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ICE @渋谷CLUB QUATTRO(20230704)

 初ワンマンの地で響かせた、未来へ紡ぐ歓喜のグルーヴ。

 「30周年は始まったばかり」と声高に語った渋谷WWWでの30周年記念ライヴから70日、再び渋谷にグルーヴィな音色が駆け抜ける夜がやってきた。30周年記念ライヴの追加公演〈ICE 30th Anniversary Live In Shibuya <again>〉は、"追加公演”というフォーマットを踏襲しながら、この夜限りのファッシネイトを解き放っていた。

 曲構成はシングル・リリース順に披露した前回公演をほぼ追随したものゆえ、詳細は前回記事(→「ICE @WWW」)に譲るが、時や場所が変われば感じ方も変わる。前回公演はオールスタンディングだったが、本公演はメインフロアが指定席(着席スタイル)、その周囲の一段高くなったところがスタンディングとなった。

 これまでに渋谷クラブクアトロでライヴ観賞した経験があれば分かるが、観る位置によっては(ビルの構造上致し方ないのだが)何本かの大きな柱がステージへの視野を遮ってしまう。スタンディングスペースとなった場所は、正面以外では何かしらステージを全体に見渡すことが出来ず、指定席の観客は終盤の「ANALOG QUEEN」でようやく立ち始めたこともあって、フロアの熱量としては、久しぶりのICEに出会う高揚感も加わった前回のWWW公演までには至らなかった気もする。とはいえ、この渋谷クラブクアトロは、1994年にICEが初のワンマンライヴを開催したある意味"聖地”とも言える場所でもある。そんな想いが頭をもたげながら、眼前で繰り広げられる珠玉の楽曲群の心地よいグルーヴを体感していくにつれ、柱などのストレスは些細なものになっていった。

 (おそらく裸足でステージに立っていた)国岡真由美をセンターに、左からキーボードの崩場将夫、コーラスの鈴木精華、柴田章子、ベースの小川真司、ドラムの山下政人、ギターの田口慎二の面々に、ICEサウンドを受け継ぐフレッシュな山下航生が加わる前回同様の布陣。スタッフも結成当時からのチームという、30周年を共に紡いできた"ユニット”が、当時と変わらないスピリットと時を重ねて培った粋とコクをプラスして、2023年にも通底するサウンドを鳴らしていることに、感慨もひとしお。「15年は宮内くんのペースで、残りの15年は私のペースで」と語った国岡の言葉には、2007年に宮内和之が急逝した後もICEの変わらざる音が紡がれていることを示していたし、「spirit」での「The Future in my mind is clear」のフレーズを聴き、ICEが奏でる未来は、いつでも時に左右されない不変・普遍・不偏な感情をもたらしてくれるのだと再認識したのだった。

 コンプリート・シングル・ベスト『ICE Complete Singles』をほぼなぞったような構成だが、WWW公演で披露した「NIGHT FLIGHT」「GET ON THE FLOOR」の代わりに現時点でラスト・シングルとなる「C’est La Vie」を加えて、本公演とこの追加公演で演目もシングルをコンプリートする形に。また、本編の終盤も前回公演の「ANALOG QUEEN」から「No-No-Boy」への流れを入れ替えて、「No-No-Boy」から「ANALOG QUEEN」を経て「WAKE UP EVERYBODY」とマイナーチェンジさせながら、フロアのヴォルテージをより高める工夫がなされていた。

 アンコールでもファンへの感謝を込めたプレゼントがなされていて、前回は『ICE Complete Singles』にも収録された「FREE」を演奏してくれたが、今回はメジャー・デビュー前の未公開音源をアナログ化した『ICE Early Years [1990-1992]』に収められた「Boogie oogie oogie」からスタート。ソウル・ミュージックの名曲をオマージュしたフレーズも少なくないICEだが、タイトルからも分かるようにテイスト・オブ・ハニーのヒット・チューン「今夜はブギ・ウギ・ウギ」(「Boogie Oogie Oogie」)のメロディラインを拝借した(DOUBLE「Driving All Night」ほどではないが)、スタイリッシュなディスコ・ソウルをサラリと披露してくれた。原曲のファンクネスをクールなポップネスに重心を寄せた、ICEならではのサウンドアレンジは、郷愁とときめきを瞬時にフラッシュバックさせるパッションに満ち溢れていると、いまさらながら痛感した。

 心地よいノスタルジックと未来への期待を抱かせるような田口の嘶くギターが響く「kozmic blue」から、「最後の曲、いきましょう」という言葉だけで感情が揺らぐようなICE“チーム”の心の歌ともいえる「PEOPLE, RIDE ON」へ。いつまでもコール&レスポンスが終わらなければいいという願いも滲み出たようにも思えた、メンバーとオーディエンスが一体となった歌声とグルーヴがとめどなくフロアを駆け巡っていった。

 もちろんステージは終わりを迎えたが、30周年はこれからも続く。「30周年イヤーは2024年4月まで続くし、またその間にはライヴをやると思います……やります!」と力強く言い切った国岡。それぞれがさまざまな状況を抱える現代だが、ICEというファンタスティックなサウンドとグルーヴを浴びれば、えも言われぬ興奮と歓喜が充溢する。「PEOPLE, RIDE ON」よろしく、答えを出せないことが生きる理由でもあり、「THAT'S THE WAY OF LIFE」(それが人生)なのだ。祝宴の第2幕が終わりを告げても、脳内で何度もそのメロディを反芻してしまうのは、30年目のICEの音を生で浴びることが出来たという愉悦の表われか。そんな想いに浸りながら階段を下りて出て、ネオンライトや電飾に溢れる渋谷の街を見上げたのだった。

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<SET LIST>
00 INTRODUCTION(include BGM of "TOKYO DAY・TOKYO NIGHT" intro)
01 KM JAM#3
02 FUTURE
03 MOON CHILD
04 SLOW LOVE
05 LIFE(STANDIN' ON THIS WORLD)
06 BABY MAYBE
07 GET DOWN,GET DOWN,GET DOWN
08 Love Makes Me Run
09 CAN'T STOP THE MUSIC
10 IT'S ALL RIGHT(drum by コウキヤマシタ)
11 ECHOES(drum by コウキヤマシタ)
12 spirit
13 I saw the light
14 C’est La Vie
15 ラヴァーズ・ロック(Yeah! Yeah! Yeah!)
16 HIGHER LOVE
17 No-No-Boy
18 ANALOG QUEEN
19 WAKE UP EVERYBODY
≪ENCORE≫
20 Boogie Oogie Oogie(with percussion by コウキヤマシタ)
21 kozmic blue(with percussion by コウキヤマシタ)
22 PEOPLE,RIDE ON(with percussion by コウキヤマシタ)

<MEMBERS>
国岡真由美(vo,tamb)
田口慎二(g)
小川真司(b)
山下政人(ds)
崩場将夫(key)
柴田章子(cho)
鈴木精華(cho)
山下航生(ds,perc)

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【ICEに関する記事】
2013/10/04 ICE@下北沢GARDEN
2015/03/19 ICE@BLUES ALLEY
2019/01/26 ICE@横浜Bay Hall
2019/10/12 My Favorite Songs of ICE〈prologue〉
2019/12/16 My Favorite Songs of ICE〈epilogue〉
2021/09/26 国岡真由美 with ice BAND @BLUES ALLEY JAPAN
2021/11/21 国岡真由美 with ice BAND @BLUES ALLEY JAPAN
2023/04/21 ICE @WWW
2023/07/04 ICE @渋谷CLUB QUATTRO(20230704)(本記事)

ICE 30th[→FUTURE]


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