見出し画像

Furui Riho @EX THEATER ROPPONGI(20240607)

 躍動と愉悦を生んだ、秀抜なグルーヴに酔うツアーファイナル。

 5月3日の福岡を皮切りに大阪、札幌、名古屋と巡ったFurui Rihoのツアー〈Furui Riho Live Tour 2024 -Love One Another-〉も、とうとうファイナル。Furui Riho史上最大規模となる東京・六本木にあるEX THEATER ROPPONGIでのステージは、持ち前のハッピーなヴァイブスと近年の躍進で培った自信が窺える泰然たるパフォーマンスを繰り広げていった。

 カナダのポップ・バンド“ウォーク・オフ・ジ・アース”の「ハッピー・スタッフ」がフロアに流れるなかで、バンドメンバーがステージイン。オーディエンスにクラップを促しながら、イントロダクションを奏でると、暗転からスポットライトへと変わったステージにFurui Rihoが登場。一身にファンからの歓声を受けながら「Your Love」を歌い出すと、ツアーの集大成の時が一気に動き出した。

 「Candle Light」を歌い終え、「ついにきたーッ!」と言ってみたかったという「2階席ーッ!」と叫んで、観客で埋まった会場の大きさを改めて実感した様子。ドラムの守真人、ベースのNaoki Kobayashi、ギターの坂本遥、コーラスで実妹のMa-chang、キーボードでバンドマスターのハナブサユウキという盟友たちを紹介して、フロアが温かいムードに包まれるなか、ライヴでの定番曲「Do What Makes Me Happy」へ突入。坂本がギターソロで見せ場を作り、ゴスペル調ソングらしい心地よいグルーヴでオーディエンスに微笑みをもたらしていた。

 冒頭でしっとりと「Your Love」を歌い終え、ライヴならではのアレンジのイントロから続いたのが「Rebirth」。以前は本編の最後を飾る重要曲だったが、『GREEN LIGHT』『Love One Another』とアルバムをリリースを重ねたことで、「Rebirth」に依存しないヒット・アンセムや佳曲が生まれた現在地を示していた。もちろん伸びやかなハイトーンは健在だが、かつてのように楽曲に想いを込め過ぎない、等身大で軽やかに歌い舞う「Rebirth」に、Furui Rihoの充実ぶりを感じざるをえなかった。

 その「Rebirth」で完全に勢いに乗ると、「PSYCHO」「ピンクの髪」とアップテンポの曲でさらにフロアのヴォルテージを高めていく。その後のMCで照明の良さに触れ、「ブルーノ・マーズ(のライヴ)みたいにしてくださいと頼みました」と茶目っ気たっぷりに言っていたが、「ピンクの髪」ではもちろんピンクに、ファンキーなバンド・インタルードとともに披露したダンスチャレンジの直後の「ウソモホント」では青と赤に、ソリッドなアプローチが耳を惹くクールなダンス・チューンの「Sins」では直線的で鋭角な印象のライティングに、アルバム『GREEN LIGHT』のタイトル曲となった「青信号」では文字通りグリーンのレザーライトにというように、楽曲の世界観をより想起させる視覚演出で、ステージにヴィヴィッドな華やかさとドラマティックな瞬間を構築していたのは、非常に効果的だったと感じた。

 ダンスチャレンジでは、男女ダンサーとともに笑顔で踊る姿がキュートで、本人は出だしの足の運びを間違えたと漏らしていたが、「Super Star」に続いて披露した「We Are」は、以前のステージでもダンス・パフォーマンスをしていたから、チャレンジというよりも今後も演出の一つとして定着していくはずだ。グルーヴを掴むことに非常に長け、それをヴォーカルに昇華させることに秀でている彼女ゆえ、リズムをとるセンスは、ダンス・パフォーマンスにも通じるところがあるのだろう。ダンサーに挟まれながら、息の合ったステップを踏み、オーディエンスの快哉を呼んでいた。 

 「Sin」や「青信号」といった刺激的な楽曲から、ゴスペルライクな、ハートウォームで琴線に触れるメロディが安堵を呼ぶ楽曲まで、音楽的振幅の広さも厭わないバランス感覚を持つ彼女だが、そのセンスはトークにも。「青信号」でオーディエンスにジャンプを促したところ、一緒にジャンプしていたハナブサユウキが足を攣るハプニングを尻目に、東京へ引っ越してから部屋で初めて見て、見事退治した“G”の話などで笑いをもたらしていた(ハナブサユウキが「“G”って1匹出ると…」と話し出した瞬間、この日Furui Riho宅に宿泊する虫嫌いの妹Ma-changを慮ってか、「そういうのはいいんです」と遮り、次の曲へ雪崩れ込んだのも面白かった)。

 ヴォーカルワークの良し悪しは、ゆったりとしたバラードなどで顕著に出るが、個人的にはリズミカルなダンス・チューンでは“ノリ”のセンス、要するにグルーヴの波を掴めるかどうかが問われると思っている。ライヴでは華やかに歌えていると見えても、実はバンド・サウンドに乗り切れないまま終わってしまう歌手も少なくないなかで、Furui Rihoは天性のリズム感とバランスで、あっさりとこなしてしまう。ダンサーと並んで歌い踊った「We Are」では、終始エンジョイモードのパフォーマンスを繰り広げていたが、ダンスしながら抑揚のあるメロディや跳ねたビートをグリップする力に改めて感服した次第だ。

 終盤は、自らのコンプレックスに触れながら、それでも自分を愛そうと呟く「嫌い」から『Love One Another』のタイトル曲「LOA」へ。曲調こそ異なれど、詞にしたためられたメッセージが刺さる2曲で本編は幕。背後に映し出された暖色系のライトによる「L O A」の文字とともに、“互いを愛する”を意味する『Love One Another』をほがらかな歌い口で届け、フロアにジョイフルな空気を満たしていった。

 アンコールは「I'm free」と「Purpose」の2曲を。万雷の拍手が鳴り響くなかで始まった「I'm free」は、いまや「Rebirth」と並ぶFurui Rihoクラシックスのひとつ。ところどころで感謝を述べながら、たおやかで伸びやかに歌う姿にオーディエンスが心地よく揺れる光景は、Furui Rihoが多くのファンに愛されるシンガーとして大きく成長した証左といえるのではないだろうか。「また会えることを期待して」という願いを携えて歌った「Purpose」は、ステージが終わりを迎える寂しさを微かに帯びてはいたものの、「明日また会いましょう 次はあの場所で」の詞のごとく、再会を誓えた喜びが胸に充溢したハッピー・エンディングとなった。

 「Purpose」演奏前に告げられたのは、初のビルボードライブツアー〈Furui Riho Billboard Live Tour -Do What Makes You Happy-〉開催の一報。10月19日に東京、翌20日に大阪とそれぞれのビルボードライブで行なわれる。この日抜群のコンビネーションで極上のグルーヴを創り上げた盟友バンドメンバーがそのツアーにも参加するとのこと。ライヴのみで歌われるゴスペル・マナーの「Do What Makes You Happy」がツアータイトルに冠していることもあって、いつも以上にぬくもりや幸福感に包まれるステージになりそう。チケットは争奪戦になるか。

 この日は2階席だったのだが、本音を言えば、もう少し音圧があれば、さらに空間全体がヒートアップできたのかとも。ただ、1階フロアのオーディエンスの反応を見ると熱量は大きかったから、それは2階席の端という座席だったのと、フロアから天井までの高さがそこそこあったことから、音をダイレクトに受けづらい位置だったのかもしれない。無論、不満を抱くということではなく、最後まで存分に楽しめた。

 楽曲やステージにおいては、硬軟、喜怒哀楽を取り揃えながら、ハッピーなヴァイブスを通底させていたツアーファイナル。オーディエンスとの交わした愛情の触れ合いも、その表情から鑑みるに、Furui Rihoの心を悦びで充足させたようだ。3年前は最大収容400名ほどの代官山SPACE ODDで観ていたのを、だいぶ昔のことように思い出しながら、昇竜の勢いの躍進ぶりも頷ける、見応えあるステージングと体内にほとばしる愉悦を感じたフライデーナイトとなった。

◇◇◇
<SET LIST>
00 INTRODUCTION(BGM "Happy Stuff" by Walk off the Earth)
01 Your Love (*L)
02 Rebirth
03 PSYCHO (*L)
04 ピンクの髪 (*L)
05 Candle Light
06 Do What Makes Me Happy
07 SAPPORO TOKYO (*L)
08 Friends (*L)
09 BAND INTERLUDE 〜 DANCE CHALLENGE〜
10 ウソモホント (*L)
11 Sins
12 青信号
13 Super Star (*L)
14 We Are (*L)
15 嫌い
16 LOA (*L)
《ENCORE》
17 I'm free
18 Purpose

(*L): song from album "Love One Another"

<MEMBERS>
Furui Riho(vo)
ハナブサユウキ(key / Band Master)
坂本遥(g)
Naoki Kobayashi(b)
守真人(ds)
Ma-chang(cho)
(dancer)
(dancer)

◇◇◇
【Furui Rihoに関する記事】
2021/04/17 Furui Riho @代官山SPACE ODD
2021/12/11 Furui Riho @WWW
2022/03/11 Furui Riho『GREEN LIGHT』
2022/03/13 Furui Riho @Veats SHIBUYA
2023/01/09 Furui Riho @代官山UNIT(20230109)
2023/05/07 Furui Riho @LIQUIDROOM(20230507)
2024/01/14 Furui Riho @LIQUIDROOM(20240114)
2024/04/22 Furui Riho @タワーレコード渋谷(20240422)〈In-store Event〉
2024/06/07 Furui Riho @EX THEATER ROPPONGI(20240607)(本記事)

〈Furui Riho Live Tour 2024 -Love One Another-〉

もし、仮に、気まぐれにも、サポートをしていただける奇特な方がいらっしゃったあかつきには、積み上げたものぶっ壊して、身に着けたもの取っ払って……全力でお礼させていただきます。