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板長が生まれた日

居酒屋ここでのめの年末年始。

「キャプテン!キャプテン…!!」

の大合唱の地獄絵図
感無量になっている店長とは裏腹に、

全くもって
それには目もくれない男がいました。

それが

板長

年中無休の店内の
キッチンの奥にだいたい居る

板長。

さぞかし
「美味しいもんばっか食べてきたんでしょ?」
と言わんばかりのでっかいお腹してる

板長。

「体重120㌔までは数えたんですけどね…」
と、体はでっかいのに声がめちゃくちゃ小さい

板長。

家に帰ると四児のパパ、
大家族と通風を背負って立つアラフォー

板長。

キャプテンがどんなに脚光を浴びようが、
何のお構いも無く、

淡々と…働き続ける男…

それが

板長!!

彼もまたこの会社の大切な一員で、

この居酒屋を形作った張本人の一人でした。


ここでのめという居酒屋の味を構築し、

初めての行きつけの居酒屋」をコンセプトとするお店の
まさに
また来たくなる味部門
で成功したすごい男。

看板メニューとなった
大根の天ぷら(一個100円)は、
完成した当初、
何人もの若い衆が、

「板長ー…あのやべぇヤツくれよ…
大根の…やべぇヤツをよー…!!」

と、100円玉握りしめてカウンターに群がる、
そんな光景を作り上げたという逸品


そんなお客様の胃袋をガッチリつかめたのは…

彼が素人ではなく、職人だったから。

めちゃくちゃ声のデカい師匠の下
何十年と厳しい厳しい修行をしており、
しっかりした昭和の頑固おやじみたいな考えを持った、
料理の腕の立つ
(ただ反面教師的にめちゃくちゃ声の小さくなってしまった…
しっかりとした板長だったから。

しかし、
なんとこの板長、

我々が居酒屋を作る

→板長を見つける。

では無く。

雀荘バイトに応募してきた100㌔超級アラフォーのパパを採用する

→居酒屋を作る

→別に採用していた居酒屋のオープニングシェフの女子が「これどこに出したらいい?何番?」とテーブル番号を聞いたウチのオーナーに「きゅ~うば~ん」とタメ口を聞いたのでしょっぴく

→ゴハン作る人居なくなる

→パパ、ちょっと助けてくれへん?

→板長の完成!!

という流れであって、

実は彼も雀荘スタート

びっくりですよね。


そして、
もっとびっくりなのが、

彼は厳しい修行を何年も耐え抜いておるが故に、

居酒屋に来る若者(男子)の相談に

「男はまず仕事や。」

「仕事をしてから考えることや。」

「仕事でつまずいた悩みなんか、仕事することでしか解決せん。」

「仕事抜きで立てる予定なんか無い、まずは仕事ありきや。」

「仕事してる男が一番モテる。決まってるんや。」

という自らの実体験に基づいた(?)
ありがたい言葉をたくさん託してくれる良いオヤジで、

加えてもちろん、
アルバイトスタッフさんに対しても優しく、

怒ったコトがあるのなんか一人にだけで、

ある日、そのスタッフさんが
板長にキッチンからつまみ出されきて、

「何したん…?」と聞くと、

「いや、なんか…態度悪いって…
声小さくてハッキリと聞こえませんでしたけど…」と言ってきまして、

んでは、これは板長にも聞かなアカンねっと
「何したん…?」って聞いてみたら、板長。

いや、あいつ声小さくて、やる気無いんすよ…!

って、めちゃくちゃ小さい声で言ってきたコト一回だけしかない、

ってくらいに

板長はしっかり者…
なのに。

板長、
こんなに仕事中はまともなのに…


麻雀となるとめちゃくちゃ
マナーが悪いんです。

クマのように大きな体だけでも、
ナチュラルに威嚇行為気味なのに、
その前足のような両腕を使って繰り出される
毎回、誤ツモしているように見える奇跡のツモモーション』で、
何人もの同卓者の腰と精神を折ってくるんです。

同卓者の精神は削りますが、
逆に金銭の方は削られ気味で…
無くなった時には
見た目的にも絶対に
「おかわりください」って言うもんだ
と思ってたのに、

板長はブチ切れながら
「一本出しといて!!」

と言い、
我々に場末の雀荘のルールを教えてくれるんです。

とんでもない大型新人助っ人外国人が来たな…
と思わされましたが…


まさか、
その男が、

この大団円な居酒屋を支えてくれるようになるなんて…。


キャプテンだけでなく、

狭いキッチンの奥で
うずくまってどんぶり鉢片手になんか食べてる板長を
チラ見しても…感無量でした


板長が居なかったら
この地獄絵図は生まれてなかったんです。

なんかタイミングとか…
色々すごいなぁ…と思います。

陽のキャプテン。
陰の板長。


ありがとう板長!



翌日、

ベロンベロンに酔ったキャプテンが
店に出勤して来ないのを、

「家、魚屋の近くでしょ?
ついでに起こしてきますよ。」

と買い出しがてらの板長が
小さい声で言ってくれ、

インターフォンを鳴らしても反応しないキャプテンに
お、キャプテン家の鍵空いてるやん…
ってなって、扉を開けると…

バッチバチのプロゲーマーがするようなヘッドフォンをしたキャプテンが、

大画面にめちゃくちゃヤラシい動画を流している真っ最中で、

板長、今まで出したことの無い大声で、

おおおおおおぉぃ!」と言ったそうです。

そしたらキャプテン気づいて、

そおおおおおおぉぃ!」と言ったそうです。

こういう時はどちらも叫び声を上げるそうです。

二人とも被害者


後にキャプテンは、

「今日は一時間遅く行って良い日だった、だから準備をしていた…」と供述しており、

それを板長は爆笑しながら聞いていましたが、

板長が居なかったら
この地獄絵図は生まれてなかったんです。

なんかタイミングとか…
色々すごいなぁ…と思います。

陽の板長。
淫のキャプテン。


ありがとう板長!

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