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Roomies @WWW(20230304)

 溢れ出すグルーヴの渦がいざなう、珠玉のスウィートネス。

 高揚と恍惚の合間を行き来するかのごとく、心地よいグルーヴにたゆたうというのは、このステージのことを言うのだろう。東京都内の1軒家「Roomies House」を拠点とするソウル・バンド"Roomies”(ルゥミィズ)のワンマンライヴ〈Roomies House〉は、良質なソウル・ミュージックとポップスが生みだす露光が煌めいた、絢爛な空間となった。

 Roomiesのステージを観賞するのは、昨年12月に東京・恵比寿のBLUE NOTE PLACEのグランドオープンシリーズ以来。バンドにとっては、同年9月に行なわれた初ワンマンライヴ以来のワンマンライヴとなる。会場は同じく東京・渋谷WWW。

 彼らのプロフィールや第一印象は拙ブログのBLUE NOTE PLACE公演のレヴュー(記事→「Roomies @BLUE NOTE PLACE」)やオフィシャルに任せるが、高い技巧を擁する面々が揃った気鋭のバンドならではの安定感と着想に溢れたステージは、終始甘美な音の滴とヴェルヴェットのようななめらかな質感、体躯を揺らせるグルーヴが横溢。本公演ではコーラスが2名サポートについて、ヴォーカルにより奥行きをもたらしていた。

 2019年の結成から、2021年12月に1stアルバム『The Roomies』、2022年の「Snow」から「きっと愛」までシングル5作と、ともに配信リリースしているが、全曲を演奏するならいざ知らず、ライヴコンセプトを掲げて楽曲をチョイスするほど楽曲が多い訳ではないので、どのような楽曲構成にしてくるかが一つの楽しみでもあった。彼らがリスペクトするクラシックソウルのカヴァーなどを組み込んでくるのかと安易に考えていたのだが、そうではなく、楽曲の導入部にインタールード的な役割も担ったインストゥルメンタル・アレンジや、音源とは異なるアレンジ・パートを加えてみたりと、セッション・スタイルの"オカズ”という手札で原曲を彩り直してきた。このあたりは、音楽を奏でることに人一倍の情熱を注ぎ、愉しむことに没入しているメンバーが顔を揃えたバンドの真骨頂と言える。

 個々の演奏は、大袈裟に煽ることもなく、音と歌がせめぎ合うというよりは、それらが糸が撚り合うように強度を高めながら一つにまとまっていくといったところか。冒頭の「甘い夢」をはじめとするメロウなミディアムでは、Kevinのヴォーカルを包み込むようなムードを創り出し、続く「Smile with Thrill」のようなスムース・グルーヴァーではメロディに鮮やかな華を添え、「The End of the Two」ではスウィートネスと躍然というソウル・ミュージックのダイナミズムを具現化していく。何よりも各メンバーから自然と微笑みが零れるほどの自らが生み出す珠玉の音の滴と、それに感化された観客からの視線や熱がない交ぜになったグルーヴが、フロアに得も言われぬ高揚感をもたらしていった。その至福が微笑ましさとなって表われたのが、以前のライヴで観客から「クラップが難しくて出来ない」と言われた(笑)という感謝ソング「Family」で、朗らかで軽快なリズムがハートフルなムードを導いていった。

 この公演でのハイライトを一つ挙げるとすれば、後半の「In My Dream」が白眉だろう。「きみとふたり」というドリーミーな褐色のネオソウル・バラード(ただ、これに繋がるインタールードは、温もりに満ちたバラードに一見繋がるとは思えないエキセントリックなトラックでもあった)でどっぷり浸った後に「I just fell in love with you」「Higher」というグルーヴィなアッパーが続けて配されたゆえ、ヴォルテージも上昇。タイトル通り「Higher」で興奮も高みへ達したと思いきや、次の「In My Dream」でさらなる興奮が待ち受けていた。

 甘く爽やかなKevinのヴォーカルが観客の身体を心地よりリズムで揺らしていたところで、ドラム、ベース、シンセを核としたディープハウス・マナーのトラックを走らせると、キーボードの斎藤渉のエキセントリックな鍵盤捌きが炸裂。首を上下左右に、髪を振り乱しながら恍惚の表情でパッション漲るインプロヴィゼーションが突き抜ける瞬間は、まさに圧巻。
 振り返れば、「I just fell in love with you」のイントロの時にもその"予兆”に思える弾きぶりを披露していたのだが、対面にいるシンセの及川創介が呆れてしまうくらいの笑みで見つめるような光景は、バンドにとってこの上ない瞬間なのかもしれない。
 その熱狂が宿った斎藤の陰で、朴訥とした表情ながらタイトにビートを叩き続ける小野渚紗のドラムと、出負けしないファットなボトムを弾き鳴らす吉川衛(時々ラッパーの般若っぽい鋭い系の顔に見えたりする)のベースが、斎藤の圧巻の鍵盤捌きをしっかりとフォローしていて、フロアからの快哉を高めるのに一役買っていたのも見事だった。

 一気に沸点まで達したムードを緩やかなグルーヴの波に引き戻してくれたのは、やはりKevinのヴォーカル。ハートウォームな「I'll be there」ではレディスキラー必至の声色で魅了していった。
 正直なところ、序盤では、緊張なのか分からないが、前回よりも声の張りがやや弱いかとも感じていた。だが、バンドが躍動し、フロアに闊達なグルーヴは重なっていくうちに、甘美で人懐っこいヴォーカルワークが戻り、魅惑的なハイトーンやファルセットで観客の胸を躍らせた。本編ラストとなった「Tonight」では、イントロからギターの高橋柚一郎が躍動。時に派手になりがちなギターだが、高橋のそれは引きと押しのメリハリを巧みに捉えていて、主張はあっても邪魔をせず、耳を惹かせた。 

 アンコールでは、先日(2月24日)にリリースした5thシングル「きっと愛」をセレクト。これもKevinの寄り添うような歌い口に安らぎと温もりを伝わる、ハートフルなラヴソングとなった。

 日本の音楽シーンでも、ジャズとR&Bやヒップホップ、ロックなどと融合する作風のバンドにも大きな光が当たる時代にもなっているが、時に難しく解釈するのに時間を要するものもあったりする。それを表現とするのか、リスナーの嗜好とするのかの問いの答えはここでは避けるが、そのような融合をしながらも、しっかりとポップ・ミュージックとしてアウトプット出来ているという意味で、Roomiesは他にはない才覚と資質を備えているといえる。60~70年代のソウル・ミュージックにルーツがあることに発していると思うが、ソウルやファンク、ロックやハウスなどさまざまなアプローチをしても、ポップスとして咀嚼出来るの音鳴りは、彼らの強みの一つだ。マイケル・ジャクソンもモータウン、ソウルなどのブラック・ミュージックを根にしていても、謳われたのは"キング・オブ・ポップ”。ポップスとして"も”受け入れられていたから、偉業と名声を得たのだと思う。グルーヴに心酔したいならば、一度Roomiesの音の扉を開いてみるといいだろう。芳醇な薫香のメロウ・ソウルを体験できるはずだ。

◇◇◇
<SET LIST>
00 INTRODUCTION
01 甘い夢
02 Smile with Thrill (*R)
03 Runnin' (*R)
04 The End of the Two (*R)
05 Do you feel (*R)
06 Family (*R)
07 きみとふたり
08 I just fell in love with you (*R)
09 Higher
10 In My Dream (*R)
11 I'll be there (*R)
12 Not Your Man
13 Tonight (*R)
≪ENCORE≫
14 きっと愛

(*R):song from album 『The Roomies』

◇◇◇
<MEMBERS>
Kevin / Kevin Masatoshi(vo)
Yuichiro Takahashi / 高橋柚一郎(g)
Ei Kikkawa / 吉川衛(b)
Nagisa Ono / 小野渚紗(ds)
Wataru Saito / 斎藤渉(key) 
Sosuke Oikawa / 及川創介(syn)

レオナ(cho)
トシ(cho)

Roomies〈Roomies House〉at WWW, Shibuya, Tokyo

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【Roomiesの記事】
2022/12/13 Roomies @BLUE NOTE PLACE
2023/03/04 Roomies @WWW(20230304)(本記事)

もし、仮に、気まぐれにも、サポートをしていただける奇特な方がいらっしゃったあかつきには、積み上げたものぶっ壊して、身に着けたもの取っ払って……全力でお礼させていただきます。