョー! 盛り上がってるか―!」「お前ら、盛り上がってんのかー!」など)をドアを開けたまましてしまって恥ずかしかったという失敗談から、失敗ばかりしたり、コンプレックスが多い自身のことについて語った楽曲「Till The End」「嫌い」「でこぼこ」を投下。特に「Till The End」はオリジナルの低温なラップを融解するような歌唱とが絡む陰影あるトーンで展開するが、ここではアコースティック風のバラードに変貌させてメッセージの訴求力を高め、オーディエンスの心を奪う演出に仕立てていたのが印象的だった。

 ライヴ恒例のサンプラー・セッションでは、彼女が好きだというトラックメイカー/プロデューサー/MPCプレイヤーのSTUTS(スタッツ)になぞらえた“RihoTS”(リホッツ)としてビートメイク。(久保田利伸のライヴの間奏にも登場しそうな)ファンキー&ロッキンなグルーヴで、再びフロアをホットなパッションをもたらすと、青と赤のライトとオーディエンスのクラップが交差するなかで「ウソモホント」、代表曲「Rebirth」と畳み掛けて本編は終了。印象的なギターフレーズと伸びやかなフックが魅力の「Rebirth」は、決して開放的なメロディではないのに、いつ聴いても胸がすくパワーを感じるのは、やはりFurui Rihoの情感溢れるヴォーカルがゆえだろう。曲中で眼力強く焚きつけるように放った“今からね これから 何か変わる気しかしてないわ!”というフレーズは、まさしく現在の充実と躍進を実感しているからこその説得力と言える。

 アンコールでは、ピンク系のトップスに緑とオフホワイト系の市松模様のハーフカーディガンを羽織ったスタイルから、グッズのロングスリーヴTシャツ姿へと模様替えして、2月にリリースするという初披露の新曲「ピンクの髪」と、曲途中に再度ダンサーが加わっての「Purpose」を。この日のピンクに染めた三つ編みツインテールヘアにリンクしたようなタイトルの「ピンクの髪」は、ヒップホップソウル的なアプローチとFurui Rihoらしい抑揚あるメロディラインが跳ねるグルーヴを生む、グイグイと這うような展開が妙味だ。

 ラストの「Purpose」前には、5月7日のワンマンライヴの開催を発表。ドラムロールをもって告げられた会場名は、恵比寿・LIQUIDROOMだった。前述のように、2021年4月の代官山・SPACE ODDが300名、2023年1月の本公演・代官山UNITが600名ときて、5月のLIQUIDROOMは1000名のキャパシティとなる。自身のパフォーマンスに対する充足やオーディエンスの反応を見るに、この加速度も納得どころか、さらに高まりそうな気配すらある。昨年自ら掲げた“グリーン・ライト”=青信号は、引き続きその光を遠くへ、強く輝度で灯していく……そんなFurui Rihoの2023年のさらなる飛躍する姿が胸に去来したステージとなった。

◇◇◇

<SET LIST>
00 INTRODUCTION
01 I'm free (*GL)
02 Sins (*GL)
03 青信号 (*GL)
04 Candle Light (*GL)
05 We are (with dancers)
06 ABCでガッチャン (*GL)
07 Till The End (Original by Furui Riho & Jazadocument feat. Michael Kaneko)
08 嫌い (*GL)
09 でこぼこ (*GL)
10 Session Section(Track making session with sampler)
11 ウソモホント
12 Rebirth (*GL)
≪ENCORE≫
13 ピンクの髪(New Song)
14 Purpose (with dancers)(*GL)

(*GL): song from album “Green Light”


<MEMBER>
Furui Riho(vo, sampler)
ハナブサユウキ / 英佑紀(key, Band Master)
Haruka Sakamoto / 坂本遥(g/MEMEMION, EDOGA-SULLIVAN)

Erika(dancer)
Sarina(dancer)

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【Furui Rihoに関する記事】
2021/04/17 Furui Riho @代官山SPACE ODD
2021/12/11 Furui Riho @WWW
2022/03/11 Furui Riho『GREEN LIGHT』
2022/03/13 Furui Riho @Veats SHIBUYA
2023/01/09 Furui Riho @代官山UNIT(20230109)(本記事)

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