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隣どおしあなたとあたしアルバイト

彼が雀荘で働き始めて
初めて迎えたクリスマスバイト。

クリスマスには、
彼氏彼女がいようがいまいが、
なぜか絶対にシフトに入らないと決めている勢

先輩方のお力により、
シフトインになったクリスマスバイト。

まだまだ仕事にも完全には慣れていないし、
麻雀もまだまだ弱かったこの彼、島田くん

唯一の救いは、
クリスマスシフトの同番に
超優しい先輩女性スタッフの亜美ちゃん
居てくれたこと。

「しかし、亜美ちゃんがクリスマスにバイトなんてねー。」

「男いないんやー?」

「デートしたろかー?
ヴァッファッファ!(注:笑い声)

という三人のお客様からの絡みにも、
亜美ちゃんは、

「今カップル達が眺めて
『綺麗だね…』
と言ってる夜景は、

私たちが夜遅くまで働いてる…
その光から出来てるものなんです!

私が働いてるのはその夜景を作るタメ!

使命があるんです!

そんなことより、

皆さんお子さんにプレゼントは
買ったんですか?」

と、華麗に切り返していました。


三人のお客様サンタ達は、それぞれに

「プラレールを買いましたー。」
という普通のサンタ

「嫁に任せています。」
という少しろくでなしなサンタ

「オレが帰ってくることがプレゼントや、
てなわけでラス半!
ヴァッファッファ!(注:笑い声)」という
アホサンタのお返事を。

と、いいますか、

クリスマスにシフトに入らないスタッフがいるのと同様に。

なぜかお客様の中にも、
彼氏彼女がいようがいまいが、
なぜか絶対に来店しないと決めている勢
がおられます。

実際、今来られている人を見ると…
どうにも妻子持ちさんが多いご様子。

『いっつも来てるあの人…
そういや、今日は来ないなぁ…
え?もしかして彼女いたんかな…??』

なんて、
後日来店時に
ギリギリの質問をしてしまいそうな
お客様が多くて…

クリスマス
ちょっとヒマだったりすることが多いです。


そんな静かめな店内。

まさにサイレンナイトに、
お客様のご注文の声が響きます。

ビールちょーだいー。」

……。

返事がありません。

亜美ちゃんが大きい声で言いなおします。

ビールお願いしますー!」

……。

返事がありません。

あれ?
今キッチンには島田くんが居たはずなんだけどと思い…

もう一度大きい声で言ってみます。

ビール!お願いしますー!」


はいー…ただいま!!

ようやく返事がありました。

そうなんです、
島田くんは
まだまだお仕事に慣れていないのです。

雀荘において
アルバイトスタッフさんの雇用は、
永遠のテーマの一つだと思います。
てか、雀荘に『永遠のテーマ』多すぎると思いません…?

接客業としては
本当にめちゃくちゃ難しいお仕事だと思うんです…
今、島田くんが
一人で立ち番をしていることも、
アウトというテーマがあるわけで…
お客様からすると楽に見えると思いますが、
そう見えることも含めて…
難しいお仕事
だと思うんです。


なんてこと思っていましたら、

お待たせしました!!

と言って、
島田くん出てきました。

ビール三つ持っていました。

「いやいやいや…」

となっていると、
別のお客様から

代走お願いしますー!

と頼まれた島田くん。

アイスオーレただいま!!

聞き間違えてキッチンへと消えていき…

「あ、一平ちゃんお願いします!

といった
別のお客様のカップ焼きそばのご注文にたいして、

島田くん
キッチンから顔をひょっこり出して

僕、一平ちゃんじゃありません!

と、真顔で返事してきました


この一連の流れが
面白すぎて、
亜美ちゃんが
この年末にして
今年一番笑ってまして…

その笑顔のおかげで…
お客様も許してくれたようなのですが…

雇う側としては…もう謝罪の連続です。


その後、
シフト中に、
亜美ちゃんに慰められる島田くん

ただでさえ頼りになる女性先輩に
憧れの気持ちは抱くものでしょうが、
こういったミスに優しくされると
当然恋心へと育ってしまったりもします

そんな感情が、

亜美ちゃんの
「島田くんは、
めちゃくちゃ頑張ってるし、
まじめだし、
何より…
めちゃくちゃ面白いから私は好きだよ!

という、
失敗が重なって辞められるのは悲しいし困る…
思いからくる悪女の発言

まだまだ若い島田くんは、

勘違いを覚え照れがピークに達し気が動転した結果

「いや、
中村さんの方が面白いじゃないですか…」

という、
突然、ワケわからんくなって、
出来る先輩の名前を引き合いに出して
矛先を自分から逸らしてみよう
とする作戦に出るも

「あ…、中村君は…面白いよりカッコいいから…。

と、
亜美ちゃんの
まさかのパンドラの箱を開けてしまい、

クリスマスに一瞬にして大失恋


変な空気が流れた
まさにサイレンナイトに助け舟。

「島田くーん、本走お願いしますー!

との指示に、
もう僕には麻雀しかない…
くらいの意気込みで向かっていったのに

ツモ、メリークリスマス♪

というお客様の
いらんセリフ付き四暗刻を食うという
泥舟に乗せられていて…

島田くんは
辞めようと思います…
と言ってきました。


雀荘における
アルバイトスタッフさんの雇用は
永遠のテーマの一つだと思いますが

お互いにとって良くないと感じたら…
たとえ、彼が
選んで地雷を踏んでいっただけだったとしても、
無理な引き止めはしない方が良いと思います。

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